LUCA TURILLI’S DREAM QUEST / LOST HORIZONS (2006)

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本作発売当時、RHAPSODY OF FIREの中心人物で、2012年現在LUCA TURILLI’S RHAPSODYの中心人物であるルカ・トゥリッリのソロ・プロジェクト。

ルカはいわゆるソロ名義の作品もリリースしているが、本作はDREAM QUESTというプロジェクト名が付いており、単純なソロ作品というよりは、コンセプトなりテーマありきの作品といえよう。

そして本作のコンセプトは、ズバリ「女性ヴォーカルもの」。

いや、もちろん歌詞テーマなりサウンド・アプローチの面でも色々とコンセプトはあるのでしょうが、まあ煎じ詰めればこれでしょう。

このプロジェクトを発足させたのは1998年にリリースされたNIGHTWISHの出世作「OCEANBORN」を聴いて、自分でもこういう音楽を作ってみたいと思ったことがきっかけらしい。

そして本プロジェクトのデモは2002年頃にはもう4~5曲が仕上がっていたそうで、世に出るまでに時間がかかったのはRHAPSODYのレコード会社移籍に伴う法的な問題などで時間を取られたためだという。

本作でプレイしているメンバーのクレジットは、ミスト(Vo)、ドミニク・ルアキン(G)、サシャ・ピート(B)、ロバート・ヒューネッケ・リッツォ(Dr)、そしてルカ・トゥリッリ(Key)。

Voのミスト(Mystique)は経歴不明で、ルカ・トゥリッリによればニューヨーク出身でミュージカルなどで活動してきたシンガーで、本作では謎の存在としてブックレットに写真なども一切載っていない。

DREAM QUESTの次のアルバムまでにはその素性を明らかにする予定とのことだが、本作の発表から6年近い年月が流れた現在でも「次のアルバム」の噂すら出ないことから、このまま永遠の謎になってしまう可能性大。

一説には当時AFTER FOREVERのフロール・ヤンセン(現REVANP)という噂がまことしやかに流れていたし、海外では結局同時期に発売されたルカ・トゥリッリのサード・ソロ・アルバム「THE INFINITE WONDERS OF THE CREATION」でオラフ・ヘイヤーとヴォーカル・パートを分け合っていた黒人女性シンガー、ブリジット・フォーグルなんじゃないの、と疑われているようですが…。

ギターのドミニク・ルアキンは当時RHAPSODY OF FIREのツアー・メンバーとして、現在はLUCA TURILLI’S RHAPSODYのギタリストとしてファンには知られているフランス人ギタリスト。

サシャ・ピートはRHAPSODY OF FIREやLUCA TURILLIのアルバムをプロデュースしてきた人物として知られる元HEAVEN’S GATEのギタリストで、ロバート・ヒューネケ・リッツォも元HEAVEN’S GATEのベーシストで、LUCA TURILLIのアルバムでは毎回ドラムをプレイしている人物。

そして本作最大のポイントは、一般的にはギタリストとして認知されているルカ・トゥリッリがキーボード奏者としてクレジットされていることでしょう。

本人曰く、「僕はギタリストやキーボード・プレイヤーである以前に作曲家なんだ。作曲家としての自分のアイディアを形にするために、そういう楽器をプレイする必要があるというだけの話でね」ということなので、本人にギタリストとしての強いこだわりはないのでしょう。

まあ実際、ルカ・トゥリッリはギタリストとしての評価は「ネオ・クラシカルな速弾きだけ」というのが一般的なので、そういうプレイを必要としない本作でギターを弾く意味はあまりないのかも。

そんなわけで、NIGHTWISHやWITHIN TEMPTATIONといった女性ヴォーカルを擁したメタル・バンドに刺激を受けて制作された本作ですが、必ずしも音楽的にNIGHTWISHやWITHIN TEMPTATIONにそっくり、というわけでもない。

いや、大枠の方向性は遠からずながら、もう少しモダンなサウンド・アプローチが目立ち、ルカ・トゥリッリが「映画のサウンドトラック的な要素を持っているという部分ではRHAPSODY OF FIREと共通しているけど、このプロジェクトでは『マトリックス』や『バイオハザード』、『アンダーワールド』といった近未来もののサウンドトラックをイメージした、クラシックを基盤としつつもそこにエレクトロニック・ミュージックやヘヴィなギター・サウンドがミックスされた音楽を作ってみたかった」という言葉が本作の目指した音楽的ビジョンを端的に言い表しているといえよう。

イントロダクション的な#1に続く、シングルとしてもリリースされた#2「Virus」はそのモダンなアプローチのエッセンスが顕著に出た1曲で、エレクトロニックなイントロから、PAINあたりを思わせる無機質でインダストリアルな感触のギター・リフが、これまでルカ・トゥリッリがクリエイトしてきた音楽のファンに驚きと違和感を与える。

正直リリース当時はこの違和感の印象が大きく、また同時期にリリースされたLUCA TURILLI名義の「THE INFINITE WONDERS OF THE CREATION」がパッとしない仕上がりだったこともあって、本作についてもあまり良い印象はありませんでした。

