ZINATRA / THE GREAT ESCAPE (1990)

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オランダのハード・ポップ・バンドが1990年に発表したセカンド・アルバム。

1988年にリリースされたデビュー・アルバムは当時人気絶頂だったDEF LEPPARDのフィル・コリンがゲスト参加していたことで注目を集め、内容もいかにも80年代全開な(キーボーディストがいないにもかかわらず)キラキラしたキーボードが大フィーチュアされたハード・ポップの佳作だった。

同作からはシングル「Love Or Loneliness」母国オランダのチャートでTOP20に入るスマッシュ・ヒットとなるなどの反響もあったが、同作リリース後、ツイン・ギターの片割れが脱退、その穴埋めにギタリストではなくキーボーディストであるロビー・ヴァレンタインを迎えてリリースされたのが本作。

前作よりもロック・バンドとして芯の太いサウンドを出していつつも、基本的には前作の流れを汲むKeyバリバリのハード・ポップ・サウンドが展開されており、その手の音が大好きな私としては、イントロダクションの#1に続く#2「Take It To The Top」の溌剌としたKeyリフを聴いた瞬間にこのバンドのことが好きになってしまいました(笑)。

その曲をはじめ、4曲を同時期アメリカン・メジャーの「ELEKTRA」からブルース・フェアバーン(BON JOVI, AEROSMITHほか)のプロデュースでソロ・アルバムをリリースしたポール・レインの書いた曲が4曲、そして本作から加入したロビー・ヴァレンタインが書いた曲が4曲、それ以外のメンバーがクレジットされている4曲のうち3曲にはプロデューサーであるアーウィン・マスパーの名前も連ねられている。

これが何を意味するかというと、ロビー・ヴァレンタインを除くZINATRAのメンバーの作曲力に疑問符がつく、ということなのですが(苦笑)、結果として本作には良い曲ばかりが収録されているわけですから、個人的にはバンド・メンバー以外の外部の人間が作曲に関わることは悪いことだとは思っていません。

本作はロビー・ヴァレンタインが日本でブレイクした時期に「ロビー・ヴァレンタインが過去に在籍していたバンド」ということで再発され、再発されたことで私が耳にする機会を得たわけですが、ロビーが書いた曲以外の曲も元気な曲からしっとりした曲までもれなく充実していて驚きました。

明るめの曲でもアメリカのバンドの曲のようにカラッと能天気な感じにはならず、常にそこはかとないウエットな叙情性があり、それでいて北欧のバンドほど湿っぽくならないあたりがオランダのバンドらしいのかもしれません。ヴォーカルのパワフルながらマイルドな歌声も結構好みです。

HR/HMバンドとしてはいささか歌謡曲的に過ぎる、という意見もあるかもしれませんが、一歩間違うとジャ○ーズ寸前だった前作に比べればだいぶ力強さを増しているし、これはこの時代のハード・ロックならではの幸福な大衆性の発現だったと私は解釈しています。

本作はオランダのチャートで72位を記録したが、恐らく「オランダのBON JOVI」や「オランダのEUROPE」を目指していたであろうメジャー所属バンドの成果としては物足りないものだったに違いなく、ロビー・ヴァレンタインが早々に脱退してソロに転じた。

バンドはロビーの後任を補充してしばらく活動していたのものの、程なく解散。ヴォーカルのヨッス・メネンは自身のバンドMENNENで地道に活動を続けている。

ロビー・ヴァレンタインの知名度もすっかり落ちてしまった今となっては注目されることもなくなってしまい、今となってはやや入手困難な一枚ではあるが、欧州系メロディアス・ハードのファンであれば一度は聴いてほしい佳作。【86点】

◆本作収録「There She Was」のPV


◆個人的フェイバリット・チューン「Take It To The Top」

こういうKeyリフにめっぽう弱いんですよ、私…。

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コメント

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タイトル

このアルバムはお金の無かった10代の頃によく聴いていましたので、かなーり思い入れがあります!
思い入れがありすぎて客観的に曲を評価できないレベルの一枚です。
現在の自分がこのアルバムをはじめて聴いたとしたら、多分普通の甘口ハードポップとしか思わなかったかもしれないです。

タイトル

すごい!アイドルソングすれすれのKeyが、好き者にはたまらないですね。

>お名前さん

「普通の甘口ハードポップ」って、充分客観的にご覧になっているじゃありませんか(笑)。
でも、「甘口ハードポップ」は事実ですが、「普通」よりクオリティは高いと思いますよ!

>Mark.Nさん

80年代ですよね(90年作ですが)。今となってはまさに好き者のためのサウンドです(笑)。

タイトル

この記事は実質3年連続のヴァレンタイン企画と思っていいでしょうか?
このタイミングは偶然ではないと思います(笑)

ロビーが参加しているということでこのアルバムにも興味はあるんですが(柏の)diskunionでも見かけたことがないので
結構入手困難なんでしょうね。

あとロビーの最新作がAmazonでも注文できないのでまだ聴けてません!
itunesでは新作から2曲程配信されているそうですが。
ロビーと契約したいと思っている日本の会社はないんですかね?

関係ないですがB!の感想が終わってadoreさんの今月のマストバイが分からなくなったのが残念です・・

>ノバックさん

まさかバレンタイン企画に気付く方がいらっしゃったとは(笑)。記憶力いいですね。

本作はCDでは入手困難ではありますが、まあiTunesやAmazonのMP3ストアで買えますから、聴くこと自体は難しくないですね。

ロビー・ヴァレンタインの最新作は限られたサイトでしか配信されてないようですね。
一時は結構人気あったのに日本盤を出すところがないとは、時の流れは残酷ですね…。

今月のマストバイ、あれはむしろ自分向けの備忘録みたいなものだったのですが、注目してる(?)方もいたんですね。

今月はSCORPIONSと、レビューはされていませんが同日発売のEUROPE、GYZEがマストバイですね。

その他SERIOUS BLACK、REVOLUTION SAINTS、THE AGONIST、ECLIPSE、H.E.A.Tのライブ盤やCHTHONICのセルフ・アコースティック・カヴァー・アルバムなども気になっています。

来年は

1st Avenueが今更レビューされるという事態になったりして……w

自分も開幕キーボードリフ一発でがっちりわしづかみにされた1人です。
ジャケットのダサさ込みで愛してますw
ヨッス・メネンの声が好きでこのアルバムは未だにちょくちょく聞いてます。
僕の中でZINATRAとTerra Novaがオランダ・メロディアスハードの2トップなのです。

ところでMENNENは数年前に解散したと聞いた覚えがうっすらあるのですが、
まだ活動してるのでしょうか? 活動してたらうれしいなぁ。

>crowaさん

ところが1st AVENUEは既に昨年の2月に本サイトの方でレビューしているのです…(笑)。

私もオランダのメロディアス・ハードといえばZINATRAとTERRA NOVAですね。
他にそんなにオランダのメロハーについて知ってるわけでもないのですが。

MENNEN、解散しているんですか。
まあ、あまり売れている感じもなかったですしね…。

2000年代のライブ映像を見る限り、メロディアス・ハードとは異なる音楽性に変貌していたようですが。