SCORPIONS / STING IN THE TAIL(蠍団とどめの一撃)

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ドイツを代表するハード・ロック・バンド、いや、ポップ・ミュージックのカテゴリー全体で見てもドイツ出身でこれだけ長期的に世界的な成功を積み重ねてきた存在は皆無であろう、まさにドイツの生んだロック・モンスター、SCORPIONSの最終作となる通算17作目のアルバム(ライヴ・アルバムや企画盤は除く)。

有終の美、という言葉に相応しい出来かどうかはこのバンドに対してどの程度思い入れがあるかどうかによって評価が分かれる所だろうが、後追いファンである私にとってはなかなかの佳作だと思う。

デズモンド・チャイルドの色が強く、ややAOR寄りだった前作も個人的には好きだったが、「BLACKOUT」や、「LOVE AT FIRST STING」といった80年代の黄金期を体験したオールド・ファンにとっては本作の作風の方が納得しやすいだろう。

このバンドの資質をもってすれば「最後」をテーマにもっと感傷的な作風にも仕上げられたはずだが、制作時点では必ずしも「ラスト・アルバム」を意識していたわけではないらしく、だからこそここまで「らしい」仕上がりになったのではないか。

本作の見事な仕上がりと、中心人物であるクラウス・マイネ(Vo)、ルドルフ・シェンカー(G)の両名が既に還暦を越しているという事実から、先日の衝撃的な引退宣言が導き出されたそうである。

さすがに80年代当時ほどのエッジや攻撃性は後退しているが、ベテランらしく巧妙に練られつつ、基本的にはシンプルで骨太なギター・リフを主軸にしたロック・チューンを中心に据えていることも「年寄りの冷や水」には終わらないエナジーを感じさせる。

個人的には、元NIGHTWISHのターヤ(Vo)がゲスト参加した#4「The Good Die Young」、ドイツの魔女伝説であるローレライ伝説をテーマにした#7「Lorelei」、彼らの代表的バラードである「Still Loving You」を彷彿させる#10「SLY」など、彼らの持ち味である哀愁が強い楽曲に心惹かれる。

むろん他のロック然とした楽曲も魅力的だが#9「Let's Rock!」はタイトル通りちょっと凡庸かな…。こういう曲は80年代HRバンドの「お約束」って感じもするけど。

ちなみに「SLY」は「Still Loving You」をBGMにメイクラヴして生まれた子供に「スライ」と名付けたファンがいることがきっかけになって出来た曲だとか。さすがキャリアの長いバンドだと色々なエピソードが生まれるもんですね。

そして「頂はまだ先だ」と歌う力強いバラード「The Best Is Yet To Come」で幕を閉じる構成がラスト・アルバムに相応しい。

が、日本盤にはこの後ボーナス・トラックが収録されていてぶち壊し…と言いたいところだが、ドヴォルザークの「新世界」を引用したこのボーナス・トラック#13「Thunder And Lightning」がなかなかの出来で、ファンなら聴かずにいては勿体ないクオリティなのが逆になんとなく口惜しい(笑)。

また日本盤には奥村裕司氏によるSCORPIONSのメンバーの変遷とファミリー・ツリーを一覧できる、マニア気質の強いファンの方には読み応えのある資料がライナーに付属している(手書きなのが難だが…)。【83点】

◆本作収録「The Good Die Young」のMV


◆SCORPIONSのMySpace
http://www.myspace.com/officialscorpions


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コメント

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ファミリーツリーって、手書き以外見たことないので、そういう作法だと思ってました

>名も無きメタラーさん

たしかにこういうブックレットで見るファミリー・ツリーは手書きばかりですね。

今日びPCのソフトでいかようにもキレイに作れそうなものなのに、やはり音楽に詳しい人はアナログなんでしょうか。

まさか手書きであることに味があると勘違いしていないといいのですが。
いや、せめてもっと字がキレイだったらいいんですけどね(笑)。

はじめまして。
第一印象は「やはりベテランは違う」。クラウスも相当キャリアが長いはずなのに、衰えるどころか加齢による深みすら感じます。
僕は傾向で言うとウリ在籍時が好きで、特に2ndは最高の出来だと思うのですが、SCORPIONS は彼が抜けたあとも定期的に傑作を残しているのが凄いなと思っています。

>ノームさん

はじめまして。
たしかにベテランがベテランに相応しい実力を発揮した好作ですよね。中心人物が60歳を超えているのにロートル臭が皆無なのも凄いです。

クラウスはパワーこそ衰えていますが、「イェーイェー」なんて脳天気な歌詞を歌っても物悲しさを感じさせるあの声質は反則級に魅力的だと思います。

通算17枚目では?

>名も無きメタラーさん

ご指摘ありがとうございます。17枚目ですね。カウントミスでした。
早速修正しておきました。