SECRET SPHERE / A TIME NEVERCOME 2015 EDITION

secretsphere08.jpg

SECRET SPHEREの「A TIME NEVERCOME」といったら、私の知る限り最大の名盤ラッシュの年だった2001年に年間ベストの7位に選んだ作品。個人的に「谷間の年」と感じた2006年とか2009年にリリースされていたら年間ベストに選んだかも、というくらいのお気に入りの一枚である。

この名盤があればこそ、先日の来日公演の際にわざわざ名古屋遠征までして観に行くほどの「SECRET SPHERE愛」が芽生えたと言っても過言ではない。

その名盤が、メロディック・メタル・シーンでも屈指の実力派ヴォーカリスト、ミケーレ・ルッピを迎えた現在の編成でリ・レコーディングをすると聞いたときには激しく興奮したものだ。

しかし一方で不安もあった。かれこれ20年メタルを聴いてきて、「リメイク」だの「リ・レコーディング」によってオリジナルより良くなった事例はほとんどなかったからだ。実際、先日のSONATA ARCTICAなんてガッカリの最たるものだった。

そして期待半分、不安半分で実際に聴いてみると、悪い予感が的中した。「これは僕の好きな『A TIME NEVERCOME』じゃない…」肩を落とし、力なく呟いた。

冷静にもう一度聴いてみる。歌は、当然上手くなっている。別人のようだ。いや実際別人だ。ギターも、ドラムも上手くなっている。ベースは…この手のジャンルではさほど存在感が強くないので割愛(失礼)。

やはり、キーボードだ。当時のキーボーディストだったアントニオ・アガテは、ソロイストとしてはそれほど目を見張るプレイヤーではないものの、シンフォ・アレンジの壮麗さという一点においてはシーン随一と言ってもいいほどの手腕の持ち主だった。

しかしリメイクされた本盤でのシンフォ・アレンジと来たら、良く言えば上品だが、ありていに言えば地味で、インパクトに欠けること夥しい。

もう聴いていて、「うそっ、このパート変えちゃうの?」とか「えっ、あのフレーズをカットするとか正気か」などと思いまくりですよ…。

まあ、私はオリジナルに激しく思い入れがある人間なので、ここに綴った文章は公平性・客観性に欠ける可能性はあります。オリジナルを知らない人にとっては単純に優れたメロディック・メタル作品かもしれませんし、オリジナルを知っていてもさほど思い入れのない人にとってはクオリティ・アップして良くなった、と思うのかもしれません。そういう意見はもちろん認める所存です。

そんな「リメイク否定派」の私でもミケーレ・ルッピによってヴォーカル・パートが良くなったことは認めざるを得ないでしょう? と言われるかもしれません。しかし上手い=良い、ではないのです、必ずしも。

ロベルト・メッシーナは凄いシンガーではありませんでしたが、声に独特の色気がありましたし、個性的な節回し、歌い回しも楽曲のフックになっていました。ミケーレ・ルッピの歌唱の方がたしかに安定感はありますが、その辺の面白みは大幅に減退してしまったように思います。

実は個人的には、このバンドにはミケーレ・ルッピよりもロベルト・ティランティ(LABYRINTH)の方がハマると思うんですよね…。実際「Heart & Anger」アルバムに収録されていた「First Snake」でゲスト参加したロベルトが歌っているパートを聴いたときにはケミストリーを感じましたし。

いずれにせよ、彼ら同様1990年代末から2000年代初頭に登場・活躍したイタリアン・メロディック・パワー・メタル・バンドの多くが失速・活動停止してしまった中、コンスタントに活動を続けている彼らは地力があると思いますし、個人的には本作の満足度にかかわらず今後も応援したいと思ってます。





(おまけ)

なんかこう不完全燃焼な仕上がりだったので、あらためてオリジナルについて語りたくなってきました。

とはいえアルバムのレビュー自体はサイトでもうやってしまっているので、本作の中でも私が一番好きな曲である「The Brave」という曲について語りたいと思います。聴きながら読んでもらえると嬉しいですね。



このイントロのハープ風のサウンドの麗しさだけで期待感が高まりますが、さらにヴァイオリン風の音色が重なり、0:16あたりで入ってくるKeyがまたドラマを匂わせてワクワクします。今回のリメイクでは「バトル曲」である本作のテーマに合わせてか緊張感のある重厚なシンフォ・アレンジになっており、それはそれで悪くないが、個人的には風情のあるオリジナルの方が好みです。

