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HELLOWEEN "HELLOWEEN" アルバム・レビュー

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先月の『BURRN!』8月号のHELLOWEEN大特集におけるマーティン・ハウスラー(彼らのミュージック・ビデオを制作している人物)のインタビューの中で、「アルバムがリリースされてからしばらくしたら3曲目のシングルがリリースされるからね。"Best Time"だよ」と語られていたので、そのシングルのリリースを待ってこのレビューを公開しようと思っていたのですが、一向にそのシングルが発表されることなく、"Mass Pollution"のリリック・ビデオが公開されてしまったので、そろそろ公開することにしました(苦笑)。

まあ、もう買うべき人は皆購入している頃合いだと思いますのでいいタイミングなのかなと。私のレビューを読んで買うのをやめた、みたいな人が一人でも出てしまったらそれこそバンドに顔向けできませんからね(笑)。

さて本作はHELLOWEENを特別な存在に押し上げた名作、"KEEPER OF THE SEVEN KEYS Part1&2"を生んだカイ・ハンセンとマイケル・キスクが復帰したアルバムで、ニュアンスとしては「再結成アルバム」的に受け止めている人もいるかと思う。

ただ、もちろんHELLOWEENは解散したことはなく、低迷することすらなく活動してきたし、2018年にその二人を加えてのツアーも行なっているので布石は充分、よほど変なこだわりがある人以外にとっては充分な納得のもとに制作されているので、本作の価値が2人の再加入というニュース性にあるわけではないことは言うまでもない。

「再結成」の結果、ギタリストが3人になったケースはIRON MAIDENもそうだが、「バンドの顔」であるヴォーカリストを2人にする、という決断をしたケースはほとんどないのではないか。そういう意味でこの「誰も傷つかない再結集」はロック史上でも稀有な奇跡と思われ、ファンとしては自分の愛したバンドが特別なバンドであることをあらためて信じることができる、とてもハッピーな事象であり、アルバムといえる。

本作を制作するにあたってはオリジナル・ドラマーである故インゴ・シュヴィヒテンバーグ(Dr)のドラム・キットを使い、80年代当時のサウンド・プロダクションを再現するなどして、かつて2人が在籍していた当時のヴァイブを再現しようとしたそうで、その思いは「守護神伝」なアルバムのアートワークからも伝わってくる。

とはいえ、"KEEPER OF THE SEVEN KEYS Part1&2"そのものがここに再現されているわけではない。そのことは(“賛”が多いとはいえ)賛否両論ある本作を否定する人はもちろん、肯定する人ですら認めることだろう。

オープニング・ナンバーである#1 "Out For The Glory"を聴いた時には「メロディックで速い曲をマイケル・キスクが歌っている」という、ただその事実に脳内麻薬が過剰分泌されてしまい冷静を失ってしまうが、アルバムを最後まで聴くうちに本作の基本的な作風が近年のものと変わらないことに気づくはず。

正確に言えば、本作の作風はサシャ・ゲルストナー(G)が加入した"RABBIT DON'T COME EASY"(2003)以降変わらぬものであり、そういう意味でサシャの加入というのはこのバンドにとって結構大きかったのではないかと思う。

サシャは私と同世代で、HELLOWEENのオリジナル・メンバーたちとは世代がひと回り違うため、逆に「HELLOWEENに何が求められているか」を客観的に理解しており、その感覚が他のメンバーと共有されることで"RABBIT DON'T COME EASY"以降の、良くも悪しくも安定したメロディック・パワー・メタル路線が実現しているのではないかという気がする。

その結果として本作も適度にバラエティに富んでいるが意外な曲や違和感のある曲はなく、もちろん捨て曲のないフックに富んだ楽曲が揃ったハイ・クオリティなメロディック・パワー・メタル・アルバムに仕上がっており、作品の出来にケチをつける余地はない。

ただ、このラインナップに「捨て曲がない」とか「ケチをつける余地がない」程度のものが期待されているはずがないわけで、ネット上でちょいちょい見かける「否」を唱える人の不満はその辺にあると思われる。

たしかに、本作に"KEEPER OF THE SEVEN KEYS Part1&2"にあったマジックはないし、アンディ・デリス加入後の作品のいくつかは本作より魅力的な楽曲が揃っていたかもしれない。

ただ、これはファンの贔屓目かもしれないが、ここにはキーパー時代のHELLOWEENにも、アンディが一人で歌っていた時期のHELLOWEENにもない新しいマジックがある。

それはキラー・チューンがあるとかないとかそういうレベルの話ではなく、3人のヴォーカリスト、3人のギタリストがごく自然に役割を分け合い、調和したサウンド全体に宿っているものである。ああ、「7つの鍵」とはこの7人のことだったんだな、と。

