BLACK TIDEの新作「POST MORTEM」を聴いて思うこと

3年前、BLACK TIDEのデビュー・アルバムが発表されたとき、私はこのバンドにものすごく可能性を感じました。

楽曲そのものの完成度については詰めの甘さが残るとはいえ、クラシックなHR/HMを、モダンな感性で鳴らすという難事をあっさりと具現化してみせたこのバンドこそ、次世代のHR/HMを担っていく存在かもしれないとさえ思いました。

そして今後アメリカからこういうHR/HMの遺伝子をダイレクトに受け継いだバンドが次々とデビューしてくれるのではないかと期待したのです。

ファースト・アルバムのレビューや、それに付随して書いたこのブログの記事にも、そういう私の期待感が反映されていると思います。

LOUD PARK 08についても一番期待していたのは彼らでしたし、09年に行なわれたTRIVIUMの来日公演を観に行ったのも、サポート・アクトである彼らが目当てだったと言っても過言ではありません。

そのライヴについては、正直未熟さが目につきましたが、まあそれは若さゆえやむをえないことかと思っていました。

ただ、声変わりによってすっかり声質の変わってしまったガブリエルのVoと、「最近はSAOSINのようなモダンなバンドにハマっている」という海外インタビューでの発言などによって、「ん~、これはもうダメかもしれん…」と思いつつありました。

そして届けられた3年ぶりの新作、「POST MORTEM」。
正直タイトルにもジャケットのアートワークにもピンと来るものがなく、特に期待することもなく惰性で購入しました。

まず言っておくと、アルバムの仕上がりそのものは悪くないです。楽曲の質自体はかなり高い水準に達しており、楽しめる人は充分楽しめるだろうと思います。

ただ、そのサウンドは80年代HR/HMの影響をダイレクトに感じさせた前作とは打って変わって、モロにBULLET FOR MY VALENTINE(以下BFMV)からの影響を感じさせるイマドキのエモがかったメタル・サウンド。

前作発表後、BFMVの欧州ツアーにも帯同していましたし、LOUD PARK 08でも同じ日に出演するなど彼らとの縁が深かったゆえに影響を受けたということなのでしょうか。

なお、本作にはBFMVのマット・タック(Vo, G)が#1「Ashes」にゲスト参加しており、このアルバムがBFMVのファンを意識していることを感じさせます。

実際、本作の音はBFMVの最新作を気に入ったようなファンにとってアピールするサウンドだと思います。GLAMOUR OF THE KILLのような同じBFMVフォロワーに比べればエモ度が低く、メタル度が高いあたりも含めて。

声変わりしてしまったガブリエルの歌声も、このサウンドにマッチしているのは事実です。

しかしここまであからさまな「フォロワーの音」に甘んじてしまってイイの? というのがファースト・アルバムで彼らに惚れ込んだ者としての本音。

まあ、たしかにこういう音の方が「売りやすい」というのはわかりますよ。
ある意味彼らの年齢相応の「イマドキ」なサウンドですしね。

このサウンドの変化がそういう「売りやすさ」を意識したレコード会社なりマネージメントなりの「オトナの判断」によるものなのか、彼ら自身がBFMVのツアーに帯同するなどして感化された影響かどうかはわかりませんが…。

前作が出たときにもちょっと危惧していたのですが、やはりあまり若くして世に出てしまうと、ちょっと人生が歪められてしまうと思うんですよね。

宇多田ヒカルなんかは親も有名人だったおかげで多少はうまくやっていたように見えましたが、それでもやっぱり私生活の部分では歪みを自覚せざるを得ず、ああいう休業の仕方をしているんでしょうし。

スポーツ選手とか、クラシックの演奏家とか、そういう「とにかく上手くなること」が全ての世界であれば若くしてプロのフィールドに飛び込むことがプラスに働くことが多いと思います(そのかわり実際に才能がなければ容赦なく潰されますが)。

しかし、こういうロックのアーティストっていうのはいかに「自分の世界」を作り上げるかの方が「上手くなること」より重要だと思うので、若いうちはもっと日の当らない所で地道に自分の世界を形成していくほうがいいような気がするんですよね。

ティーンの多感な時期に、いきなりビッグなプロ(BFMV)に触れてしまうと、そりゃ影響されてしまいますよ。
実績のあるプロデューサーに「こうした方が売れる。我々に任せておけ」と言われりゃ、よほど天の邪鬼な性格じゃない限り「そうなのかな」と思ってしまいますよ。

まあ、実際に彼らが地元でコツコツと下積みをした所で「独自のサウンド」を確立したかどうかはわかりませんし、彼らがいきなりメジャー・レーベルからデビューできた理由の一つは「若さ」そのものにあるので、彼らのデビューがもっと遅かったら、という「If」にあまり意味はないかもしれません。

あるいはひょっとするとこの「方向転換」はBFMVを聴いているような若いメタル・ファンを取り込むための戦略的なもので、次作以降「彼ら独自の音」が次第に浮き彫りになってくる、という中長期的な展望に基づく意図的な作風なのかもしれませんが。

まだまだ若い彼らゆえ、可能性は未だ大きく広がっていると思いますし、こういうサウンドこそが今や「メタルへの入り口」として機能するのではないかという期待もあるのですが、こういうバンドをどこまでフォローするかでこのサイト/ブログの立ち位置が変わってくるような気がしますね。

◆「That Fire」のPV [YouTube]

