ANGRA / BEST REACHED HORIZONS

angra_best.jpg

メロディック・パワー・メタルというジャンルの代表格にして、シンフォニック・メタルというジャンルの始祖的存在であり、ブラジルを代表するメタル・バンドでもある人気バンド、ANGRAのベスト・アルバム。

日本盤と海外盤は選曲が異なり、日本盤の選曲はレコード会社であるビクターのWebサイトで行なわれた人気投票を元に行なわれている。

人気投票を元にしていると言っても、全てのアルバムから最低2曲は選出されているあたり、必ずしも上位曲のみを選んだというわけではなく、全てのアルバムから選曲することを前提に、各アルバムの人気曲を確認するために人気投票の結果を活用したという感じなのだろう。

そして、その「結果」としての選曲は以下の通り。

01. Unfinished Allegro
02. Carry On
03. Angels Cry
04. Nothing To Say
05. Z.I.T.O.
06. Wings Of Reality
07. Lisbon
08. In Excelsis
09. Nova Era
10. Bleeding Heart
11. Live And Learn
12. Deus Le Volt!
13. Spread Your Fire
14. Angels And Demons
15. The Voice Commanding You
16. Scram You heart Out
17. Arising Thunder
18. Lease Of Life

全18曲という大ボリュームながら、#1、#8、#12は次の楽曲につながる序曲的な小曲なので、実質15曲(それでも1枚モノとしてのCDの容量の限界に迫るボリュームだが)。

ただ、その15曲中実に11曲が疾走系の楽曲で、日本人の傾向と言われる「疾走好き」が顕著に表れた選曲である。

個人的にもANGRAの疾走曲は高揚感に満ちていて大好きだし、私が選曲しても疾走曲多めになるであろうことは間違いない。

ただ、私がANGRAを他のメロディック・パワー・メタル・バンドと差別化しているのはむしろミドルやバラード系の楽曲において、時にメタルという音楽の範疇から逸脱するのではないかというほどの音楽的な懐の深さを感じさせることだと思っており、そういう意味でこのベストの選曲はいささか片手落ち。

一方で海外盤の選曲は以下の通り。

[Disc 1]
1. Carry On
2. Angels Cry
3. Wuthering Heights (KATE BUSH Cover)
4. Evil Warning
5. Nothing to Say
6. Holy Land
7. Carolina IV (Live Version)
8. Freedom Call
9. Lisbon
10. Metal Icarus

[Disc 2]
1. Nova Era
2. Rebirth
3. Hunters and Prey
4. Spread Your Fire
5. Waiting Silence
6. The Course of Nature
7. Salvation: Suicide
8. Arising Thunder
9. Lease of Life
10. Kashmir (LED ZEPPELIN Cover)

2枚組にして、Voがアンドレ・マトスの時代とエドゥ・ファラスキの時代に分けているのはいいアイディアですね。「Carry On」と「Nova Era」はどちらも「アルバムの冒頭の曲」として聴くのが相応しい曲だと思っているので、そういう意味でもこの「ディスクの振り分け」はいいと思います。

とはいえ、やっぱり「Acid Rain」や「Angels And Demons」が入っていないというだけでも大減点かなぁ…個人的には。

さらに個人的なことを言うなら、今日びパソコンを使って「ぼくのかんがえた最高のベスト・アルバム」を簡単に編集できてしまう現代においてはベスト・アルバムという商品の意義は「入門者向け」という以外にはほとんどなく、そう考えると「1枚にまとめて値段を下げる」ことが(入門者に対する敷居を少しでも下げるという意味で)一番正しいあり方であるように思える。

そういう意味では日本盤のほうが正しい(?)ベスト・アルバムに近いのかもしれないが、実は日本盤には歴代のPVを収録したDVDが付属しており、それが価格を押し上げていたりする。

同様の形で発売されたGAMMA RAYのベストの感想を書いたときにも同じことを感じましたが、今日び動画共有サイトなどでPVが簡単に観ることができるようになった現代においてはこういったPV集にも大してありがたみはなかったり…。

ぶっちゃけると欧米のビッグ・アーティストに比べるとショボいPVばかりで、映像作品として見るべきものもあまりないし…。

まあ、比較的メロウな楽曲の多いこのPV集が疾走曲ばかりのCDの選曲バランスの悪さを補完しているという見方もできるし、ライヴDVD「Rebirth」にのみ収録されていた、サッカーのブラジル代表のために制作された「Pra Frente Brasil(進めブラジル、の意)」の映像が収録されているのは、ついついファンであっても忘れがちなものをちゃんと拾ってくれた感じでポイント高いかな。

