V.A. / TRIBUTE TO AEROSMITH :NOT THE SAME OLD SONG AND DANCE (1999)

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AEROSMITHが来日中ですね。

私は正直AEROSMITHの熱心なファンとは言い難い(それでもあらためて数えてみるとベスト盤含め10枚近いアルバムを聴いてるな…)ので、彼らについてはあまり語ることも無いのですが、せっかくの機会なので本作の紹介を。

本作は1999年に発表されたAEROSMITHのトリビュート・アルバムで、企画・制作は当時RATTやポール・ギルバート、ジェイク・E・リーなどのマネジメントを手掛けていたユニオン・エンターテインメント。プロデューサーはボブ・キューリック。

豪華な参加メンツや楽曲の詳細は追記に回すとして、70年代の曲をメインにした本トリビュートの個人的に最大の聴き所はロニー・ジェイムズ・ディオがVo、イングヴェイ・マルムスティーンがギターを担当する#6「Dream On」。

イングヴェイは本作発表以前から常々「共演したいシンガーはロニー・ジェイムズ・ディオ」と言っていただけに、図らずもここでその夢が実現したことになる(もっとも、この作業では恐らく直接顔を合わせる機会はなかったものと思われるが…)。

およそAEROSMITHの音楽を好みそうにない2人だが、ここでカヴァーしている「Dream On」はエアロの楽曲の中では異色と言っていいほどドラマティックかつ哀愁に満ちたバラードで、恐らく彼らがハマる唯一の楽曲だろう。

ロニーの歌唱はさすがの説得力だが、そこに隙あらば(なくても)ピロピロピロ~と速弾きで切り込んでくるイングヴェイもまたある意味さすが(笑)。

こういうトリビュートものでここまで個性を出すことについてはいかがなものか、という意見もあることと思うが、イングヴェイのファンであれば思わずニヤリとさせられることだろう(AEROSMITHのファンがどう思うかは知らないが…)。

というわけで、私のようなリスナーの聴き所(というか購買理由)はロニー&イングヴェイの共演という一事に尽きるわけですが、その他の楽曲も実績豊かな名手が揃っていることもありなかなか聴き応えはあると思います。

そしてそれでいて、AEROSMITHのサウンドが持つ独特のパワーやグルーヴ、艶とでも呼ぶべきものが再現できている例は皆無というあたりにAEROSMITHというバンドの持つ個性と凄味が逆説的に伝わってくる。んー、やはり好き嫌いは別にして素晴らしいバンドであることは間違いないですね。



以下追記。



01.Back In The Saddle

Vo: マーク・スローター(SLAUGHTER)
G: アルバート・リー
G: ブルース・ブイエ(元RACER X)
B: ルディ・サーゾ(元QUIET RIOT, OZZY OSBOURNE, WHITESNAKE他)
Dr: フランキー・バネリ(元QUIET RIOT)

4th「ROCKS」(1976)収録曲。一般には70年代エアロの代表作であり、ロック史上の名盤とされる本作だが、本作日本盤ライナー中で解説の酒井康氏はその「ロック史上の名盤」という評価については「筆者は同意しない」とわざわざいらんことを書いている(苦笑)。

まあこの人らしいといえばそうだが、果たして酒井氏にとってAEROSMITHはロック史上に残る名盤を残したバンドなのかというのがそもそも疑わしく、だとしたらなんでこの人を解説に起用したのか、人選ミスだったのではないかと思いたくなる。


02.Rag Doll

Vo&G: テッド・ニュージェント
B: トニー・フランクリン(元BLUE MURDER他)
Key: デレク・シェリニアン(元DREAM THEATER)
Dr: ヴィニー・カリウタ

9th「PARMANENT VACATION」(1987)収録曲。本作において唯一の再結成後の80年代楽曲からのチョイス。

そういう意味では調和を乱す一曲だが、まあAEROSMITHの楽曲は70年代からその本質は変わっていないので意外と違和感はない。実際には70年代のエアロと80年代以降のエアロでは若干サウンドの印象が(個人的には)異なるのだが、それはプロダクションなどの問題なのか。


03.Chip Away The Stone

Vo; ヴィンス・ニール(MOTLEY CRUE)
G: ブルース・サラセーノ
B: リッキー・フィリップス(元BABYS, BAD ENGLISH, TED NUGENT他)
Key: ポール・テイラー(元WINGER)
Dr: パット・トーピー(MR.BIG)

「LIVE BOOTLEG」(1978)に収録されたカヴァー曲。オリジナルはアルバム「NIGHT IN THE RATS」(1979)にもギターで参加しているシンガー・ソングライターのリチャード・スパで、彼が同年78年に発表したセカンド・アルバム「TALL TALES」の7曲目にも収録されている。

「LIVE BOOTLEG」収録のテイクはスタジオ録音されていないこともあり、シングルとしてカットされ全米77位を記録。後にコンピレーション・アルバム「GEMS」(1989)にスタジオ・バージョンが収録されている。本作で一番マニアックな選曲かも…ってか「狙い過ぎ」じゃね?