ライヴで盛り上がりそう。悪くはないのだ。むしろ良いのだ。だけど…。


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コメント

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今思えばファーストアルバムは「奇跡の一枚」だったのかもしれませんね。

私も少々ガッカリした1人です。
1stはNWOBHMや初期メタリカからの影響を感じさせる正統派メタルサウンドで「アメリカの若手にもまだこういう音楽をやれるバンドがいるのか」と嬉しかったのですが・・・
やはりアメリカのバンドはアメリカだったようで(笑)

こ、これは…思っていたよりもかなりエモい…
ありがちな今風のバンドになってしまったのかぁ

リア充臭が…

まとめてお返事

>名も無きメタラーさん
このまま順調にモダン化していったら、そういうことになってしまうかもしれませんね。
彼らは若いのでモダン路線で奇跡の名盤を生み出すかもしれませんし、「原点回帰」して奇跡の名盤再び、ってこともあるかもしれないと期待していますが。


>学生メタラーさん
まあ、地元の仲間うちでマイブームな音楽を聴いているうちはアレでも、音楽ビジネスの現場に引っ張り出されてしまうとどうしてもトレンドの影響を受けずにはいられないんでしょうね。
若いだけに尚更…。


>名も無きメタラーさん
個人的にエモさは許容範囲内ですが、あまり良からぬ意味で今風になってしまったことは確かですね(苦笑)。


>人さん
未成年なのにけしからんPVですね(笑)。
でもまあ、80年代のLAメタルとかの方がリア充臭全開だったと思いますけどね。


どうでもいいですが最近名無しで書き込む方が増えてきてややこしいですね(笑)。
まあ、気軽に書き込んでいただける雰囲気があるということだろうと好意的に解釈しておきます。

前作1STはNWOBHMの焼き直し
今作2NDはBFMVの焼き直し

焼き直ししかできないバンドということで捉えた方がいいんじゃないですか。下手に何に似ているとかでどうこう評価するよりも。

個人的には前作も今作も激しくポーザー臭がするので何だかなあという感じです。

>cthuさん

私は前作をNWOBHMの焼き直しとは思いませんでしたし、本作もオリジナリティの欠如に目をつぶれば楽曲の質は高いと思っています。

自分も前作はNWOBHMの焼き直しなんかじゃないと思います。

「特に目新しい事はしていないのだけれど、決して古臭くは感じない」というところは、Guns N' Rosesの「Appetite For Destruction」と共通するところがあると思います。ってちょっと誉めすぎですかね(笑)。

まだ彼らの2ndを聴いてないのでなんとも言えませんが、何も売線=BFMVとは限らないと思いますよ。別にNWOBHM路線でも充分売線だと思いますし、1stも結構いい意味でその類だと思いました。あまりBFMVに悪印象与えなくても・・・
個人的にはvoの声変わりが主な原因なんじゃないんですかね。

悪くないと思ったけど

このバンドは知らなかったので、え、全然良い曲じゃん、と思ってYoutubeで前作をちょこちょこと聴いてみたら皆さんの言ってる意味が分かりました。

BFMVは確かにエモいですがどことなくメタラーに通じるダサさというかクサさみたいなものがある気がします。
対してこっちは垢ぬけし過ぎというか、ここまでシャレオツ(一般のリスナーからするとそうでもないかもしれませんが…)になってしまうとちょっと引きが弱くなった感はありますね。
元々ハイトーンで聴かせてたわけでもないんで、声変わりはさほど大きな要因にはなっていないと思います。

まとめてお返事2

>小梅さん
音楽的にも高度な成熟が見られたガンズの1stを引き合いに出すのはちょっと褒めすぎかもしれませんが(笑)、おっしゃりたいことはわかります。

前作には新しさ・若さがちゃんと宿っていたと思います。


>名も無きメタラーさん
最新作「FEVER」のレビューをご覧いただけばわかる通り、私はBFMVは好きですよ。
たまたまBFMVが売れているので、その真似をすることが「売れ線狙い」と解釈されるだけで、別に売れ線を狙うこと自体は悪いとは思いません。売れなきゃ音楽続けられませんしね。

ただ、前作にはもう少し個性があったのに、それがなくなってしまったことが残念だと言っているだけです。
もしこの文章がBFMVの悪口のように見えているとしたらそれは私の書き方が悪かったのでしょう。


>けー坊さん
シャレオツに見えるのは主にPVにおけるVoのルックスが原因なのでは…(笑)。
この音楽性の変化が声変わりだけによるものだとは私も思いませんが、このVoが前作の曲をライヴで歌えなくなってしまっているのは事実なんですよね…。

古いポストに書き込むべきなのか分からないですが…
adoreさん最近の彼らのEPとかチェックしてますか?
そういえばどうしてるのかな?と思って調べてみたんですが、なんか音がスピードチューンではなく、バラードよりでちょっと傾向がPOST MORTEMと変わってます
あくまでこのEP「Just Another Drug」だけの誤差の範囲内の微々たる変化で、この傾向が今年のアルバムに影響されるかはわからないですが…
一応今年の秋に出るとか

No title

なんと今年で解散してしまうそうです
去年の新作もあまり噂を聞かなかったのですが…
残念です

>人さん

デビュー作がそこそこ話題になっていたのに、その後は鳴かず飛ばずでしたからね…。
無理もないと思いますが、残念です。

最近もこんな企画にランクインしていましたが…。

「デビューアルバムに勝るアルバムを作れていないバンド TOP25」をギターサイトUltimate-Guitarが発表
http://amass.jp/79273/