ちなみに「Pra Frente Brasil」はANGRAのオリジナルではなく、1970年にやはりサッカーのワールド・カップの際にブラジルの応援歌としてミゲル・グスターヴォという作曲家によって書かれた古い曲ですが、なかなかカッコいいメタル・チューンに仕立てられている。

なお、本作の売りのひとつである「K2HDリマスター」については、既にデジタル・レコーディングが一般的になって以降にリリースされたものについては、リマスターと言ってもそれほど大きな変化が感じられないことが多いのだが、本作についてもそれは例外ではない。

全体的に音量レベルが上がっているので素人耳には多少良くなったように聞こえるかもしれないが、基本的な音の軽さや抜けの悪さ、分離の悪さなどは特に改善されていない(そもそもこの辺はリマスターでどうこうできる領域ではないのかもしれませんが)。

ただ、ちょっと驚いたのは7th「AQUA」収録の2曲、#17、#18だけは劇的に音質が改善しており、全体的にモヤッとしていたあのアルバムのサウンドが俄然ソリッドになっている。ぶっちゃけ、あのアルバム全体にこのリマスターを施したほうがいいんじゃないでしょうか。

その他、ブックレットではラファエル・ビッテンコート(G)がライナーノーツを書いていますが、デビュー・アルバムである「ANGELS CRY」の制作にあたっては、日本のビクターがレコーディング費用の大半をカバーできるほど多額の前払い金を支払ってくれた、なんていう興味深い話も読めるのはファンにとってはこのアルバムを購入するひとつのメリットになるかもしれませんね。

まあ、当サイトの年間ベストをご覧いただいてもお分かりの通りANGRAは名盤の多いバンドなので、こういうベスト・アルバムよりはオリジナルのアルバムを聴いてほしいというのが、ありがちながら一ファンとしての希望です。

んー、でもやっぱりこうしてあらためて聴いてみるとカッコいい曲が多いなあ…。さすがはBURRN!誌で年間ベスト・チューンに選ばれた曲を複数持っているバンドというべきか。

現在ヴォーカリスト不在で実質活動休止状態の彼らですが、早く優れたシンガーを見つけて活動を再開し、また日本に来てほしいですね。

彼らのライヴを体験したことがあるファンの方であればご存じかと思いますが、彼らの曲って精緻に作り込まれていながらライヴ映えも素晴らしいんですよ。

「Carry On」の「Go!」とか、「Spread Your Fire」の「Fire!」とか、ライヴで観客の掛け声がビシッと揃うと超気持ちイイんですよね~(恍惚)。祈・再Rebirth!


スポンサーサイト

コメント

非公開コメント

ANGRA、イイですよね☆
特に個人的には、1stのTimeと、3rdのGentle Changeがベストです。
メタル以外の曲にとても魅力を感じるバンドです。
そして(少なくとも5thまでは)メタル曲やらせたらやらせたで驚異的な完成度で、全くハズレがない、というのも他のバンドとはレベルが違いましたね。
ライブがショボいのが唯一にして最大の弱点ですか。。。泣
でも、マトス出戻りでも興奮するし、新たな逸材を見つけてくれても楽しみですね〜♫

多分ANGRAが一番好きです

私も票したんですが全く反映されてなくがっかりでしたけど購入しました。
おっしゃるとおり速い曲に偏った選曲でこれじゃANGRAのベストじゃなくてメロスピ好きのベストじゃねーかと感じてます。
とは言え大好きな曲ばかりなので聞き入ってしまうのが悔しいところです。
しかし2000年代以前のビデオクリップは特に酷い(笑)
ベストには入ってないけどMetal Icarusで何度焼かれても蘇るみたいなこと歌ってるんできっと Rebirthしてくれます!

