FORGOTTEN TALES / THE PROMISE

forgottentales01.jpg

カナダ出身、赤毛の女性Voをフィーチュアしたメロディック・パワー・メタル・バンドのデビュー・アルバム。

当時北米はメロディック・パワー・メタル不毛の地だったため、「ついに北米でもこの手の音楽が出てくるようになったか」と感慨を覚えたが、ちょっと調べてみると何のことはない、カナダの中でも最も欧州(フランス)に近い文化を持っているケベック州出身なので、比較的欧州の音楽に対する感度・親和性が高かったということなのだろう。

前身となるバンドCYCLONEはVoのソニア・パインオールトと、Gのマーティン・デスハーネスを中心に、70~80年代HR/HMやTOP40モノのカヴァーを中心に、フランス語(ケベック州の公用語)によるオリジナル曲などもプレイしてクラブ中心にライヴを行なっていたが、グランジ/オルタナティヴの流行も影響して活動に行き詰まりを感じ、97年頃に解散していた。

そこに登場するのが、ソニアの弟であり、地元でラジオ番組を持っていたルネ・パインオールト。後にFORGOTTEN TALESのマネージャーにもなるこの人物は、90年代初頭にHELLOWEENやBLIND GUARDIAN、GAMMA RAY、STRATOVARIUSといった欧州のメロディック・パワー・メタルに触れて感動し、自身のラジオ番組などを通じて草の根的にそうしたバンドを紹介していたが、遠く離れた欧州のバンドを紹介するだけではどうしても盛り上がりに欠けると思い、地元カナダのメロディック・パワー・メタルを発掘・育成したいと考えていた。

そのとき、既に解散状態にあった「姉のバンド」であるCYCLONEに目を付け、メロディック・パワー・メタル・バンドとして生まれ変わるよう提案したのである。バンドのメンバーも元々そういった音楽が好きだったこともあり(身近にルネという「伝道者」がいたことが大きいだろう)、そのアイディアを受け容れ、CYCLONEの最後の時期のメンバーに加え、新たにKey奏者のフレデリック・デスロチェスを迎え、バンド名をFORGOTTEN TALESと改め、新たな活動を始めることになった。

当初は「メロディック・パワー・メタルに対するトリビュート・バンド」というスタンスで、HELLOWEENやSTRATOVARIUS、EDGUY、SONATA ARCTICAといったバンドのカヴァーを中心に演奏していたという。

転機になったのは、NIGHTWISHのモントリオール公演のオープニング・アクトに抜擢されたことだった。このとき、NIGHTWISHが所属していた「Spinefarm Records」の社長から「FORGOTTEN TALESには可能性がある。是非アルバムを作ってみてはどうだろうか?」と激励されたことでバンドは俄然やる気になり、アルバムのレコーディングに向けて邁進することになる。

その時点ではオリジナル曲は2曲しかなかったそうだが、半年ほどでアルバム1枚分の楽曲を完成させ、本作「THE PROMISE」がリリースされた。

本国カナダでは「トレンディな音楽ではない」ということでほとんどメディアに取り上げられてもらえなかったそうだが、欧州および日本のメロディック・パワー・メタル・マニアの間ではかなり話題となり、輸入盤がかなりの枚数売れたらしい。

そしてオリジナル発売から遅れること9ヵ月ほどで日本におけるメロディック・メタル評論の第一人者である“キャプテン”和田誠氏がプロデュースするメタル専門レーベル「CAPTAIN ROCK」の第一弾アーティストとして日本盤がリリースされた(発売はM&Iカンパニー、販売・流通はポニー・キャニオン)。

本作で聴けるのは、つい先日までカヴァー・バンドだったとは思えない堂々たる出来栄えのメロディック・パワー・メタル。

お約束のクラシカルなインスト#1から疾走する#2「Word Of Truth」の流れで、この手のマニアなら手応えを感じることだろう。

全体的に疾走感のあるテンポの速い楽曲を中心にまとめ、アルバム後半、#7から#10まで4部構成となる大作「The Tale Of Neeris」などを収録している辺りもこの手の音楽を好む人間のツボを心得ている。

サウンドが若干軽めなのが惜しいが、それほど気にならないし、演奏も手堅くまとまっている。

楽曲も、コピーしていたというHELLOWEEN、STRATOVARIUS、EDGUYなどの影響を感じさせつつ、B級バンドにありがちな単なる模倣や安易なパクリに陥らず、それほど強いものではないにせよ、ちゃんとFORGOTTEN TALESならではの個性の萌芽をこの時点で見せているのが心強い。

全体的に楽曲/メロディが明るめであっさりした印象なのは北米出身という土地柄なのかもしれないが、変にクサみが強くならず、ある意味洗練されていると言えなくもない。

何より素晴らしいのが赤毛のシンガー、ソニアの歌唱力で、その力強い歌声こそがこのバンドの音楽の核になっていると言っていいだろう。NIGHTWISHの成功後、女性Voをフィーチュアしたメロディック・パワー・メタルは数多く出てきているが、こと歌唱力だけに関して言えばこのFOTGOTTEN TALESは間違いなく「一線級」である。先述の通りやや淡白なメロディも彼女の力強い歌声によってより劇的に響いているといっても過言ではない。

NIGHTWISHのターヤのようなオペラティックな歌唱法ではないが、そのパワフルかつ音程の正確な歌唱力は『Quebec Conservatory Of Music』で1年半ほどクラシックの声楽を学んだ後、『Ste-Foy Collage』で2年間ジャズとクラシックのトレーニングを受けたという確かな訓練の下地があってこそだろう。

心なしか同じカナダ・ケベック州出身の世界的ディーヴァ、セリーヌ・ディオンに顔立ちも似ているような。

これまで北米にメロディックなメタル・バンドが存在しなかったわけではないが、こういうモロにHELLOWEEN~STRATOVARIUSの流れにある所謂「メロスピ」を標榜して、きちんとしたアルバムをリリースした北米のバンドはひょっとすると彼らが初なのではないか(少なくともカナダでは初?)。

そういう物珍しさも含め、当時個人的に注目していたバンドである。【80点】


スポンサーサイト

コメント

非公開コメント