ENBOUND / AND SHE SAYS GOLD (2011)

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元ZONATAで、AXENSTARやDRACONIANなどの作品を手掛けたプロデューサーとしても知られるマイク・キャメロン・フォース(Dr)を中心に結成されたスウェーデン出身4人組のデビュー・アルバム。

2006年にマイク・キャメロン・フォースが当時CRYSTAL EYESに在籍していたジョナサン・ニーベリ(G)と知り合ったことで始動したこのプロジェクトは、マーカス・ニーグレン(Vo)、スウェード(B)を迎え、08年にプロモーション用のCDやPVを自主制作したものの、その後マーカスとジョナサンが脱退、新たに加入当時17歳という若きギタリスト、マーティン・フローベリと、リー・ハンター(Vo)を迎え、現在のラインナップが固まる。

実はこのリー・ハンターというあからさまに芸名なヴォーカリストは、WORK OF ARTやLIONVILLEで活躍するラーズ・サフスンドその人で、実は私が日本盤発売から約10か月遅れという微妙なタイミングで本作を購入したのは、その事実を知ったことがきっかけである。

本作の日本盤ライナーノーツによるとラーズ・サフスンドはWORK OF ARTやLIONVILLEの他にもBIONDOというグループのメンバーとしてルーマニアの「ユーロヴィジョン・ソング・コンテスト」にエントリーして第2位を獲得したり、ミュージカル「ジーザス・クライスト・スーパースター」に出演したり、「SINGING BEE」なる現地のTV番組にも出演するなど、多彩なキャリアを持っているそうである。

肝心の本作の内容だが、09年にレコーディングをスタートし、完成したのが11年ということからも察せられる通り、かなり作り込みの感じられる完成度の高い音である。

マスタリングにはRAMMSTEIN、PRIMAL FEAR、SONATA ARCTICAなどを手掛けたビヨルン・エンゲルマン、アートワークにはAVANTASIAやEDGUY、MASTERPLAN、EDEN’S CURSEなどの作品を手掛けたトーマス・エヴァハードが迎えられるなど、実質自主制作に近い形で制作されたにもかかわらず、プロダクションからアートワークまで、完璧な作品を目指したことが伝わってくる。

そのサウンドはあえてジャンル分けすれば「メロディック・メタル」ということになるのだろうが、いわゆる典型的なメロディック・パワー・メタルのようなケレン味は薄く、もっと繊細で洗練されたスタイルである。

逆にその洗練された完成度の高さがインパクトを削いでいるような感も無きにしも非ずなのだが、何度も聴き込むにつれ、その練られたメロディとアレンジに引き込まれる。

ラーズ・サフスンドの歌唱はこれまで彼が参加したメロディアス・ハード系のプロジェクトで聴ける歌唱に比べると良くも悪しくも力が入っており、WORK OF ARTなどで聴ける爽やかな歌声だけをイメージすると違和感を覚える瞬間もあるが、メロディックなパートにおける歌唱はやはり彼らしい魅力に満ちており、いかなるタイプの楽曲を歌わせても非常に上手いシンガーであることがわかる。

メロディアス・ハード系のファンにもアピールするであろうバラード・チューン、#5「Frozen To Be」には「BALTIC SONG CONTEST」や「ユーロヴィジョン・ソング・コンテスト」といった欧州の大きな音楽祭で活躍し、数々のTV番組への出演経験を持つスウェーデン在住のアメリカ人女性シンガー、ラゲイリア・フレイザーがデュエットでゲスト参加している。

なお、日本盤ボーナスには、故マイケル・ジャクソンがエディ・ヴァン・ヘイレンをゲストに迎えて放った大ヒット曲、「Beat It」というメタル・バンドとしては異色のカヴァーが収められているが、元々ロック色の強い楽曲ではあり、ラーズ・サフスンドの卓越した歌唱力によって(アルバムにおける調和はともかく)違和感のない仕上がり。

個人的にはもう少しギターやドラムが主張して、現在あえてコンパクトにまとめてあると思われる楽曲をもう少し派手にした方が、いわゆるメタル・ファンには受けると思うのですが、本作における洗練された佇まいにも捨てがたい魅力があるだけに、なかなか難しい所ですね。【84点】

◆本作収録の「Combined The Souls」のPV [YouTube]

アルバム・タイトルを踏まえてか金粉を塗りたくってますが…イロモノっぽくなるだけなので普通にやったほうがよかったのでは…。皮膚呼吸できなくて大変そう。


◆マイケル・ジャクソン「今夜はビート・イット」のカヴァー [YouTube]



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コメント

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失礼ながら元ZONATAのメンバーが作ったとは思えないほど洗練された音楽ですね。
自分も金粉はやめたほうがいいと思います。

皮膚呼吸できなくても別に死なないよ

マイケル

昨日LIONVILLE / II のほうで80年代が好きだったと書きましたが、何を隠そうマイケル・ジャクソンファンだったんですよね。
このBeat Itは今までに聴いたカバーで一番良かったです。
この曲はやっぱりいつ聴いてもカッコいいなぁ(懐古)

個人的には力んだラーズ・サフスンドのがカッコよく感じました。
何となくLINKIN PARKをメロパワ化させたようなメインストリームで売れそうな音ですが、
どこまでいけるでしょうかね。

まとめてお返事

>名も無きメタラーさん
たしかにZONATAをデビュー時から知る者としては目を(耳を)疑うほど洗練されたメロディック・メタル・サウンドですよね(笑)。
あのバンドの場合はシンガーの声質が垢抜けない印象を醸し出していたような気もしますが…。


>ぼくさん
そうですね、死にはしませんね(笑)。
これだけ熱演していると息苦しくなるかな、なぁんて思っただけです。


>Mark.Nさん
80年代好きと言えばマイケルが好きなのはある意味当然ですよね。私も当然好きです(個人的にはマドンナの方が曲は好きですが/笑)。
このカバー、真っ直ぐなカバーでカッコいいですよね。歌が上手くないとこうはキマりません(リッパーが歌ったイングヴェイのバージョンはひどかった)。

LINKIN PARK…言われてみるとおっしゃることはなんとなくわかります。
彼らの100分の1でも売れたら大したものなのですが、少なくともアルバムが出て1年経って、ほぼ何も起きていないのが現実ですね…。

売り方によってはかなりポテンシャルのある、レベルの高いバンドだと思うのですが。