HELLOWEENの新作「7SINNERS」を聴いて思うこと

本サイトでHELLOWEENの新作「7SINNERS」をレビューしました(こちら)。

基本的は良作だと思います。「Perfect Gentleman」の続編であるという「Who Is Mr.Madman」や、RAINBOWの「Light In The Black」に登場するフレーズそっくりのリフが印象的な「World Of Fantasy」などはかなり気に入っています。

が、アルバム全体として見たときに彼らのカタログの中で傑出した出来かというとそうは言えない、というかちょっと作風に違和感があるというのが正直な所です。

なんかちょっとマジ過ぎるというか…。
まあこの感覚というのは個人的なものだし、長年のファンだからこその思い入れあってのことなので、こんなところでうだうだ言っても仕方がないのですが。



先行シングルとなった「Are You Metal?」という曲名を見たときからその違和感はありました。

「We Are Metal!」でないだけマシですが、なんかこういう過剰な「メタルであること」のアピールというのはこのバンドに似つかわしくない気がするんですよね(カイ・ハンセンがVoをとっていた時期を除く。あの時期は「Heavy Metal Is The Law」でした)。

私は彼らの持つコミカルな一面というのは必ずしも好きではありませんでしたが、そういう面を含めてどこか親しみやすくカラフルなイメージというのがHELLOWEENの個性であり、例えばJUDAS PRIESTやIRON MAIDEN、MANOWARといった「典型的なヘヴィ・メタル・バンド」に比べてとっつきやすい雰囲気を醸し出していたと思います。

楽曲の面でも他のヘヴィ・メタル・バンドに比べてメロディアスでキャッチー、時にポップでさえあるそのサウンドは、それまでJ-POPしか聴いていなかったような人にとっても受け容れやすく、日本や北欧など、他のエリアに比べて叙情的なメロディの強い音楽が人気を博す地域における人気の大きな要因となっていました。

それらの特徴はコアなメタル・ファンには「軟弱」と映ったり、「初心者向けのメタル」として馬鹿にされる傾向もありましたが、そういう「一般人に理解できないものを理解できる自分カッコいい」みたいな考えはいわゆる中二病と呼ばれて然るべきもので、自分も最初からコアな音楽を聴いていたわけではない(ひょっとすると最近では親の影響で小さい頃からデス・メタルしか聴かせてもらえなかった、みたいな人もいるのかもしれませんが…)ことを忘れて「初心者向けなもの」を嘲るというのは、まあ、控えめに言っても恥ずかしいことだと思います。

ちょっと話がそれましたが、そのHELLOWEENならではの特徴が今回のアルバムでは弱い。

BURRN!誌の先月号におけるインタビューでヴァイキーが「日本のファンの趣味にばかり合わせているわけにはいかない」というようなことを語っていたので、この方向性は確信犯なのでしょうが、個人的にはせっかくの個性を押さえ込むようなことをしなくても、と思いました。

さらに同じBURRN!のインタビューでアンディ・デリス(Vo)による「メタルに戻れたことが本当に嬉しい」だの「メタルへの衝動が抑えきれなくなるってもんだよ」だの「俺達はメタルを聴くことにも、作ることにも中毒状態なんだ」なんて発言にも違和感が拭えない。

ヴァイキーが言うならまだしも、元PINK CREAM 69で、そのポップ・センスを高く評価されていたアンディにそんなことを言われても説得力がないというか…。

まあ、実際前述の「Are You Metal?」や今回のアルバム中で最も攻撃的な「Long Live The King」などはアンディの手による楽曲で、アンディが今回彼なりに気合を入れてメタルにこだわったことは事実なのでしょう。

(ひょっとするとPINK CREAM 69でキャッチーな曲をプレイしていたのはデビュー当時はまだそういうキャッチーなハード・ロックがアメリカでも受けていたからで、本当は元々もっとメタリックな音楽が好みだったという可能性はありますが…)

たしかにBIG4のツアーは大盛況、IRON MAIDENの新作は世界21ヶ国でNo.1に輝き、AVENGED SEVENFOLDのように若いバンドが全米No.1になるなど昨今メタルは久方ぶりに活況を呈している。

