BELLFAST / INSULA SACRA

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女性ヴァイオリン奏者と女性フルート奏者を含む、日本の7人組フォーク・メタル・バンドのデビュー・アルバム。

…とかなんとか、いかなるもっともらしい形容よりも、大手メタルレビューサイト「Castle of Pagan」の管理人であるKoh氏がVoとして参加しているバンド、という説明が少なくともネット上で本作に関する文章を展開する上では一番通りがいいでしょう。

ぶっちゃけ私の購入動機もほぼ100%「Kohさんのバンドだから」です。

私もまあこうしてHR/HMのレビューサイトめいたものを運営しているわけですが、その専門性とエンターテインメント性を兼ね備えたレビューの素晴らしさ、遠くヴァッケンの地へ毎年遠征する行動力、DJやライター、そしてミュージシャンとしての幅広く精力的なメタルへの貢献・関与、さらにはサイト構築のスキルまで、いずれもKohさんの足元にも及ばないどころか背中すら遠すぎて見えないレベルで、いちメタラーとしてはもちろん、いち個人として畏敬の念を抱かずにはいられません。

本作はミックス/マスタリングにはKING DIAMONDのアンディ・ラ・ロック(G)を迎え、アートワークはTHERIONやAMON AMARTHの作品を手掛けたトマス・エヴァルハルドが手掛けるなど、非常にグローバル感覚溢れる作品に仕上がっているが、その制作過程についてはKohさんが自身のサイトで非常に丁寧に説明しているので、そちらをご参照ください(ここまで赤裸々にアルバムの制作過程を解説した文章というのは稀なので、非常に興味深い内容です)。

フォーク・メタルというと日本ではその派生ジャンルと言えるヴァイキング・メタルを含め、デス声を取り入れたバンドが比較的よく知られている(ELUVEITIEやEQUILIBRIUM、FINTROLLなど)が、日本盤がリリースされているWUTHERING HEIGHTS、ELVENKINGのようにノーマル・ヴォイスで歌われているバンドも多く、このバンドは後者のタイプに属する。

要はKohさんはデス・ヴォイスで歌っているわけではない、ということなのですが(笑)、その歌声はBURRN!誌のレビューをはじめ多くの人にブルース・ディッキンソン(IRON MAIDEN)との類似を指摘されている。

個人的にはメタルに造詣の深いKohさんだけあって、色々なシンガーの歌唱法を適宜使い分けているように思うし、基本的には故ロニー・ジェイムズ・ディオを一番意識していると思うのですが、声質とのマッチングによってブルース・ディッキンソン風に聴こえる、ということなのではないかと思っています。

正直高音域やシャウトは世界の一流どころと比べてしまうと弱いのですが、私のように普段欧州インディーのメタル・アルバムをよく聴いているような向きにはさほど気にならないレベル。

楽曲については、アイリッシュ・ミュージックの要素を取り入れたヘヴィ・メタルというのが基本路線ながら、#5、#6のようにプログレッシヴな要素が強く押し出された楽曲も存在し、それぞれの楽曲が制作された時期がまちまちなこともあってか、良く言えばバラエティがあるし、悪く言えばクオリティや方向性にバラつきがある。

そして本作を語る上での最重要要素であるケルト音楽/アイリッシュ・ミュージックという「フォーク」な要素が「現地の人」にとってどう響くかは正直不明。海外のアーティストが楽曲中で日本の和音階などを取り入れると、単なるエキゾ趣味に基づく軽薄さを感じることがありますが、このバンドの音楽が海外(主に欧州)でどう評価されるかはその辺も結構重要かもしれません。

ドイツのSUBWAY TO SALLYやスペインのMAGO DE OZのように現地語で歌い、現地で人気を博しているような「フォーク・メタル」バンドは根っこがフォークにあって、メタルは「装い」でしかないような印象を受けますが、このバンドの音楽の場合は逆に基盤は結構渋めのHR/HMにあって、フォークの要素は「差別化の方法論」であるように私には聴こえました(それが悪いと言っているわけではない、というかむしろその方がHR/HMファンとしては馴染みやすい)。

ただ、基盤は結構渋めのHR/HMと書いた通り、昨今の何事もエクストリームなものがもてはやされるHR/HMシーンにおいては、アグレッションやメロディのクサさにおいてそれほど極端なものは提示されておらず、そういう意味では若者にはちょっと地味に響くのではないか、という気もします(とはいえメンバーの世代やKohさんのVoスタイルを考えるとある程度以上のアグレッションの強化は無理があるとは思いますが)。

