ISSA / SIGN OF ANGELS

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BURRN!誌で95点を獲得(評者は広瀬編集長)して話題の、ノルウェー出身の女性シンガーによるデビュー・アルバム。

通常日本ではキングレコードから発売されることが多いイタリアの「Frontiers Records」のプロダクトだが、日本では先日リリースしたALDIOUSのデビュー・アルバムが好調なインディーズ・レーベル「SPINNING」からのリリースになっている。

ISSAというと日本人にはDA PUMPの彼しか思い浮かばないが、本名であるイサベル・ウーヴェスヴェンの愛称的なものがこの芸名と思われる。

当初、彼女および本作のバックグラウンドについて説明してから感想を書こうと思ったのだが、思いのほかその説明が長くなってしまったので、それは追記に回し先に感想を。

たしかに高品質なハード・ポップ・アルバムだと思う。演奏・プロダクションも悪くないし、飛び抜けた名曲こそ存在しないものの、楽曲の粒も揃っている。

北欧らしい哀愁をまといつつ、ISSAの歌声はキレイめなルックスに似合わず意外とパワフルで、BURRN!誌の広瀬編集長や藤木記者が言うように、北欧ハード・ポップ・マニアの間でリリースから20年経った今なお語り継がれる名盤であるERIKAの「COLD WINTER NIGHT」に通じるものがある。

ただちょっと曲調にバラエティが乏しく、ISSAの歌唱もそれなりに上手いものの、色々な表情を見せる、というタイプのものではないため、やや一本調子に響く場面もチラホラ。

ぶっちゃけディストーションのかかったギターを抜いてドラムの手数を減らしたらそのまま単なるポップスになってしまいそうな楽曲ばかりで、HR/HMならではの醍醐味のようなものはほとんどなく、その点も個人的には物足りない。

もちろんHR/HMならではの醍醐味の有無と音楽としての良し悪しの間には何の関係もなく、昨今こういうメロディ重視のポップ・ロックがメインストリームにあまり存在しないという意味での価値があるのはわかるんですけどね。

まあ、歌メロさえ良ければそれでよし、というタイプのリスナー向けですかね。いずれにせよ95点はちょっと盛り過ぎじゃないですか。ましてやHR/HM専門誌としては。【81点】

◆ISSAのMySpace
http://www.myspace.com/isabelloversveen




【追記】

彼女は現在27歳で、音楽業界に身を投じたのが17歳のときというから下積みは結構長い。

はじめはヤン・タイガンなるノルウェーのポップ・シンガーのバック・シンガーとして活動し、19歳のときにテレビ局の企画で制作されたヤン・タイガンの育成するタレントのコンピレーション・アルバムに参加。そのときに歌った「Fade Away」という楽曲の作曲者は97年までDIMMU BORGIRのKey奏者だったスティアン・アースタッドだったそうで、ある意味これが彼女とHR/HMとの最初の接点である。

その後、様々なアーティストのバック・ヴォーカルやスタジオ録音を手伝うかたわら、COVER GIRLSなる3人組のガールズ・グループで活動。ノルウェー国内で400回以上のショウをこなすことでステージ経験を積んだそうだが、このグループのコンセプトは様々なポップ・ヒット曲をヘヴィ・メタル風にアレンジして歌う、というメタル人気の高い北欧ならではのものだったそうで(ちょっと聴いてみたい:笑)、ここでもHR/HMとの接点はあったことになる。

ただ、本人がHR/HMに目覚めたのは22歳のときに母国ノルウェーを代表するHRバンドTNTの「10000 Lovers」を聴いたことがきっかけらしく、そういう意味では「遅咲き」といえよう。

そのことだけがきっかけというわけでもないと思うが、これ以降彼女のキャリア自体も次第にメタルへと接近していくことになり、ノルウェーのプログレッシヴ・メタル・バンドILLUSION SUITEや、メロディック・パワー・メタル・バンドGAIA EPICUSのアルバムにゲスト参加した経験があるとのこと。

そしてそのILLUSION SUITEのアルバムを聴いたマイケル・エリクセン(Vo:CIRCUS MAXIMUS)が、当時「Frontiers Records」が企画していたマイケル・キスクと女性シンガーのデュエット・アルバムにおけるマイケルのデュエット候補として「Frontiers」に彼女を推薦したことが新たな道を開くことになる。

ご存知の通り、実際にマイケル・キスクのデュエット相手になったのはアマンダ・サマーヴィルで、ISSAは「落選」したわけだが、彼女のスター性と歌唱力は「Frontiers」の目に止まり、ソロ・アルバム制作のオファーが来たのだという。

本作で彼女のバックを務めるのはピーター・フース(G:元SINERGY~SHINING)、ノビー・ノーベリ(元NATION~DIONYSUS~SAINT DEAMON)、そしてウリ・カッシュ(Dr:元HELLOWEEN~MASTERPLAN)といった顔触れで、欧州メタルのマニアであればピンと来る顔触れ。