そして36秒あたりでヘヴィなギターが入ってきた後、0:46あたりから始まるKeyのリフっぽいソロがスリリングなわけですが、今回のリメイクではこのKeyをまるっとカットしてバッキングのギターだけになっているのが何よりもいただけない。

1:10あたりからのKeyのフレーズは序盤のハイライト。劇的なドラマの幕開けを感じさせます。

そしてVoが入ってくる直前の小技アレンジがまた気がきいてるわけですが、入ってくるヴォーカル、これがロベルト・メッシーナ節としかいいようのないやたらと不自然に上下する歌メロが、最初は違和感を覚えるものの、ハマると最高に気持ちよくなってくる(笑)。

正直この小刻みなロベルトの歌い回しは、ちょっとミケーレの伸びやかな歌唱とは相性が悪いですね(苦笑)。さしものミケーレもちょっと歌いにくそうです。

しばし猛然と疾走した後2:00あたりからのブレイクがまた雰囲気があって良いし、そこから突入するサビのコーラス・パートで聴かれるスネアドラムの連打、この連打がこの時期のSECRET SPHEREのドラマーのプレイの特徴で、正直リズムはやや不安定なのだが、妙な力強さとインパクトがある。

そしてサビ後のムーディーな静寂、からのKeyソロ、そしてとどめのギター・ソロ、という流れは悶絶モノ。ギター・ソロのフレージングの構築美にはただただ聞き惚れるのみ。リメイク版の方がギターのトーンの説得力は増しているが、オリジナルの方が丁寧に弾いている感じがします。

その後訪れる緊張感に満ちたヘヴィ・パート。これは「起承転結」でいう「転」が来た、って感じですね。ドラマの山場を感じます。

山場の後のメロウなパート、からの力強いパートを挟んで、5:25あたりから再び疾走に転じる瞬間はカタルシスですね。5:35の「Freedom!」はぜひライブで拳を突き上げ、叫びたかったです。それにしてもなんと起伏に富んだゴージャスな曲展開なのでしょう。

そして最後のコーラス・パートでは二度目の繰り返しで転調、というわかりやすいクライマックスの盛り上げが。こういうわかりやすさ、大好物です。

そしてこの曲を忘れがたく印象深いものにしているのが6:24から始まるアウトロ的なパート。これこそ自由のために戦い、力尽きた戦士に天国から歌いかける天使の歌。毎回これ聴くたびに涙腺に来ますよ。マジで。名曲です…。

Cry no more,
Wind is blowing far the tears
can't imprison me 'cause freedom
will live on her lips

スポンサーサイト

コメント

非公開コメント

私も悩みました

同じく期待と不安入り混じりながら、本作を聞きました。
アレンジで、あれ?という所が多々ありますが、さすがルッピの声です。ただ、違和感を感じます。何故だろう、まだ、結論出ていないです。Keyなのですかね?なかなか聞き込めずにいます。
でもLive音源になると、元気になってしまうのですよね。ルッピの声はCDを超越していますから。HMというジャンルでは、抱えきれないヴォーカルなのでしょうか?もう暫く悩みそうです。

>rinさん

まあ、人間は保守的な生き物なのでどんなものであれ元を知っているものが変わっていれば違和感を覚えるのは当然といえば当然なのですが…。

ミケーレ・ルッピが単なるメタル・シンガーではないことは事実でしょうが、今回の場合はやはり元々の歌メロが「ルッピ向き」ではなかったのではないでしょうか。

タイトル

SONATA ARCTICAといいHIBRIAといい、HR/HM界隈ではリレコーディングブームでも来てるのかと思ってしまいます。

ただやはりこの手のモノがオリジナルに勝るのは、相当珍しいみたいですね。
いくら演奏技術やプロダクションが向上しようと、リスナーのファーストインプレッションやバンドの初期衝動、パッションを上回るのは熟練のバンドでもかなり厳しいことなのでしょうか。

>翔さん

たしかに最近多いですね。偶然なのか、そういう懐古の時期に入ったのか…。

リメイクされるのは基本的にオリジナルが良かった作品なので、そういう作品に宿るマジックを意図的に超えるのはやはり難しいのでしょう。

とはいえ、オリジナルを知らない人がどう感じるか、だけはオリジナルを知っている人間には想像もつかないので、本当にオリジナルより良くないと断言するのも憚られるのですが…。