実際私ももう少しキャッチーな要素が強くてもいいのではないかと思いましたが、日本のバンドがキャッチーさを追求すると陥りがちな「歌謡メタル化」をKohさんをはじめとするメンバーが忌避したのではないかとも推測もされ、キャッチーさが抑えられているからこそここまでグローバルな雰囲気を感じさせる作品に仕上がったのかもしれません。

いずれにせよ、演奏やサウンド・プロダクションをはじめ、日本盤がリリースされるレベルの欧米のバンドに引けを取らないクオリティを備えた作品であることは間違いなく、メタルに対する造詣の深いKohさんならではの「こだわり」が随所に感じられる力作だと思います。

本作はKohさんが加入する以前からのマテリアルも含む「これまでの集大成的な作品」という、バンドのデビュー作にありがちな性格の作品ですが、よりKohさんがイニシアティヴを執るであろう(?)次作が今から楽しみです。

◆BELLFASTのMySpace
http://www.myspace.com/bellfastband



【余談】

蛇足ながら、せっかくの機会なので私とKohさんの縁(?)について書いてみたいと思います。

Kohさんは私がネットに頻繁に触れるようになった2000年頃からサイト上で躊躇なく顔出しをなさっていたので一方的に存じ上げていました。

私が行った様々なアーティストのライヴ会場でもよくお見かけはしていたのですが、いつも知己の方々と談笑されているのでチキンな私は話しかけることもできず(そもそも「いつもサイト拝見してます」という以外に特に話すこともない)、一方的に知っているだけ、という状態がずっと続いていました。

そして私がKohさんのサイトを頻繁に訪れるようになってから数年後、自身のサイトを立ち上げました。このMETALGATEです。
当サイトの素朴な仕上がりを見るととてもそうは思えないでしょうが(苦笑)、サイト作りにおいてはCastle of Paganを大いに参考にさせていただきました。

サイトを公開するというのはつまり他人に見てもらいたいから公開するわけで、多くの人に見てもらうために有効な方法論のひとつに、同ジャンルの大手サイトに相互リンクしてもらう、というものがあります。

そう考えるとまず真っ先に(恐らく)日本一のアクセス数を誇るメタル系サイトであるCastle of Pagenに相互リンク依頼をするべきなのですが、あえて私はそうしませんでした。

というのも、基本的に今もそうですが、私は自分のサイトが「メタル上級者」の人が見るに堪えるものであるとは思っていません。
Kohさんに自分の書いた稚拙な文章を読まれるなど、穴があったら入りたいくらいです。

そのため、Castle of Paganに限らず、90年代から存在しているような老舗のHR/HMサイトは当サイトのリンク集にほとんど入っていません(いつかもう少しマシなサイトになったら相互リンクを申し入れたいな、という思いはあります)。

しかし、実際には2006年の10月以来、Castle of Paganとは相互リンクをしていただいています。
そのきっかけは、同年に行なわれたLOUD PARK 06でした。

2日目のトリであるSLAYERのショウが終了したとき、私は会場後方出口付近で、ライヴ中にはぐれてしまった友人と落ち合うため、日本初の大規模メタル・フェスに参加した感動の余韻に浸りつつボーッと突っ立っていました。

そこに後方から「あのー、写真撮ってもらえませんか?」という声が。

振り返ると、そこに立っていたのはデジカメを差し出すKohさん。

「あっ、Kohさんだ」と思いつつ、見るとKohさんの知己と思しき人たちがかなりの人数、撮影のためにスタンバっている。
割と空気を読むタイプの人間である自分は余計な無駄口は叩かず、取り急ぎデジカメを受け取り、手早く撮影を済ませました。

Kohさんたちは撮影が終わると私にお礼を告げてすぐに移動してしまいました。
私は友人を待っていたので動くわけにもいかず、その場はそれっきり。

しかし、帰宅してふと「これは、相互リンクを申し入れる千載一遇のチャンスなのではないか?」と思いました。
そして意を決し、「LP06で記念写真を撮った者」として相互リンクの依頼メールを送ったのです。

ほどなくして拍子抜けするほどあっさりと了承の返信をいただき、めでたく当サイトとCastle of Paganの間に相互リンクが成立。

まあ、サイトの掲示板やブログのコメント欄などから推察するにKohさんは基本的に気さくな方と思われ、特に理由づけなどなくても相互リンクには応じてくださったと思うのですが(笑)。

…以上が私とKohさんの人生における唯一の接点です(その後も色々なライヴ会場でお見かけはしていますが)。

まあ、Kohさんの方ではほぼ確実に私のことは憶えていらっしゃらないでしょうし、当サイトと相互リンクしていることもほとんど意識していらっしゃらないだろうと思います。

とはいえ、「袖すり合うも多生の縁」と言いますし、その袖がすり合った瞬間が第一回目のLOUD PARKというのは、このサイトにとっては結構運命的だなあ、と勝手に思っていたりします。

