HAREM SCAREM / MOOD SWINGS II

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私も90年代に「メロディ派」を自認するHR/HMファンだったので、当然HAREM SCAREMは通っており、ご多分に漏れず彼らの日本デビュー作となったセカンド「MOOD SWINGS」はフェイバリット・アルバムだった。

純粋なメロディアス・ハードとしての完成度はファーストのセルフ・タイトル作の方が上だと思うし、実際本国カナダで一番ヒットしたのはファーストのようだが(と言っても68位という「スマッシュ・ヒット」とも呼び難い順位だが)、彼らが日本を含め、インターナショナルな認知を得るきっかけになったのはやはり「MOOD SWINGS」だろう。

実際このアルバムはカナダのポッと出のバンドが作ったとは思えないほどの完成度で、練られた楽曲、高度な演奏力、そして何より大物バンドと比較しても何ら遜色ないスケール感があった。

90年代、日本では「ビッグ・イン・ジャパン」的なメロディアス・ハード系の人気バンドがいくつかあったが、メジャー感という意味ではこのバンドが一番だったかもしれない。

それだけに、時代に流された観のある「VOICE OF REASON」はともかくとして、「BIG BANG THEORY」以降のパワー・ポップ路線へのシフトチェンジは残念だった。メロディアス・ハードのファンにとって、パワー・ポップは似て非なるものであり、「コレジャナイ」感が強いのだ。

メジャーの「WEA」をドロップした後の「WEIGHT OF THE WORLD」以降はややメロディアス・ハード方向への揺り戻しがあったが、初期のような煌びやかさを取り戻すことはなく、個人的にはやや不完全燃焼だった。

それが今回、(リリースの)20周年記念として「MOOD SWINGS」を再レコーディングし、リユニオン・ツアーを行なうと聞いても、あまり手放しで喜べなかった理由である。

解散前の最後の来日公演を観ても、やはりバンドとしての基本的な演奏スタイルが初期とは変質しており、今の彼らの生っぽいサウンドで再録などをされても、美しい思い出が汚されるだけなのでは…と思っていた。

しかし、それは杞憂に終わった。ここで聴けるサウンドは意外なほど当時の音楽を忠実に再現しており、微妙な差異に気付くことはあれど、幻滅を覚えるような箇所はほとんどなかった。

いや、まあハッキリ言えばオーバー・プロデュース気味でやや人工的なサウンドだった(ただ、それがあの音楽には合っていた)オリジナルに比べると、Drがややナチュラルなサウンドにはなっているが、許容範囲である。

サウンド以外で変わっている点といえば、まず#5「Jealousy」にオリジナルにはないパートが足されているが、違和感を覚えるようなものではない。

あとはオリジナルではアカペラだった#10「Just Like I Planed」に伴奏が付いており、これが一番大きな差異といえるだろう。個人的な感想としては、「普通の曲」としての聴きやすさは増したが、アルバムのアクセントとしてのインパクトは薄れたかな、という感じ。

逆にここまでオリジナルに忠実だと、わざわざ再録する意味があるのか、リマスターして「20th アニバーサリー・エディション」とか出せばよかったのでは、という気もするが、オリジナルの原盤権を持っているのが現在の所属レーベルではない、しかもメジャー・レーベルとなると、大成功したとまでは言い難い彼らにそこまで手間をかけてくれるとは思えない。

そうなると、今後ライヴをやっていく上でのライセンス料のことなどを考えると、こうしてリメイクすることはビジネス的にも意味があるのかもしれない。

ボーナス・トラックとして追加された3曲は、特筆するほどではないが、どれもややダークなムードながらもサビでは彼ららしい印象的なメロディを聴かせてくれる曲で、ファンであれば楽しめるだろう。ただ、やっぱりもう「MOOD SWINGS」のような曲は書けないということなのかな、という気もしてしまうが…。

しかしやはり本作の楽曲は素晴らしい。典型的なメロディアス・ハードとは異なる要素を巧みに使いつつ、爽快感のあるサビのコーラスにつなげていくその展開は、ダイナミックかつ意外性があり、単に耳触りが良いだけのメロディアス・ハードとは一線を画す強力なフックがある。

中でも#1「Saviors Never Cry」と#4「Change Comes Around」は一生聴き続けていきたいと思える名曲だ。

うーん、これを聴くと10月の来日公演に行きたくなるな…。

◆本作のサンプル音源 [YouTube]



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コメント

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MOOD SWINGSは僕もフェイバリットです。
というかアルバムトータルで聴いた回数はHR/HMでは一番かも・・・。

まぁ、オリジナルを聴きすぎているせいか、「ここはドラムもうちょっと抑えてよ」とか「ギターソロの音量が小さい」とか細かいところが気になってしまいました(笑)
版権絡みの裏事情でこういう形になったにせよ、リメイク/カバーアルバムは大胆に編曲されてるほうが好きなタチなので、そこがちょっと物足りなかったですねぇ。

今後が気になるところですが、万が一彼らがその気になって「MOOD SWINGSのスタイルに戻ろう!」と思っても、あのようなマジックを持つ曲は生み出せないでしょうね・・・(悲)
MOOD SWINGSは単なる作曲能力を超えた不思議な魅力のアルバムですから。

>Mark.Nさん

HR/HMで一番とは、それは相当な聴き込みですね。
そういう言い方をするということはHR/HM以外でもっと聴き込んだアルバムがあるということだと思いますが(笑)。

そこまで聴き込んでいる方にとっては、こういう再現型のリメイクは微差が気になるばかりで、いっそ大胆にアレンジしてくれたほうが興味深く聴けたかもしれませんね。

たしかに「MOOD SWINGS」は、あの時期、あの状態だからこそ生み出せた瞬間の魔法のような作品だと思います。

怒羅権 中埜良です。

怒羅権 中埜良です。
このブログを読んで、参考になりました。
ありがとうございます。
怒羅権 中埜良でした。

元々、再録は好きではない。新解釈ない再録ならオリジナルを聴けばいいと思っていました。しかしながら、アーティストが原盤を持っていない場合、経済的な理由で再録をするということを知って以来、好きなアーティストの場合、お布施感覚で買っています。今回もそのケースで買ったままかなり置いたままになっていました。BURRN! でインタビューも載ったしと聴いてみたわけですが、これは本当に素晴らしい。オリジナルに近いからも余分なことを考えず曲本来の良さを味わえます。メロディ、ハーモニー、音楽に必要な3大要素のうち、ふたつの最上級のものがあると思います。久々に聞き返す機会を与えてくれたバンドに感謝、ひとりでも多くの方に届くといいなと、微力ですが応援します。まだ、試聴機にはいってる時期です。ぜひ、4-6曲だけでも聞いて欲しい、切に願います。

>大介山さん

そうですね、バンド側には色々と事情やら思惑やらがあるんでしょうけど、リスナーとしてはこの素晴らしいアルバムにもう一度向き合う機会が与えられたことを感謝すべきでしょうね。
できれば単なるオールド・ファンのノスタルジーに終わるのではなく、新しいファンの獲得につながるといいのですが。