しかし、5年ほど寝かせて聴いてみると、意外と悪くもない。その後女性Voメタルの粗製濫造が相次ぎ、「基準」が落ちたせいもあるかもしれないが、音楽としてのクオリティは決して低くない。

まあ、それまでルカ・トゥリッリが示してきた才能を考えればそれは「当たり前」で、「悪くない」程度のクオリティでしかない本作はやはりルカ・トゥリッリの本領が発揮された一枚とは言い難いこともまた事実なのですが…。

#10「Kyoto’s Romance」などという日本を意識した楽曲を収録しつつも、海外での発売から日本盤のリリースまで半年の年月を要したのも本作の仕上がりが微妙だったからなのではないかと当時は疑っていました(笑)。

この時期、CHILDREN OF BODOMなどの活躍に刺激されて、RHAPSODY IN BLACK名義でメロディック・デス・メタルにチャレンジする、などという話も持ち上がっており(実現はしませんでしたが)、ルカ・トゥリッリが一番他のバンドに影響を受け、ある意味トレンドに敏感になっていた時期だったのかも。

まあ実際00年代前半の欧州におけるゴシック系女性ヴォーカル・メタルとメロディック・デス(ブラック)・メタルのシーンは輝いていたから、同じ欧州のメタル・ミュージシャンとしてインスパイアされてしまうのは無理からぬことだと思いますけどね。

しかし、結局ルカ・トゥリッリがその後RHAPSODY OF FIREで制作したアルバムや、目下の最新作であるLUCA TURILLI’S RHAPSODY名義の「ASCENDING TO INFINITY」で展開しているサウンドを聴くに、「自分の天分はシンフォニック・パワー・メタルにある」ことを確信したのではないかと思われます。

そういう意味では、本作はルカにとって必要な「迷い」であり、「音楽的寄り道」だったと言えるのかもしれません。【80点】


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コメント

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個人的に「D」だけ妙にでかいバンドロゴにも違和感を覚えますが(笑)、音もルカの名前とはかけ離れてますよね。
ボーカルは個人的にはブリジット・フォーグルなのではないかと思いますが。

DREAM QUESTは作を重ねてモダン化が進んでいたらきちんと聴いていたでしょうし、RHAPSODY IN BLACKも実現していたら間違いなくファンになっていた気がします。自分にとっては彼が流行を追わなくなってしまったのは悲しくもあります……

あと、関係ないですが、昔のBFMV的な香りのする若手の音源を見つけたのでオススメしておきます。疾走感があっていいですよ。
http://vanisher.bandcamp.com

>cthuさん

DREAM QUEST、モダンな要素の要素の導入が中途半端でしたよね。どうせやるならもっと振り切ればよかったし、そうでないならNIGHTWISHやWITHIN TEMPTATIONのコピーに徹したほうがよかった気がします。

RHAPSODY IN BLACKは私も結構楽しみにしていたんですけどね(笑)。
まあ、世に出すほどの完成度にならなかったのかもしれませんが。

VANISHER、なかなかいい感じですね。

ドラクエ10は生活を破綻させるくらい面白い。

またかなり懐かしいアルバムをレビューしましたね!!ラプソディーのルカつながりということだと思いますが。たしか和風テイストの曲が良かったです。
ファビオさんつながりでは、ヴィジョン・ディバインの新譜は良質なメロディック・メタル、ところどころ疾走パートもあり、会心作ではないけど、そこそこ良いのではないかと、、、ジャケットのイメージとこれほどピッタリ合っている作品もないなぁ。
RHAPSODY IN ULTIMATE宜しく、12枚の翼を広げた大天使が描かれたジャケで、再現不可能、悪趣味と言われるくらい壮大なスケールの爆走シンフォ・メタルをそろそろ聴いてみたいです。
パワーグローヴのテレビゲーム・メタル、期待度が高すぎて、???
逆にすみませんでした。
カッコさんが疾走曲歌うの久々に聴けて良かったです。
唯一、BLOODY TEARSは本当に最高です。
TVゲーム史上3本の指に入る名曲と言ってもいいでしょう。
http://www.youtube.com/watch?v=ZCt-gBzC-Gs

ヴェルサイユのシングル、相変わらずヴィジュアル系は苦手なのですが、かなり良い出来ですね。活動休止はやめて!!ギターはタイプですし。
シングルとは思えないほど、曲が全て良い。
1曲目からパワー全開、ストレートな疾走曲で、一瞬摩天楼オペラっぽいと感じたが、しかし、本当に良い曲ですね。2曲目は陰陽座の世界観を彷彿とさせる歌詞で、これまた素晴らしい。3曲目は初期のルナシーのバラードのようで、寒美。4曲目が一番彼ららしい曲でした。
全体を通しての感想は、やはり彼らでしか、作れない世界だなと。
ガルネリとのシングル対決は、ヴェルサイユに軍配を上げざるを得ないかなぁ。

>フィンさん

お察しの通り、ルカつながりです。リリース当時レビューしていなかったのであわせて書いてみました。

Bloody Tearsはたしかにカッコよすぎてゾクゾクしますね。私も大好きです。

以前も言ったような気がしますが、VERSAILLESのギターは男ですよ…(笑)。