そして本作のプロデューサーであるロニー・ミリアノヴィッチ(元SINERGY~DIONYSUS~SAINT DEAMON)、そしてプロのソングライターであるティム・ラーション(本作のKey奏者)にトビアス・ルングレンが中心となり、ソーレン・クロンクヴィストにダニエル・フローレス、トーマス・ヴィクストロム(元CANDLEMASS~STORMWIND~THERION)という昨年CRASH THE SYSTEMというプロジェクトに関わっていた人たちや、KHYMERAやHOUSE OF LORDSに楽曲を提供していたトム&ジェイムズのマーティン兄弟などが本作の楽曲を手掛けている。

PVが制作されたリーダー・トラックの#2「I’m Alive」のクレジットにはHAMMERFALLのヨアキム・カンスの名前も見られ、上記の名前を見てスウェーデン人ばかりだとお気づきになった方もいるかもしれないが、本作は彼女の母国であるノルウェーではなくスウェーデンで制作されている。

ちょっと毒を吐かせてもらうと、要はポップ・フィールドで通用しなかった女性シンガーが年齢的にポップの世界での仕事がなくなってきたためにHR/HMというポップ・マーケットから見れば(音楽的な意味ではなくビジネス的な意味での)「二軍」に落ちてきたわけで、そういう彼女に対してHR/HMファンが「ルックス抜群!」などともてはやしている様は個人的にはちょっと見ていて痛々しい。

まあ、彼女は実際ある程度HR/HMが好きでやっているみたいだからこれはこれで本人にとってはいいと思いますし、ポップのフィールドで成功できないとそのまま諦めて消えてしまうような人より音楽に対する執着が感じられて好ましいとも思うのですが、うっかり彼女がブレイクしてしまったりするとこういうアイドル崩れがドッとHR/HMのマーケットに流入して粗製濫造を招きそうでちょっと怖いですね。

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コメント

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95点?

広瀬編集長のレビューの仕方には前々から首を傾げていました。
特にメロハー系やパッと出の国産バンドに90点以上を付ける傾向がありますよね?
実際買ってみて苦い思いをしたこともあります(苦笑)
また担当ページのコラム等では読んでいてこちらが恥ずかしくなるようなものも見受けられます。
学生の分際の私が言うのもあれですが、雑誌のいち編集長がこれでは・・・

パワーメタル系に対する藤木・羽田両氏やエクストリーム系に対する前田氏のレビューは比較的参考になります。
何かISSAさんに関係ないコメントですみません。

DIMMU BORGIRとかSHININGとかウリ・カッシュとかの名前が出てきたので近寄ってきました(笑)

正直、メタルに女性シンガーが進出してくることに否定的な立場なので(ポップスなら女性シンガーの方が好きですが)、広瀬編集長の絶賛レビューも苦々しく思いますが、adoreさんのおっしゃる通り歌メロがポップスのそれなのが個人的には好印象ですね。変にメタル・シンガーぶって細めのハイトーンを連発されるより聴きやすい。
こういう人が暗黒期のHELLOWEENの曲とか歌うと結構良いかもしれない、と想像したりします。

あ、名前の読み方ですが、「くず」のつもりです。

>学生メタラーさん

> パッと出の国産バンド

NoGoDのことかーーー!!!(笑)

まあ私もだまされた回数では広瀬氏がダントツ1位ですね(笑)。
BURRN!のレビューを読むときの個人的な警句は「広瀬と幅には気をつけろ」です(笑)。

個人的には前田氏の褒めるメロディアス系と藤木氏の褒めるエクストリーム系バンドに興味を引かれます。

>cthuさん

くず…まあ、頑張ればそう読めなくもありませんね(笑)。

DIMMU BORGIRやSHININGとはあんまり関係ないエントリーですみません(笑)。
HELLOWEENの暗黒期っていつですか?

>adoreさん

自分のHNは元々「Cthulhu」から取ったんですけど、それだとあまりにも直接的すぎるので省略してます。

こういう一見関係ないところに自分の好きなコア系バンドの名前が出てくるだけでも嬉しいのです。特にSHININGはかなり好きなもので……(笑)

メタル聴き始めたばかりのころ、上級者の友人に「PINK BUBBLES GO APE」~「CHAMELEON」の頃は暗黒期と教えられたもので、それ以来その辺は暗黒期と呼ぶのが常態化してしまってます(笑)
普通は迷走期って言いますよね。よく考えたら変だな。

特に「CHAMELEON」の曲は、もっとポップス系の声色のシンガーが歌えば映えるのになー、と常々思っています(マイケル・キスクは声音がメタル・シンガーっぽすぎて曲に合ってないように感じるので)。
ので、ISSAのような人にこそカバーしてもらいたい。

>cthuさん

なるほどクトゥルフが元ですか。それが「くず」って…(笑)。
SHININGが好きとはかなりコアですね。

なるほど、もしかしたらそうかな、とは思っていましたがやはり「CAMELEON」の頃が「暗黒期」ですか。

個人的にはあの時期のコミカルなメタル・サウンドにはマイケル・キスクの明るい声がハマっていると思っていたのですが、やはり色々な感じ方があるんですねぇ。