そしてそのマジックは、今回作曲においては1曲だけの貢献にとどまり、『BURRN!』誌のインタビューでマイケル・キスクに「ちょっとレイジー(怠惰)だった」と言われてしまったカイ・ハンセン(G, Vo)の貢献が増せばさらに輝きを増すものであろうと思われ、単に「もう一度このメンツでやれてよかったね」で終わらない、次作へのさらなる期待を生むものであるという点も、このバンドが「過去の栄光」頼みのバンドではない、特別な存在であることを感じさせる…というのはちょっと贔屓目が過ぎますかね(笑)。

"PUMPKINS UNITED TOUR"から本作のリリースまでの情報公開の仕方についても、かなりマーケティング的な戦略性が感じられましたが(恐らくそれはコロナ禍によってかなり変更を強いられたはずですが)、その甲斐あって母国ドイツで初のチャート1位に輝き、アメリカでも初のTOP40入り(35位)を果たすなど、商業的にも成功を収めているのが長年のファンとしては嬉しいですね。

ちなみに私が買った限定盤オマケのメッタリマンシールはマーカスでした。【90点】








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コメント

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No title

特別なので、レビューはしないのかと思ってました。
確かに、人によっては曲の充実という点で過去最高(アートワークは過去最高!)とはならないかもしれないですね。自分は、頭と終わり(序曲除く)2曲で大満足でした。今回のヴァイキーの3曲は良かったと思います。トリプルヴォーカルということで、それぞれの良さが引き出されたと感じるし、例え一度それぞれの活動に戻っても是非このメンツで次作を期待したいですね。
シールはキスクさんでした

お久しぶりです。

良い意味で新旧ボーカル参加を気張ること無く、ボーカル毎の歌唱量が曲によってバラバラで
特別感よりも聞いた時の心地よさを優先して作曲したのを感じました(もちろん1曲目は意識してのキスクメインであったろうけど)

アルバムの出来に関しての文句は微塵も無いのですが、カイのボーカルの少なさにちょっとだけ期待外れではありました。

またPumpkins Unitedのような歌唱量のバランスを考えたパーティソングがもう一つくらいあればなとも思いましたが、
そんな個人の欲望なんぞ捻り潰れる程、個々の楽曲がちゃんとここ数年のHelloweenを踏襲していて、安心できるマックスクオリティだったのが僕としては嬉しいです。

お久しぶりです。

個人的に、結構大きい決断をする事があったのですが、FEAR OF THE FALLENが良い後押しをしてくれました。
このバンドの曲には、人生の要所要所で助けられてます。

シールはキスクでした。
そして、クイズやっててブックレット破けましたw

もう一枚買いました。←未開封。

楽曲としては非常にクオリティが高い反面、派手なインパクトのある楽曲が少ないのが批判も多少ある要因な感じはしてます。

ただ、そのリラックスした空気で造られたと思う楽曲達が次作への希望も生みだしていると思うので個人的にはかなり気に入ってます。

個人的な聴いた感想はキスクはもちろんですが、アンディがいいボーカリストである事を強く再認識したアルバムって感じですね!

次作も期待したいし、コロナが落ち着いたら是非再来日してほしいてですね。

声がかかるどころか、インタビューで名前も出ない(出せない?)ウリとローランドが気の毒でなりません。彼らも一時期のバンドを支えた有能なミュージシャンだと思うんですが、よほど何かあるんでしょうね…

普通に良い

あの7人が再結集だ、祭りだ祭りだと期待値上げまくった人が聞くと、即効性の高いキラーチューン不在に拍子抜けしてしまい、結局その第一印象から抜け出せないままかも、なんて思いました。再結集バイアスを抜きにして、HELLOWEENの新譜出たな、ジャケット格好いいし買ってみよう、くらいの普通のテンションで聞くと素直にいいな〜と思うんでしょう。そうです、私がそうです。ここ20年くらいは熱心なHELLOWEENリスナーではなかったので、わりかしフラットな感じでジャケ買い(通常盤)しましたが、「意外とイイな」を入り口に気付けばヘビロテしてました。ブログの本文に書かれている通り、次のアルバムがとても楽しみです。

Keeperという呪いの払拭

確かに今回のHELLOWEENにKeeper of the seven keys part3 を期待したであろう人は結構いたと思いますが、バンドとしてはそれには囚われずに、このメンバーで今何が出来るかを突き詰めた結果が今作だと個人的には感じました。

