OUTLOUD / LET’S GET SERIOUS

outloud03.jpg

『BURRN!』誌で広瀬編集長から91点という絶賛を受けたFIREWINDのキーボーディスト/サイド・ギタリストとして知られるボブ・カティオニス率いるギリシャのバンドのサード・アルバム。

元々はボブが彼の教え子であるトニー・キャッシュを世に送り出すために始めたプロジェクトだったはずが、前作「LOVE CATASTROPHE」発表後、そのトニーがバンド活動に対するモチベーションを失って脱退してしまっている。

さらにドラマーだったマーク・クロス(元METALLIUM, HELLOWEEN他)がイギリスに移住するために脱退してしまったため、同作のツアーには、ボブの知り合いであるアキレス・ディアマンテス(G)とタキス・インタス(Dr)がゲスト参加した。

その後、「LOVE CATASTROPHE」のアウトテイクを収録したEP「MORE CATASTOROPHE」をリリースしたのち、ギター・パートはボブ一人、ドラムはなんと有名デス・メタル・バンドであるNILEのジョージ・コリアス(彼もギリシャ人である)を迎えて制作されたのが本作。

本作完成後にジム・スコルディリス(G)、コスタス・ミロナス(Dr)という新メンバーを補充しているが、本作制作時にギタリストが一人だったためか、前作にも増してKeyが大々的にフィーチュアされており、ポップな曲についてはもはやメロディアス・ハードという言葉を通り越してAOR、産業ロックなどと呼ばれる音楽をさえ彷彿させる。

本作の冒頭を飾る「Another Kind Of Angel」なんて、80年代でさえここまで臆面もない使い方はそうそうしなかったんじゃないか、というほどのキラキラ・シンセ祭りで、その手のサウンドが好きな人間の胸をときめかせる。

続くリード・トラックの#2「I Was So Blind」もまた、80年代風味全開の哀愁歌謡ハード・ロックで、そのセンスは欧州のHR/HMというよりもむしろ日本の歌謡ロック・バンドに近いのではないかとさえ思わせる。なんてオヤジ殺しなサウンド。

もっとも、この恥ずかしげもない80年代メロディアス・ハード・ロックへの耽溺ぶりは、さすがにイマドキの若者にとってはちょっとダサ過ぎるのではないか、という気もしないでもないが…(苦笑)。

#4「Like A Dream」と#5「All In Vain」は元々はPLACE VENDOMEのアルバム用に作られた曲だったそうだが、採用されなかったので本作に収められたとのことだが、なぜ採用されたなかったのか理解に苦しむほどフックの効いた佳曲。このクオリティの曲をボツにできるほど『Frontiers Records』には良い曲が集まるのだとしたら、あのレーベルは当分安泰だと思われる。

欧州では#11「Death Rock!」というセンスがないにも程があるタイトルの曲がオープニング・トラックとなっているが、同曲はゲスト・ドラマーであるジョージ・コリアスをフィーチュアするために作ったとしか思えないアグレッシヴな曲で、この曲におけるドラミングのアグレッシヴさはメロディアス・ハード離れしている。

また、アメリカ人ヴォーカリストのチャンドラー・モーゲルの古い友人だというテクニカル・ギタリスト、マイク・オーランドがゲスト参加した#9「Toy Soldiers」などはパワー・メタル的な楽曲であり、本作は決して軟弱なAORアルバムなどではない。

一方で本作ではOMD(ORCHESTRAL MANOEUVERS IN THE DARK)の1980年の全英ヒット曲(日本でも当時テレビ朝日のニュース番組のテーマ曲に採用され、かなり知名度があった曲)「Enola Gay(邦題:エノラ・ゲイの悲劇)」をカヴァーしているあたり、本作における80年代風シンセの多用は確信犯でもあるのだろう。

アルバム・ジャケットの女性はボブ・カティオニスのガール・フレンドだそうだが、これまでのアルバムのジャケットに登場していた女性も全てボブの彼女だそうで、そのモテっぷりは日本でこの手のサウンドを好む人々の共感を呼ばないのではないだろうか(笑)。

しかし、ボブ・カティオニスは優れた作曲家であり、キーボーディストとしてもギタリストとしても一流の腕前であり、しかもカメラマンでもあり、グラフィック・アーティストでもあり、ビデオ・アーティストでもあるとのことで、このバンドに関するアートワーク周りの仕事は全てボブ本人が手掛けているという多才っぷりで、しかもかなりの男前とくればモテるのも仕方ない(苦笑)。

いずれにせよ、80年代テイストを愛するメロディ派のリスナーであればチェックすべき一枚であることは間違いない。【84点】

◆本作のリード・トラック「I Was So Blind」のPV



スポンサーサイト

コメント

非公開コメント

ジョージコリアスが叩いているおかげか、リズムセクションがかなりのハイクオリティですね
PVの曲もかつてのマンティスや80年代のテイストたっぷりで素晴らしい
ただ、death rock!だとか必要以上に安っぽい女性をあちこち登場させたりとか
80年台だったとしても“だっさい”作りのPVとか・・・・・・

どこまで真剣に取り組んでいるのか分かりませんし、バンドの根っこも不明瞭・・・・・

こうゆうバンドは真面目な日本人リスナーは手を出しづらいと思いますね

今月はメロハーの注目作が多いですね。
ALIENはマストとして、このアルバムとRUBICON CROSSのどっちにするか迷いましたが、こちらを買うことにします(笑)key多めというのが期待できそうです。私は20代半ばですが、多分「イマドキ」の若者ではないんでしょうね。

「Another Kind Of Angel」のkeyすごいですね・・・。なんか女性アイドルグループの曲でも始まるかのようなイントロ(笑)

>カメオさん

このバンドの場合、真剣さの問題というよりは、センスの問題なのだろうと思います…。

気になる人には気になるでしょうね。それが気にならない人は91点をつけるのだと思いますが。

>Mark.Nさん

ジャンルとしてのメロハーを求めるのであれば、RUBICON CROSSよりこっちでしょうね。

私自身が「イマドキの若者」ではないので、その辺は想像で書いてます。あまり気にしないでください(笑)。

買いました!

いやぁとても良いですね、コレ。

個人的にALIENの新譜より気に入ってます。ジョージ・コリアスのドラムを抜きにしても、とても勢いがあって爽快です。

W杯ギリシャ戦は引き分けでしたが、私がこのアルバムをヘビロテしてた事と因果関係はあるんでしょうか(笑)

>Mark.Nさん

ALIENよりもわかりやすいというか、派手ですね。

あの攻めきれない感じは、ちょっとMark.Nさんの気持ちがギリシャに傾いていたというのが影響あったかもしれませんね(笑)。