AMORAL / SHOW YOUR COLORS

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フィンランドのメタル・アイドル、アリ・コイヴネンが、同国のテクニカル・デスラッシュ・バンドAMORALに加入した、というニュースは、両者ともFINLAND FESTでの来日経験こそあるものの、知名度がイマイチな日本では大した反響もなかったが、やはり本国のメタル・ファンの間では大騒ぎ(主に批判的なニュアンスで)になったようだ。

もっとメロディックなバンドに加入した、というなら「まあ、音楽的には結構ハマるかもね」と思えるし、もっとビッグなバンドに加入した、というなら「ああ、さすが人気者は政治力があるね」と理解することができる。

だが、AMORALは、商業的に活況を呈しているフィンランドのメタル・バンドの中ではパッとしない方だし、シンガーはデス声っぽいグロウルをメインとした歌唱を聴かせる、かなりブルータルな音楽性を持つバンドだった。

アリ・コイヴネンは元々AMORALのファンで、面識もあったとのことで、前任シンガーのニコ・カリオヤルヴィが脱退したという話を聞き、自らバンドに加入したいと打診したのだそうだ。

…アリ君にマネージャーはおらんのか? フツー止めるだろ、常考。

まあ、AMORALも次第にキャッチーな要素を増していたようなので、ひょっとしたら本当にアリ・コイヴネンのようなノーマル・ヴォイスのシンガーを探していたのかもしれない。

だが、アリ・コイヴネンを入れれば、それまでの彼らを支持してきたコアなファンたちから総スカンを食らうのは目に見えている話で、むろん、アリ君のファンを取り込むことができるということは期待できるにせよ、しょせんミーハーな浮動票であるから、長期的に考えればアリ・コイヴネンを入れることはかなりリスキーな判断だ。

そうした勇断を経て発表された本作だが、アリ・コイヴネンの加入に批判的な人々をねじ伏せるような仕上がりかというと、ちと微妙。

私は以前のAMORALの音楽をあまりきちんと聴いていないので、ノーマル・ヴォイスになったことによる違和感というのはそれほどない。というか、正直言って、私にとっては明らかに聴きやすくなった、というのが事実。

ただ、やはりバンドの志向している音楽性に対し、アリ・コイヴネンの少年声Voはあまりにも可愛らし過ぎる。

一生懸命歌っている、ということはよく伝わってくるし、時に歪んだ声さえ出そうとしているのだが、へヴィな曲になればなるほどミスマッチ。なんとなく、「SLAVE TO THE GRIND」の頃のSKID ROWを思い出してしまった。

アリ・コイヴネンは魅力的で存在感のある声の持ち主だが、メタルの歌い手としては「カラオケでハード・ロックを上手に歌えるお兄ちゃん」レベルでしかないのも事実で、ソロ一作目のような「メタル風ポップス」においては非常に魅力的に響くものの、本格的なメタルを歌うには圧倒的に迫力不足。

もちろんAMORALとしてはこれでもギリギリまでアリ・コイヴネンの個性を引きたてる作曲を心がけたのだろうと思うが、やはりメロディック・メタルは彼らが得意とする分野ではないのか、あるいは単純に力量の問題か、楽曲のクオリティがどうにも中庸。
カッコいいパートも随所に存在するのだが、楽曲全体としてギラリと光るものはない。

まあ、元々中堅バンドだったわけで、この仕上がりもいかにも「中堅」な感じと言えばその通り。
そういう意味では順当なクオリティのアルバムだが、この程度の作品なら、アリ・コイヴネンの加入なしに私が本作を聴くことはなかっただろうな。

もしアリ君がバンドの売名に利用されただけで、次作であっさりクビになっていたりしたら気の毒だなぁ。

意外と、むしろアリ君の方が「君たちを有名にしてあげるよ。僕がアルバム一枚だけでも加入すれば知名度が上がるから、その後は自力でがんばって」、なんて上から目線で言っていたりしてね(笑)。


しかしひどいのは日本盤のアーティスト表記で、欧米では単純に「AMORAL」であるにもかかわらず、勝手に(いや、許可はとっているんだろうけどさ、さすがに)「アリ・コイヴネン with アモラル」にされてしまっている。

これじゃまるでアリ・コイヴネンのバック・バンドにAMORALが起用されたみたいじゃんか。主客転倒にも程があるでしょ。【81点】


◆AMORALのMySpace
http://www.myspace.com/amoralweb
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