それが成功したかは正直よくわからないのですが、考えてみれば幸せな話で、Keeper~part2が世に出てから30年以上、多くのバンドがHELOWEENに触発されて作品を出し、今作の前後にはエドゥ・ファラスキのソロとILLUSION FORCEの2ndがリリースされ、GALNERYUSに至っては、今作の発売日に自分達のアルバムの発売をぶつけて来るほどの気合の入れようで、今年の上半期を充実させてくれました。

こうした中で大ベテランのHELLOWEENがこうして変化と安定を模索しながら、聴き手に対して真摯な姿勢で作品をリリースしてくれているのは、とても有難いことだと感じています。

>black&greenさん

もはやレビューをすることが特別になりつつありますので(笑)。

このメンツでの次作を期待したくなる、全く同感ですね。

>エメッソンさん

お久しぶりです。

おっしゃる通り、カイの貢献の少なさがちょっと物足りないポイントでしたね。

そこが次作への期待ポイントとなるわけですが。

yoshiさん

お久しぶりです。

私もHELLOWEENには「人生の後押しをしてもらった曲/アルバム」がありますね。

ブックレットを破いた人、全国にもう5人くらいいると思います(笑)。

>ごえたさん

たしかに、マイケルの歌と共存しても別に「劣っている」とは感じないアンディの歌声を再評価できるアルバムでしたね。

来日、早くできるような状況になってほしいですね。

>rassieさん

ローランドとウリ、別れ方が良くなかったというのもあるのでしょうが、それはマイケル・キスクも一緒なので、結局カイやマイケルほど爪痕を残せなかった、ということなんでしょうね…。

>ジョン・ドゥさん

バイアス抜きに聴けばおっしゃる通り「普通にいい」ですし、期待値が低ければ「意外といい」アルバムだと思いますが、まあこのメンツだとみんなハードルを上げますよね。

やる側も聴く側も変な気負いがなくなるであろう次のアルバムが楽しみですね。

>Ario✠cHさん

そう、あの時をもう一度、ではなく、この7人の今、が本作なのだろうと思います。

必ずしもこの7人編成にならなくても活動できていたHELLOWEENがこのアルバムを作ってくれたことは素直に感謝したいですね。

No title

Disk1枚目の#1,2,12は名曲でした。あとは良曲、佳曲だったと思います。
rabbitやkeeper新章で存在したフレーズが見参されたり、
やはり2000年以降のHELLOWEENでしたが、その中では最高傑作と思います。

個人的には「The time of the oath」「Master of the rings」がベスト2なので、ローランド、ウリがゲスト参加でも声が掛からなかったのは残念でしたね・・・。

「カイの曲が増えるといいな」と言う声も多いですが、最近のGAMMA RAYのシンプル指向とHELLOWEENが合うかどうか?と思います。UNISONICのようなR&R風タテノリはライブ映えしそうですが、みんなそんな感じは期待してないですよね?

No title

私はハロウィンを2005年キーパーアルバムで高校生の年齢だったとき、最初聞いたが、その時の震えを再び感じることができるアルバムでした。韓国でヘビーメタルを初めて聞いたときに知り合った4つのバンドであるX、ANTHEM、Dream TheaterとHELLOWEENでした。
アジアメタル音楽の中心的な日本人の皆さんも感じたことだが、私はKISKEがHELLOWEENに戻ってくるとは思っていませんでした。

更新お疲れ様です。

リユニオンして十分な品質の作品を作ってくれたかと思います。adoreさんと同意で、キスク期、アンディ期とは違ったマジックが存在していると思いました。

個人差承知ですが、私なんかは1曲目は十分にキラーチューンだと感じております。ギターソロは全般的にもう一つでしたが。

あとちょいサビのアンディ率上げてほしかったですが、ボーカル3人の作品なんて作ったことないでしょうしまだ試行錯誤段階ではないでしょうか。もし次があればもっと上手くやれそうな予感はあります。

カイがちょっと続けるか怪しい感じですが。

>名無しのメタラーさん

ローランドとウリ、さすがに1ステージには上がり切れないと思うのでメンバーにすることは難しくても、せめてアルバムで1曲くらい…という気はしますね。デニス・ワードに1曲ベース弾かせるくらいなら(笑)。

そしてもちろん、カイに求められているのは「あの時代に作っていたような曲」ですね(笑)。

>LEEさん

「X、ANTHEM、Dream TheaterとHELLOWEEN」、LEEさんがこの日本のブログにたどり着いた理由がわかりました(笑)。

マイケル・キスクの復帰は願望でしたが、現実になるとは驚き(そして喜び)でしたね。

>枯林さん

ヴォーカルの比率については、特に今回は意図的にマイケル・キスクの比率を増やしたのだと思います。アンディは大人ですね(笑)。

カイのモチベーションは確かに怪しいですが、逆にこれくらいの低関与であれば続けてもいいと思っているのではないでしょうか。