JAMES DURBIN / MEMORIES OF A BEAUTIFUL DISASTER

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アメリカの大人気オーディション・バラエティ番組『アメリカン・アイドル』シーズン10でTOP4に残った21歳の若者、ジェイムズ・ダービンがCREEDやEVANESCENCEが所属する「Wind-up Records」と契約してリリースしたデビュー・アルバム。

彼は9歳のときに父親がドラッグの過剰摂取で亡くなり、彼自身もトゥレット症候群にアスペルガー症候群という2つの精神的なハンデを抱え、学校ではいじめられていたという。

オーディションに出る前は失業しており、婚約者と息子の3人でアパートの一番安い部屋に住み、貧乏で子供のオムツを買う金にも事欠いていたとか。

それがこうして一躍全米の人気者になってしまうのだから、まさにアメリカン・ドリーム。

そんな彼だが実は『アメリカン・アイドル』のシーズン8にもチャレンジしており、そのときは緊張のあまりトゥレット症候群の症状(顔や身体が痙攣する)が出てしまい、地方予選で落選している。

シーズン10でも優勝したわけではない彼がここまで注目を集めたのは、彼がヘヴィ・メタルを歌って12万5千人が参加するオーディションを勝ち抜いたからだ。

フィンランドではフィンランド版『アメリカン・アイドル』的な番組からヘヴィ・メタルを歌って優勝者となったアリ・コイヴネンのような存在がいるが、本家である『アメリカン・アイドル』でメタルを歌って勝ち抜いたのは彼が初めてなのだという。

番組では審査員であるスティーヴン・タイラー(AEROSMITH)の前で彼の持ち歌である「Dream On」を歌ったり、サミー・ヘイガーのカヴァー「Heavy Metal」(同名映画の主題歌)を歌った際にはザック・ワイルドがギターをプレイしたり、そして最終回ではJUDAS PRIESTと共演するなど、数多くの見せ場を作ったようだ。

そんな話題の存在のデビュー作だけに、スタッフは豪華。プロデューサーはHOOBASTANKやDAUGHTLY、ZEBRAHEAD、SAOSIN、CREED、PAPA ROACHといった数多くの人気バンドを手掛け、実はMOTORHEADやSANCTUARY、PRETTY BOY FLOYDといったバンドを手掛けていたこともあるアメリカにおける現代ロックの第一人者、ハワード・ベンソン。

エンジニアはAEROSMITHやVAN HALEN、KISS、SCORPIONSなどのアルバムを手掛けてきたマイク・プロトニコフを起用。

ソングライターとしてはこれまた現代アメリカのモダン・ロック・シーンで引っ張りだこのマーティ・フレデリクセンにジェイムズ・マイケル(SIX:AM)、元EVANESCENCEのベン・ムーディ、現GUNS N’ ROSESおよびSIX:AMのメンバーであるDJアシュバなどが関わっている。

バック・バンドのギタリストは、かつてリック・エメット脱退時のTRIUMPHに在籍し、これまでMETHODS OF MAYHEM、ALICE COOPER、ANDREW W.K. 、ROB ZOMBIE、アヴリル・ラヴィーンやオリアンティのアルバムなどでプレイしてきた経験があり、2011年、リッチー・サンボラがアルコール依存症の治療のためにBON JOVIのツアーから離脱した際に代役を務めたことでも知られるフィル・X。

ベーシストはフェイス・ヒルやシャキーラ、DAUGHTRY、エルトン・ジョン、フィル・コリンズ、LLクールJ、トレイシー・チャップマンのアルバムなどに参加してきたセッション・ベーシストのポール・バッシュネル。

ドラマーは現在A PERFECT CIRCLE、THE VANDALS、DEVOのメンバーであり、過去にはNINE INCH NAILSやGUNS N’ ROSESにも在籍していたジョシュ・フリース。

日本のHR/HMファンにとっての知名度はともかく、まさに錚々たる顔ぶれによるデビュー・アルバムである。

これだけのスタッフィングであるだけに、当然ながらクオリティは高い。現代アメリカン・ロックの王道を行く堂々たるロック・アルバムに仕上がっている。

ジェイムズ・ダービンの、マイク・ヴェセーラをなめらかにしたような歌唱も素晴らしく、21歳という若さならではの張りのある歌声は実に魅力的である。

ジェイムズがYouTubeで「発見」したお気に入りバンドだというHARDCORE SUPERSTARのマーティン・サンドヴィック(B)とアッデ(Dr)が書いた#9「Outcast」にはMOTLEY CRUEのミック・マーズ(G)がゲスト参加しており、個人的にはこの曲が本作のハイライト。

普段メタルメタルした音楽を中心に聴いているだけに、こういうメインストリームなロック・アルバムを聴くのは一種の気分転換になっていい、という思いもありつつ、せっかくこれだけのハイトーン・ヴォイスを持っているのだから、もっとメタル然とした楽曲を歌って全米の人々にメタルの素晴らしさを広めてほしい、などとも思ってしまったり。

ただまあ、BURRN!誌のインタビューなどを読むと彼の音楽趣味は私が好むような正統派のメタルというよりはもっとモダンな感覚のハード・ロックのようなので、なかなか私が望むような音楽はプレイしてくれないのかもしれないけど(笑)。