04.Last Child

Vo: ミッキー・トーマス(元STARSHIP, TOWER OF POWER他)
G: アール・スリック
B: ネイザン・イースト(FOURPLAY)
Dr: スティーヴ・フェローン

こちらも「ROCKS」(1975)収録曲。HR/HMファンにとってはややなじみの薄いメンツが揃っているが、全員フュージョンやファンク、AORやセッション・ワークの領域で活躍する達人揃いだ。

ミッキー・トーマスというと個人的にはSTARSHIPでのクリーンなハイトーン・ヴォイスの印象が強いが、ここではハスキーかつソウルフルな歌唱を聴かせていて、その表現レンジの広さに舌を巻いた。


05.Sweet Emotion

Vo: ジャック・ブレイズ(NIGHT RANGER, DAMN YANKEES)
G: トミー・ショウ(STYX, DAMN YANKEES)
B: マイク・アイネズ(元OZZY OSBOUENE, ALICE IN CHAINS)
Dr: ランディ・カスティロ(元OZZY OSBOUENE, MOTLEY CRUE)

3rd「TOYS IN THE ATTIC」(1975)収録曲。特に何がどうと言うこともないが、全体的なプレイや雰囲気が良くて、本作収録トラックの中でかなり気に入ったもののひとつです。

06.Dream On

Vo: ロニー・ジェイムズ・ディオ(元RAINBOW, BLACK SABBATH, DIO, HEAVEN&HELL)
G: イングヴェイ・マルムスティーン
G: ブルース・ブイエ(元RACER X)
B: ステュ・ハム
Dr: グレッグ・ビソネット(元DAVE LEE ROTH)

デビュー作「AEROSMITH」(1973)収録。この曲については本文で既に触れているので詳細は割愛。解説の酒井氏もこの曲を「本作のハイライト」と形容しているが、そういう人はきっとAEROSMITHの魅力の本質を理解していない人だと自分でそう思います(笑)。


07.Walk This Way

Vo: フィー・ウェイビル
G: スティーヴ・ルカサー(TOTO)
B: ティム・ボガート(元VANILLA FUDGE, BECK BOGERT & APPICE)
Dr: トミー・アルドリッチ(元OZZY OSBOURNE, WHITESNAKE他)

「TOYS IN THE ATTIC」(1975)収録曲。後にRUN D.M.C.のカヴァーで大ヒットし、AEROSMITH復活のきっかけにもなった代表曲のひとつ。

ギター、ベース、ドラムのいずれもロック好きにとっては著名な人物ながらヴォーカルは「誰?」という人物。解説によると「カナダ出身の俳優兼ロック・ヴォーカリスト」とあり、「ケッ、タレント歌手かよ」と思っていたらブライアン・アダムスやリチャード・マークス、そしてスティーヴ・ルカサーのバンドであるTOTOとのコラボ経験もある結構なキャリアのある人でした。


08.Draw The Line

Vo: ジェフ・キース(TESLA)
G: トミー・スケオーチ(元TESLA)
B: トニー・レヴィン(元KING CRIMSON)
Dr: エリック・シンガー(元ALICE COOPER, BLACK SABBATH, BADLANDS, KISS, BRIAN MAY他)

5th「DRAW THE LINE」(1977)のタイトル曲。解説を見て確かにこのリフは「カエルの歌が~♪ 聴こえてくるよ~♪」に聴こえるな、と思いました(笑)。この曲もプレイや歌唱が良くてかなり気に入った一曲です。


09.Same Old Song And Dance

Vo: ジャック・ラッセル(GREAT WHITE)
G: ジェフ・バクスター(DOOBIE BROTHERS)
B: ジェフ・ピルソン(元DOKKEN, DIO)
Dr: ボビー・ブロッツァー(RATT)
Sax: エドガー・ウインター

2nd「GET YOUR WINGS」収録曲。ある意味、本トリビュート作の「タイトル曲」だが、別にこの曲に何か特別な意味があるというよりも曲タイトルがトリビュート作のタイトルとして気が利いているというだけだと思う。