この状況を踏まえ、このビッグウェーブに乗るしかない、という気持ちがこういうアルバムを作らせたのかもしれません。

ただ、その思惑が当たって本作が商業的に大成功すると、この路線がずっと続きそうでちょっと複雑です。

いやもちろん長年のファンとして彼らにはさらに売れてほしいですよ。キャリア25年といったらそろそろレジェンドになるかロートルと呼ばれるか、というステージで、レジェンドになるにはさらなる商業的成功が必要ですからね。

まあ中には彼らをロートルと思っている人もいるのでしょうが、個人的には彼らの作っている音楽のクオリティとテンションはまだまだロートルと呼ばれてしまうようなレベルではないと思っています。

むしろ、結成25年を超えてこのクオリティを保っているというのは驚異的で、BLACK SABBATH、JUDAS PRIEST、IRON MAIDEN、METALLICAといったメタル・レジェンドたちと比べても、こと後期における楽曲のクオリティという一点においては劣らない、というかむしろ優越しているとさえ思います。

もちろん若いメンバーを入れるなどのアンチエイジングもしているわけですが、特に外部ソングライターなどを起用することなくこれだけの楽曲を書き続けてきたというのは凄い。

まして彼らはAC/DCやSLAYERのようなバンドと違って、リフやノリ一発ではない、あくまでメロディやハーモニーといった音楽的な要素を重視した作曲を続けてきて、未だ枯渇していないわけですからね。

幾多のメロディック・パワー・メタル・バンドが、デビューから10年もしないうちに「枯渇」していったのを思えば、いかに彼らの作曲能力が卓越しているかが理解できるというもの。

というわけで今回も楽曲のクオリティにおいては申し分ないのですが(ただし1曲目を除く。この「Where The Sinners Go」はバンド史上屈指の駄曲だと思う)、次回はもうちょっとHELLOWEENらしい音楽だと嬉しいな、と。

どうでもいいことですが、世界バレーのこの↓マークを見るたびになんとなく本作のジャケットを思い出します(笑)。

worldvolleyball2010.jpg

スポンサーサイト

コメント

非公開コメント

僕も一通り聴きました。
最初は「おっ、速いじゃん!カッコいいね~」なんて思ってたんですが、途中から違和感を覚え始め、最後には飽きまで来てしまいました^^;
なんか単調すぎやしませんか?^^;

Adoreさんが敢えて引き合いに出されてた「DARK RIDE」ですら、彼ららしさのあるメロディが頻出しており個人的には傑作なのですが、今作に関して言えばちょっと違うなと…

結論としては、HELLOWEENにはあくまで「メロディックパワーメタル」を貫いて欲しいな~ってことです。

おっしゃる通り、過去にキッズ達をメタルの世界へ誘った親しみやすさという点では「らしくない」アルバムだと思います。

でも、MAIDENやJUDASの新作よりはるかに楽しめる楽曲のクオリティは、このキャリアでは凄いなあと素直に感心してしまいました。

昔、 "Falling Higher" って曲で "Metal will never die" って歌詞が飛び出てきたこともあるので、意外と彼らはメタルを普及するためのバンドという意識が強いのかもと個人的に思ってます。

何となくMETAL GODに憧れている(なりたい?w)空気が伝わってきます。

前作のが良かったです・・・

前作が素晴らしい出来だった為に、この落差は・・・。
正直、先行EPの“I'm Free”が一番良かったです。
本編は何だかどの曲もいまいち盛り上がりに欠けるというか、見せ場が無いまま聴き終わってしまうという感じですね。ちょっと今年のベスト候補には挙げられないかな・・・。

個人的にはOPERA MAGNAの「POE」が今のところダントツです!

