MICHELE LUPPI’S HEAVEN / STRIVE (2005)

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VISION DIVINEの「STREAM OF CONSCIOUSNESS」における、前任のファビオ・リオネ(RHAPSODY)の存在を霞ませるほどの卓越した歌唱によって一気に日本のメタル・ファンの注目を集めたミケーレ・ルッピの初ソロ・プロジェクト・アルバム。

音楽的にはAORという触れ込みで、ミケーレの張りと透明感を兼ね備えた美声にはきっとマッチするだろう…と期待して買ってみた。

しかし、結果から言うと、いささか期待外れだったと言わざるを得ない。

クオリティが低いわけではない。楽曲はミケーレが作詞・作曲・プロデュース全てを手掛けているが、#10「I Found A Way To Pray」が93年に、残りの楽曲は98~99年に書かれたとのことで、充分寝かされただけあって、なかなかよく練られているし、バックの演奏も手堅いものである。

そしてもちろんミケーレ・ルッピ自身の歌唱は非の打ち所がなく、明朗快活な歌唱によって力強くメロディを歌い上げつつ、時に超人的なハイトーンを聴かせてくれる。

ただ、ヴィック・ジョンソンなる人物のブルース・ハープをフィーチュアした#3「Feel Alive」に代表されるように、とても欧州のAORとは思えないほどアメリカンなテイストが強く、私がヨーロッパのAOR/メロディアス・ハードに期待する「哀愁」が薄いのが痛い。

この明るくキャッチーな楽曲に溌剌としたミケーレの歌唱が乗ると、個人的にはちょっとj時代錯誤なクサい青春ドラマを見せられているような気恥ずかしさを覚えてしまう(実際楽曲の方向性もあまりにも80S’ド真ん中で、ちょっと古臭い)。

VISION DIVINEは、あのどちらかというと暗いプログレッシヴなパワー・メタル・サウンドにミケーレの快活な歌声が乗ることで生じる一種のミスマッチ感覚が斬新だったわけだが、美声で上手いシンガーが歌うのが当たり前のジャンルであるAORのカテゴリーにおいてはミケーレの歌唱は意外と「普通」だったということか。

なお、本作にはVISION DIVINEのオラフ・トーセン(G)とオレグ・スミルノフ(Key)が#9「Time For Love」に、DOKKENのツアー・メンバーを務めたことなどでも知られるアレックス・デ・ロッソが#8「The Castle Inside My Head」にゲスト参加。その他イタリアのミュージック・シーンではそれなりに知られた面々が数多く客演している【79点】

◆ミケーレ・ルッピ公式サイト
http://www.micheleluppi.com/



【追記:ミケーレ・ルッピのバイオグラフィ】

ミケーレ・ルッピは1974年にイタリアで生まれ、7歳(一説には9歳)でピアノを習い始めた。90年には早くも最初のデモ音源「THE FIRST SEAL」をレコーディング。この時既にギター、キーボード、ベースを自ら手掛けるマルチ・プレイヤーぶりを発揮している。

92年にはプレスからも高評価を得たというセカンド・デモ「MIKK DEMO ‘92」を制作。本作の日本盤ボーナスとして収められた#11~#14の4曲はこのデモの音源だが、ミケーレほどの天才的シンガーであっても、最初から現在のレベルに到達していたわけではないことを教えてくれる(笑)。

94年にはMR.BIGを中心に様々なカヴァー曲を演奏するMR.PIGなるバンドをスタートさせている。ちなみに本作のメイン・ギタリストである”Dr. Viossy”ことミケーレ・ヴィオーニ(G)はこのMR.PIGのギタリストであり、このバンドは現在も存在していて、時々ライヴを行なっているようだ。

しかし、より高みを目指した彼は渡米を決意。イリノイ州クリスタル・レイクへ留学した後、ミュージシャン養成学校として世界的に知られるロサンゼルスのMI(Musicians Institute)に入学、98年にヴォーカリストの専門コースであるVIT(Vocal Institute Of Technology)を修了している。

イタリアに帰国後、プロモーション用のCDを制作した彼の元には次々と仕事が舞い込んでくるようになる。音楽学校やプライベート・スクールで歌唱指導を行なう傍ら、99年にはマウリツィオ・ソリエリ(G:VASCO ROSSI)のバンドに参加。彼は本作にもゲスト参加している。

01年にマックス・マグナニというギタリストのデビュー作「TWINSER」に参加、グレン・ヒューズ、ポール・ショーティノ、ロビン・マッコーリーらと並んでクレジットされている。

また同年同じくソロ・ギタリストであるロベルト・プリオリの「AVOID YAWED FLIGHT」で2曲のヴォーカルを担当。04年にリリースされたKISSのトリビュート・アルバム「ITALIANS KISS BETTER」ではこのロベルトと共に「A World Without Heroes」をレコーディングしており、ロベルトは本作にもゲスト参加している。

02年と03年にはイタリアの国民的歌手であるウンベルト・トッツィのワールド・ツアーにおけるキーボーディストおよびバック・ヴォーカリストに抜擢される。本作のメイン・ベーシストであるロベルト・ガッリとはこのときに同じバック・バンドのメンバーだった「同僚」で、本作は人脈的な意味でもVD加入以前のミケーレのキャリアを総括するものと言える。

その後、03年9月にVISION DIVINEから加入要請を受け、我々日本のメタル・ファンに知られるようになるわけだが、マニアの間では先述したMR.PIGのシンガーとして知る人ぞ知る逸材として噂の存在だったという。

本作のレコーディングは2001年から断続的に行なわれておりVISION DIVINEの活動によって中断を余儀なくされていたが、2005年にようやく完成、リリースされた。

本作の日本盤ブックレットによると既に次作の構想もあり、楽曲も揃っているとのことらしいのだが、本作のリリースから5年以上の月日が流れた2012年現在も一向にリリースされる気配がないのは、やはり本作の評判があまり芳しくなかったということなのでしょうか。

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コメント

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LOS ANGELESというバンドもありましたね。
なかなか良いAOR系のアルバムを出していたと思います。
でもやっぱりルッピにはパワー・メタルを期待してしまうなあ。今年の早い時期にリリースされるというTHAURORODの新作を首を長くして待っている状態です(笑)

そういえばREINXEEDは今年の3月か4月に新作出すそうです、早すぎですよね?(笑)

ミケーレ・ルッピは個人的にはルカ・トゥリッリのバンドに入って欲しい。
今度こそパワー・メタルを歌って頂きたいです。

P.S.REINEXEEDは相変わらず引き篭もりだな(笑)。

>学生メタラーさん

本作が微妙だったのでLOS ANGELSはパスしてしまってました(苦笑)。
THAURORODのサウンドはかなり未洗練なので、果たしてミケーレのVoがハマるのか、楽しみな一方で個人的にはちょっと不安もありますね。

REIN XEEDには「もったいぶる」という言葉は存在しないようですね(笑)。
でも、これだけのペースで曲を書けるというのはやはりある意味凄いことだと思います。

>ストラディキャスターさん

ミケーレ・ルッピは素晴らしいシンガーですが、なんとなくルカの作る音楽に対しては声質が明るすぎるような気が個人的にはしています。

REIN XEEDの彼は、本当に音楽を作ることが好きなんですね。
他にすることがないだけかもしれませんが(笑)。