選曲が……。

もともと僕はAngraを一つのメタルバンドとしてしか見てませんでしたし、アルバムも『Rebirth』を買って聴き、次に『Temple Of Shadows』を買って聴いてもそれは変わりませんでしたが、キコ・ルーレイロのギターの魅力と音楽の懐の深さに気付き、今では『Aqua』以外のアルバムを集め、シングルまで買っちゃったり、キコのソロアルバムを買う位好きになりました(笑)

昔の自分なら「疾走だらけでイイネ!」となっていたと思いますが、Angraの事を純粋に好きになった今となっては「こりゃねーわ」と普通に言っちゃいました(苦笑)

確かにAngraの疾走曲は格好いいですが、彼等の真骨頂は寧ろミドルチューンですよねぇ。

Time、Gentle Change、Acid Rain、Hunters And Pray、Waiting Silenceなど、挙げればキリがない……。

メタルだけでなく、全てのジャンルから見ても多くの「音楽的素養」とかなりの「懐の深さ」を持ち、そして「静と動のバランス」がここまで整ったバンドも珍しいですよね。

コレは悩ましい選曲ですねぇ…(^_^;)

日本盤には僕も投票した「LIVE AND LEARN」と「ANGELS AND DEMONS」が入ってるし、
海外盤には「Holy Land」や「Carolina IV」、「Freedom Call」が…。
どっちを買おうか悩んじゃいますね。

GRAVE DIGGERの新譜もあるし、さぁ、困った(>_<)

まとめてお返事

>単なるBURRN!ファンさん
ANGRAは最高のメロディック・パワー・メタルでありながら、それ以外の面においても奥深い魅力を感じさせる稀有なバンドですね。
私は「HOLY LAND」ツアーと「TEMPLE OF SHADOWS」ツアー、そしてLOUD PARKで彼らのライヴを観ていますが、少なくとも単独で観た2回は充分に良いライヴでした。


>タマネギさん
きっとこだわりを持って投票した人ほど、その投票が反映されていないことでしょうね(笑)。
私もこのバンドに関してはきっとRebirthしてくれるだろうという半ば確信に近いものを持っています。


>Shuさん
まあ、ANGRAに関しては「全部聴け」ということですね(笑)。
おっしゃる通り、ここまで豊かな音楽性を備えたバンドはメタル界はおろか、ロック界広しといえどそうは見当たりませんね。


>珍獣メガネコアラさん
帯に短し襷に長し、といった感じの悩ましい選曲ですね(笑)。

ただ、投票するくらいであればANGRAのアルバムはある程度お持ちでしょうし、そういう方であればわざわざベストを買う必要はないんじゃないですか?

改めて振り返ると、若干地味なのもあるけどANGRAはどのアルバムもいいですよね。メロディックなパワーメタルを軸にしながらもクラシックやラテンミュージック、テクニカルなプログレなどといったエッセンスがあって色々楽しめるところが好きです。

このベスト盤の選曲はちょっと偏り気味ですね(2ndの名曲Carolina Ⅳが入っていないなんて・・・)。確かに彼らの疾走曲は素晴らしいですが。

BEST盤ソッコー買った

俺もANGRAのアルバム(EP含む)全て持ってる上で、このベスト盤をソッコー買いに行った典型的なANGRAファンだ(笑)。

確かにサウンドあんま変わんないんですよね。
どこリマスターしたんだ?と思って聴き進んだら「AQUA」の2曲が特に良い音になっていて、リカルド・コンフェッソーリのドコドコ・ドラムが聴こえて一安心。

ただやはり「Carolina IV」投票しただけに、アルバムに入ってないのが悔やまれますね。
「全てのアルバムから2曲」という制約がなければ実現しただろうと思います。
その反面、投票してなかったけど「LIVE AND LEARN」が入っていたのが嬉しかったですね。

>ハルディンさん

ANGRAのアルバムは多少の出来のバラつきはあれ、どれも音楽的には聴きごたえのあるものだと思います。

「Carolina IV」が外れたのは、長いからかもしれませんね…。

>ストラディキャスターさん

全てのアルバムを持っているのにベスト盤も買ってしまう、私もそうですが、ファンの悲しい(?)性ですね(笑)。

ほぼ全て疾走系のチョイスなのでメロスパーの私には概ね満足のいくベスト盤でした。
これで「Evil Warning」「Unholy Wars」「Running Alone」「Temple Of Hate」が入っていれば個人的に完璧でしたね。

「Carry On」「Angels Cry」が「Nova Era」と同じ音量で聴けるのも嬉しいですね。

>学生メタラーさん

もっと疾走曲を!って感じですね(笑)。
疾走曲だけでもまだまだ入れてほしい曲があるわけですから、やっぱりANGRAは名曲ぞろいですね。