特にオチのない話ですみません(苦笑)。

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コメント

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こんにちは。
僕もKohさんのバンドだからという理由でBELLFASTが気になっていたのですが、試聴してみると結構僕好みだと感じたので購入を予定しています。僕はKohさんと会ったことも、お見かけしたこともないのですがadoreさんの仰るとおりCastle Of Paganの情報量と文章の楽しさ、毎年ヴァッケンに遠征するバイタリティ、そして自らが在籍するバンドでデビューしてしまうなんて、同じくHR/HMを愛する者から見てホントにカッコいいですねー。

そしてadoreさんとKohさんの出会いも興味深く読ませていただきました。
>そう考えるとまず真っ先に(恐らく)日本一のアクセス数を誇るメタル系サイトであるCastle of Pagenに相互リンク依頼をするべきなのですが、あえて私はそうしませんでした。
というのも、基本的に今もそうですが、私は自分のサイトが「メタル上級者」の人が見るに堪えるものであるとは思っていません。
Kohさんに自分の書いた稚拙な文章を読まれるなど、穴があったら入りたいくらいです。

という箇所を読んで、僕がadoreさんに思い切って相互リンク依頼をさせていただいた時のことを思い出しました。僕にとってはKohさんもadoreさんも僕のHR/HMライフに大きな影響を与えてくれた「メタル上級者」の方なので僕のブログを相互リンクしてもらうなんて畏れ多いと感じてたんですよね(基本的に引っ込み思案ということもあって)。でもMETALGATEを読んでいるとadoreさんとは本当に音楽の好みが近かったので、リンクさせてもらいたいという気持ちが勝りメールさせていただいたというわけです(笑)。
そろそろ「年間ベスト」なんてことも頭をよぎる時期なので年内に聴いておきたい作品が多いのですがBELLFASTもゲットしたいと思います。
最後になりましたが、僕のブログにコメントしようとすると禁止ワードに引っかかってしまうという件ですが原因がわかりません…。すみません。これに懲りず、これからも覗きに来ていただければ嬉しいです。

こんにちは&お久しぶりです。
かなりご無沙汰になってしまって申し訳ないです…。

僕もBellfastのCDゲットしました!
全体的にクオリティの高いアルバムでジャケもツボで満足な買い物をしました♪
ちなみに僕のサイトのジャケが左側にあって、右側にバンド名、アルバム、発売年、評価というのはMETALGATEのレビュー欄を見て良いなぁ~と思ったからです。
パクッてすいません…。これからもサイトもレビューも参考にさせて頂きます。

ありがとうございます!

ご無沙汰してます。ってちゃんと覚えてますって!!(笑)
アルバム、聴いていただいたうえにレビューまで!ありがとうございます。今回最もフォーカスしたのはまさに「グローバルであることへのこだわり」なので、そこらへんを的確に突いてもらえてメッチャ嬉しいですよ。

普段レビューサイトをやってる身としては「レビューされる」って感覚は表裏一体でありながら全く未知のもので、こうして書かれているのを読むとなんというか・・・「なるほどなぁ、確かになぁ」唸らされます。

今後とも、よろしくお願いします!

>よしよさん

本当にKohさんの生き様はカッコいいですよね。まさに人生是メタル。とても真似できません。

それに比べると私などは凡人であることが明らかですから、畏れ多いなんて言われると気恥ずかしいです(笑)。

私もよしよさんは私が把握しているネット上でメタルに関するレビューを公開している方の中で最も私の趣味に近い方の一人だと感じているので、コメントはできずとも(笑)ブログはちょくちょく覗かせていただきます。

>ゆーいちさん

お久しぶりです。

> ジャケが左側にあって、右側にバンド名、アルバム、発売年、評価

これは当サイトに限らず大抵のサイトがそうですよね(笑)。
BURRN!誌だってそうですし、ごく当たり前のレイアウトなのでパクリの部類に入らないと思いますよ。

かつて当サイトの文章をちょっとだけ変えてコピペしていたサイトを見つけたときには苦笑してしまいましたが(笑)。

>Kohさん

なんと、ご本人様が降臨とは!…穴があったら入りたいです(笑)。

しかも覚えていただいていたとは感激です。今度お見かけした際にはあらためてご挨拶させていただきたいと思います。

「グローバルであることのこだわり」は物凄く伝わってきました。
むしろもっと日本人らしさを出した方が海外ウケするのではないかと心配になるほどに(笑)。

レビューする側からレビューされる側に回るというのはある意味凄く勇気のいることだと思います。
とはいえKohさんはネット上のつまらない毀誉褒貶に左右されるような方ではないと思いますので、ぜひこのバンドでのグローバルなご活躍を期待しております。