Vo、G、DrがモロにL.A.メタル人脈の人たちなのにギターだけ非メタルの人だなあ、と思っていましたが、よく考えたらドゥービーズも西海岸のバンドですし、意外と接点はあったのかも。サックスがエドガー・ウインターというのも何気に豪華。


10.No Surprize

Vo: ジェイニー・レイン(元WARRANT)
G: クリス・ホルムス(W.A.S.P.)
B: エイドリアン・ベリー
Dr: スティーヴン・ライリー(元W.A.S.P., L.A. GUNS)

6th「NIGHT IN THE RATS」(1979)収録曲。当時ジョー・ペリー脱退のゴタゴタと共にリリースされたため、あまり良い評判ではなかったようだが、作品のクオリティ自体はAEROSMITHの標準から考えてそれほど悪くはないと思います。演奏メンバーの資質ゆえか、一番ルーズに聴こえる仕上がりです。


11.Toys In The Attic

Vo: スティーヴン・パーシー(RATT)
G: トレイシー・ガンズ(元L.A.GUNS, BRIDS OF DESTRUCTION)
B: フィル・スーザン(元OZZY OSBOURNE)
Dr: エインズレー・ダンバー(元JOURNEY, WHITESNAKE)
「TOYS IN THE ATTIC」(1975)のタイトル曲。スティーヴンの個性的な歌声と、トレイシー・ガンズのドライヴ感のあるギターが意外なケミストリーを醸し出している。威勢良くアルバムのラストを締めてくれます。


本作が発売されたのは1999年と、ほんの10年ちょい前ですが、ロニー・ジェイムズ・ディオ、ランディ・カスティロ、ジェイニー・レインと、既に3人も亡くなっていますねえ…。トリビュート対象であるAEROSMITHは今なお健在でドーム公演をしているというのに…。R.I.P.

なお、普通の人にはどうでもいいことながら、本作のリリース元は「ビデオアーツミュージック/IMAGICAメディア出版」というHR/HMファンには(というかあらゆる音楽ファンに)耳なじみのないレーベルなのですが、広告代理店に就職してイマジカが映像制作の世界では超有名な会社であることを知りました。
こんな事業に手を出していた時期もあったんですね。

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コメント

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やっぱり

このアルバム、僕は中古で買いましたが、やはりお目当てはロニー様の歌う\\\"Dream On\\\"でした。

ロニーとイングヴェイは夢の競演ですね。
イングヴェイの早弾きならみんな聴きたいと思います。
このトリビュートのメンバーどうやって決めたんでしょうか。
「いいメンバーだ」と思いきや「微妙なメンバー」もちらほら(笑)。

このDREAM ONを聴いていると、「この二人ならもっと良いものになったはずなのに」とも思ってしまうんですよね。

企画自体安易なトリビュートものだから、じっくり取り組む時間はなかったでしょうし、それ以前の問題としてイングヴェイは既にこの時期にはあまりメリハリなく引き倒すようになってしまっているので、もう10年、せめて5年早ければなあ、と。

とはいえロニー亡き今となっては貴重な競演ですよね。

まとめてお返事

>ピッペンさん
ブリティッシュ/ヨーロピアンなHR/HMを愛する人間にはそうなってしまいますよねー(ロニーはアメリカ人ですが)。


>ストラディキャスターさん
イングヴェイ本人にとってもファンにとっても夢の競演ですね。
微妙なメンバーって誰でしょう? 「よく知らない人」はいますが、皆優れたミュージシャンだと思いますよ。


>OBさん
この10年前のイングヴェイだったら、ぜひオリジナルをやってほしかったですね(笑)。
ロニーはクレイグ・ゴールディだのローワン・ロバートソンだの微妙なギタリストを起用するくらいなら、一枚でいいからイングヴェイとの共演作を残してほしかったと思います。

何か違う

様式美が好きな人々にとって、まさに夢の共演な訳ですが、Dream Onを聴いたときは失礼ながら「こんなものかなぁ?」という感想しか出なかった。

むしろ「何故エアロ何ですかね?」という疑問しか出てこない。

この二人ならインスピレーションという名のCOVERアルバム(笑)で、OZZYの「Mr.CLOWLY」を演って欲しかったです。

エアロよりよっぽどハマるハズなんだかなぁ。

>ゆうていさん

なんでエアロなのか、というとそういう企画をした人がいて、2人が(というか2人のマネージャーが)それを受けたから、としか言いようがありませんね(笑)。

ま、人の出会いとか絡みなんてのはタイミングですから。
二人が共演できるタイミングがたまたまエアロのトリビュートだった、というだけのことでしょう。

どうせだったら1曲でもいいから様式美バリバリのオリジナル曲を共作してほしかった、というのが理想論ですが。