とはいえ、彼はツアーのバック・バンドにIN THIS MOMENTのギタリストとドラマーを引き抜いたという話もあり、今後はもっとヘヴィなサウンドにもトライしていくつもりかな? などと期待してみたり。




◆JUDAS PRIESTの「You've Got Another Thing Comin'」を歌ったときの映像



◆BON JOVIの「I'll Be There For You」を歌ったときの映像



◆ザック・ワイルドと共演した際の映像



◆JOURNEYの「Don't Stop Believin'」を歌ったときの映像



◆ジェリー・リーパーのオールディーズ曲「Love Potion No.9」を歌った映像

TYGERS OF PAN TANGによるカヴァー・バージョンを元にしたアレンジというのがマニアック。


◆JUDAS PRIESTと共演した「Living After Midnight」~「Breaking The Law」

ジェイムズの存在なくしてはこういう人気番組にJUDAS PRIESTが出演することはなかったはず。

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コメント

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ほぼ同世代……。

21の若さで婚約して子供がいるって学生時代どんな生活してきたんですかね……。

貧乏だから大変なんてものじゃなかったでしょうに。

モダンなハードロックが好き、と言っていてジューダスと演ったりジューダスを歌ったりでメタルしていたなら実はそっちの方も好きで聴き込んでいるんじゃないんでしょうかね。

元Hi-Standardの横山なんてパンクのくせにジャンルが全然違うスレイヤーとかオジーを聴いてたりレインボーやメイデンをカバーしたりしてますからね。

そういえば審査員だって叔父が言っていたなぁ>スティーブン。

スティーブンの前でエアロスミスを歌うのはよくやったとしか……。

Judasで思い出したんですけど、つい最近「Rock Star」という映画を観たんですが、
バンドの演奏シーンでギタリストがめちゃくちゃカッコいいステージアクションしてて、
「この俳優センスあるなぁ」って感動して、エンドロールで名前確認したらザックワイルドでした。
別人すぎて気がつかなかったです(笑)
ザックは美少年時代も汚っさんになってからもギターヒーローですね^^

この人凄いハイトーンなんで早くアルバム出さないかなとか思ってましたが、メタルサウンドではないんですね...Judas系のメタルをやってほしいです。

超音波ハイトーン、JUDAS PRIESTとB!誌で見たので期待して聴いたら普通のアメリカン・ロックだったのでちょっとガッカリでした。JUDAS PRIEST、RIOT、IMPELLITTERI系の正統派メタルをやってほしかったなあ。

現実問題、アメリカン・アイドルからデビューする人物にレコード会社がメタルを歌わせることはありえないでしょう。メタルというジャンルのお陰で、アメリカン・アイドル出身の話題性が相殺されて、売り上げが減りかねませんからね。

アメリカン・アイドルデビューの新人の多くが一発屋で終わっていることを考えると、現状では会社にとってのカネのなる木以上の何者でもないでしょう。
かといってメタル業界に「転職」しようにも、ハイトーンボイスの持ち主なんてピンからキリまで腐るほどいるでしょうから、彼の前途は意外と厳しいと思います。

黄金時代が2012年だった、ということにならないよう祈るのみです。

まとめてお返事

>shuさん
婚約者との出会いなどはあちこちで語っているようですが、いずれにせよ平坦な人生ではなかったようですね。

彼はB!誌のインタビューでMY CHEMICAL ROMANCEや30SECONDS TO MARSをフェイヴァリットに挙げていましたが、おっしゃる通りクラシックなロックも色々と聴き込んでいるようです。


>B!13さん
「ロック・スター」、私は公開当時映画館で観ました。まあ映画としての出来は微妙ですし、実際映画館もガラガラでしたけど、ライヴ・シーンを映画館の大画面で観られたのは悪くなかったですね。

あの映画はザック・ワイルド以外にも何人か有名なミュージシャンが出演していて、密かな見所ですね。


>へたれ学生さん
一応「アイドル」ですから、あまりコテコテな音楽はレコード会社が許さないんでしょうね…。


>学生メタラーさん
正統派HMを期待するとガッカリするでしょうね。
その手の音楽だとアメリカでは売りにくいんでしょうけど。


>cthuさん
まあ、シビアなことを言ってしまえばおっしゃる通りでしょうね。

ただ、むしろ世の中的には落ち目になってからの方が、メタルらしい音楽をプレイしやすいような気がします。

確かにメタルを期待すると、肩透かしをくらいますよね。
私も予想というか、期待というか、聴く前のイメージとはちょっと違いましたね。

ただ、私はモダンなアメリカンロックも好きなので、全然ありです!

時々、歌唱がドートリーやアダム・ランバートに似ているような感じがありますが、やはりアメリカンアイドル声なんでしょうか。

>クラウザーさん

たしかに前評判では「メタル」という側面が強調されていたので、アルバムを聴いてみたら「あれ?メタルじゃないじゃん」と感じるかもしれませんね。

「アメリカンアイドル声」…新しい概念ですね(笑)。
言われてみれば音楽性が近いこともあってクリス・ドートリーにはちょっと近いような気もしますが。