まとめてお返事

>yu-kiさん
たしかに「DARK RIDE」の方が全然イイですね。
単調とまでは思いませんが、やはりHELLOWEENの良さが発揮されるのはもっとメロディックな楽曲であるような気がしますね。


>naokiさん
おっしゃる通り、キャリアを考えるとこれだけ楽曲のクオリティを保っているというのは凄いことだと思います。

先月号のB!でアンディは「いつかヘヴィ・メタル・ゴッド達のどこかに入れてもらえたら」と言っているのできっとそういう思いが本作を作らせたのでしょうね。


>学生メタラーさん
「I'm Free」をアルバム本編に入れなかった、ということが本作がどういう狙いで作られたかということを示しているんでしょうね。

とりあえずOPERA MAGNAがダントツ、という感性の方には厳しい作風かもしれません(笑)。

初めまして。
だいぶ前からサイト・ブログ共に拝見しておりました。cthuと申します。

自分はSlipknotからMachine Head→Slayer→Obituary→Megadethと聴いていってメタルに入りました。比較的「最初からコアなメタルを聴いていた」少数派に近いかと思います(笑)

なのであまりこの場にはそぐわないのですが、その少数派付近の観点から述べますと、今回のアルバムの印象は今までのアルバムに比べてかなり良い方でした。
色々とそぎ落とした分スリムになったなー、と。

逆に、これまでのスタイルに拘らず、メロディセンスを活かしてもっとカッコよく仕上げた音楽にこのまま突き進んでほしいとも感じたり。
自分の嗜好的に、メロパワ路線全開のHelloweenより「Walls of Jericho」のスラッシュ路線や「The Dark Ride」のモダン路線のHelloweenが好き、というのも好印象の背景にあるかもしれませんが…。

どちらにせよ、このアルバムが日本のファンに不評だったら、彼らは間違いなくサウンドを戻してくると思います。「Master of the Rings」という例がありますし。

 HELLOWEENの面白いところは、主要なメンバーが変わっているのにも関わらずコンスタントに傑作を出しているというところですね。その割りにリーダーである Weikath はそれほど量を作曲している印象もありませんし。
 あとこの手のパワー・メタル・サウンド(いや微妙に方向性は違うけど)にしてはユニークなリフも多くて、そこまた大好きです。
 新作はまだ聞いていませんが、「HELLOWEENの最高傑作は"The Dark Ride"であると考えているので意外と気に入るかもしれません。

グレイヴ・ディガーも頑張っていますね。

「Who Is Mr.Madman」、「World Of Fantasy」は確かに良かったですよね。
1曲目のバンド史上屈指の駄曲(本当にそう思う、しかもなぜ1曲目なのか疑問)と世界バレー(たしかに素朴に似ている)、「We Are Metal!」でないだけマシのくだりはつられて笑いました。
個人的に9曲目「If A Mountain~」の心地よいメロディ、ストレートな疾走感でハロウィンを聴いていることを実感、「え、すでに9曲目!!」という感じでしたね(極端な表現ですけど)。
カメレオンからマスター・オブ~での逆転劇を今回のアンアームドから7シナーズの流れに置き換えて考えていたのですが、期待しすぎというものでした。
ANGRAにおいても、以前の解散の危機からリバースで見事に復活した時のように、今回も休止状態からの活動再開で同じ流れとなることを期待していたが、少し裏切られたのとちょっと似ているかもしれません。
しかしラプソディは見事に蘇生しましたが。
そうは言っても、adoreさんがおっしゃる通り、現在までこのレベルを維持していることにはただただ脱帽。

まとめてお返事2

>cthuさん(なんて発音するんですか?:笑)
はじめまして。
違う意見の人が入りにくい「馴れ合いの場」に見えるのは本意ではないので、cthuさんのような方は大歓迎ですよ。

HR/HMに初めから「過激さ」を期待している人はかなりコアなバンドから入門するようなので、cthuさんのような方もそんなに少数派ではないと思いますよ。
ただ私を含め、聴きやすいバンドから徐々にヘヴィな音楽に馴染んでいった、という人のほうが相対的に多いとは思いますが。

多分、現在日本のマーケットに頼らなくてもいいくらい他のエリアのマーケットが成熟してきているので、欧米でこのスタイルが受ければ、日本でいかに不評であろうとスタイルは戻さないでしょうね。世界中で袋叩きにあえば別でしょうけど(笑)。


>ノームさん
一定水準の曲を書けるメンバーが常に3人以上いて、それぞれの良い曲だけを選抜することができるというのがHELLOWEENの強みでしょうね。一人の天才に依存していたらこの安定感はなかったと思います。

新作は別に悪い仕上がりではないので、ぜひご自分の耳で確かめてみてください。


>フィンさん
個人的に「UNARMED」は結構気に入っていたし、「CAMELEON」と違ってあくまで企画モノだと思っていたので、特に復活とかそういうことは期待していなかったのですが、まあ前作(GWTD)が割とHELLOWEENのイメージに近いカラフルな作品だったので、本作がちょっと地味に映ることは事実ですね。

ただ、その地味さが必ずしも才能の枯渇を感じさせるものではないので、またそのうち傑作を届けてくれるだろうとは思っています。

こんにちわ♪
ここ最近のANGRA、ブラガなど最近聞いたアルバムに比べるとダントツに再生回数が高いです(笑)
確かに突出した曲は無いし、1曲目はつまらないし(汗)、アルバム未収録の「I'm Free」はカッコイイしと色々不満もあるのですが、それでもアルバム全体でほとんど捨て曲が無かったのは久しぶりなので、嬉しくて聞いてます。

去年リリースのカイちゃんのアルバムと比べると、どうしても格が違うなって思っちゃいました(笑)

⑥⑨が大好きです(^^)/

>珍獣メガネコアラさん

私はカイ・ハンセン派なのであまり認めたくはありませんが、2000年以降確かに出すアルバムのクオリティには差がついてしまいましたね(苦笑)。

カイという一人の天才に依存したバンドと、優秀なソングライターが複数いるバンドの差が出てしまった感じですね。

アンディって・・

いつも楽しく読ませてもらってます^^

正直今回のアルバムはがっかりですね・・。ここ数作、サシャとマーカスがいいセンスしてるのがわかってうれしかったのですが、ヴァイキーの曲の魅力が減ってきているような・・。

昔からアンディの曲はあまり好きじゃなかったけど、今回のは粘っこいボーカルと相まってハロウィンが持っていた良さを消している気がします(汗)

良いソングライターがいるのにアンディの曲多すぎ!・・でもやっぱりハロウィンだから毎回期待しちゃうんですよね~。

一度でいいからヴァイキーのソロアルバム聴いてみたい(笑)もちろんインストじゃないやつを・・


人のブログに長々すみません。これからも楽しみにしてますね♪

>black&greenさん

はじめまして。本名は黒田緑さんですか?(笑)。

ヴァイキーはB!のインタビューによると今回「典型的なHELLOWEENのアンセム的な曲を2曲作曲したものの、時間の都合で完成させられなかった」そうなので、次作に期待しましょう。

アンディの声はたしかに微妙ですよね。
甲高い声より親しみやすい、という人もいますし、個性的であるということは間違いないと思いますが…。

ヴァイキーのソロはたしかに聴いてみたい気がしますし、彼はギターのテクニックにはコンプレックスがあるようなので絶対にインスト・アルバムにはならないと思いますが、そもそも彼がソロを作るほど働き者だとは思えないですね(苦笑)。

今回のアルバムの感想はほとんど管理人様と同じですね。
相変わらず全体的なクオリティは高いですが、遊び心やポップ的な要素が少ないですし。
僕は彼らのコミカルな面も結構好きで、「Rise And Fall」「Dr.Stein」「The Game Is On」「Lavdate Dominvm」などの遊び心のある明るい曲もお気に入りなので、そういう曲も欲しかった気がします。
それでも決して悪い出来にはならないので、やっぱり凄いバンドだと思いますね。

>彼はギターのテクニックにはコンプレックスがあるようなので絶対にインスト・アルバムにはならないと思いますが、そもそも彼がソロを作るほど働き者だとは思えないですね(苦笑)。

↑には笑いました。同感です。ヴァイキーはたびたび「サシャの方がうまい」と言っていたり、メンバー紹介のときにギターを弾く代わりに口でピロピロ言っていたり、なんとなくギターが下手なのを気にしている感じがあると思ってましたので。それにソロ作品を作るほど曲を量産するタイプでもなさそうですよね。出したら僕も聴いてみたいですけど。

2月の来日公演はStratovariusとのカップリングなので、かなり楽しみです。東京は平日なのが厳しいですが…。

>Endさん

ヴァイキーがサシャとギターのテクを比較するのはサシャに失礼というものです(笑)。

来日公演、平日でしかも月曜日というのが社会人にはしんどいですよね。
二階席が取れればまだしもですが…。