上手い=いい
ではない、その通りです。
それを如実に感じたのは(別のバンドになってしまいますが)Angraでした。
たしかにファビオは前任者とは比べ物にならないくらい声が太く、歌唱力もありました。
しかしファビオのTimeを聞いた時の違和感はすごかったです。
超音波シャウトは別としてマトス独特の繊細さや細さが曲に絡み合ってミラクルを起こしていたので
ファビオの太く芯のある声はTimeのみならず全般的に合ってなかったですね。

その時のボーカルの声やバンド内の空気感があるからマッチしているのであって、「ボーカルが変わったから」は勿論のこと、声や雰囲気が変わった「○thアニバーサリー」も本来やるべきではありませんよね。

とか言いつつ好きなバンドのリレコは買ってしまうんですが

>エメッソンさん

音楽、特にバンドでやる音楽にはケミストリーとかマジックと呼ばれるものが確実にありますからね…。
しかもそれは同じメンバーであれば必ず生まれるというものでもなく、ある瞬間に宿るものだったりもするので、マジックによって生まれた曲のセルフカバーはなかなか難しいですね。

とはいえ

> とか言いつつ好きなバンドのリレコは買ってしまうんですが

という人がいるからバンドとしては(あるいはレコード会社は)ついやりたくなってしまうのでしょうけれども(苦笑)。

タイトル

ルッピ、白蛇に加入しましたね。デビカバってメンバーの課外活動には厳しそうなので白蛇に専念する事になるのでしょうか。

>お名前さん

現在のWHITESNAKEの活動ってそこまで活発でもなく、すごく儲かっているという規模でもないと思うのでそこまで拘束できるんですかねえ…?

WHITESNAKEのためにSECRET SPHEREの活動が止まる、あるいはルッピが脱退する、みたいな結末にならないといいのですが…。

SECRET SPHERE 再録

ただいまコーヒータイム。adoreさんは仕事続けてください(笑)。

個人的には反対で 上手い=良い の感覚の持ち主ですね。
基本的に上手くて、それから個性を発揮してくれ、というのが私の感覚ですね。
贅沢な感覚かもしれませんが。

クラシックをある程度聞き慣れている私からすればシンフォ・アレンジは良いように思えました。
ただ、オリジナル盤も良かったことは確かです。まだメロスピを追求していた頃の若造だったので、2001年当時は衝撃を受けましたね。

>ストラディキャスターさん

上手いのは当然で、その上で個性をというのは、概念としては私もそう思います。
しかしメタルのような参加人口の少ないマイナーな音楽ジャンルでそこまで求めるのは現実的には無理がありますし、実際の所「下手なのになぜか魅力を感じる」というのが人間の感性の神秘だったりするので、それはそれで実際に感じている感情を否定するのもアレかなと。

シンフォ・アレンジはある意味今回の方が洗練されていますね。
ただ、オリジナルは洗練されていない、それこそ下品なまでのド派手さだったのが魅力だったのです(笑)。

タイトル

リレコーディングについては、レコード会社の思惑ですよ、
日本のレコード会社の提案です、確か、
下手な新譜より売れるし、バンド側にも負担が大きくなく、
短期的にはいい商売なんでしょう

あとは、なんとなく、迷走気味のバンドに
「よかった頃の持ち味を見直して欲しい」みたいな老婆心もあるのかもしれません
あとは
ライブでの完全再現
の発想とも相通じるのかなと

タイトル

ソナタとかヒブリアとか、最近の企画リレコーディングについては、レコード会社の思惑ですよ、
日本のレコード会社の提案です、確か、
下手な新譜より売れるし、バンド側にも負担が大きくなく、
短期的にはいい商売なんでしょう

あとは、なんとなく、迷走気味のバンドに
「よかった頃の持ち味を見直して欲しい」みたいな老婆心もあるのかもしれません
あとは
ライブでの完全再現
の発想とも相通じるのかなと

>通りすがりさん

CAIN'S OFFERINGなんかもAVALONの企画ですし、このCDが売れないご時世に少しでも売れそうな「商品」を作ろうと彼らも必死なのでしょう。

リメイクについては残念ながらどのバンドも裏目に出ている感が否めませんが…。

おっしゃる通り、その後の作品作りにおいて初心を取り戻してくれるならそれもまた良し、なのかもしれませんが。

タイトル

こんばんは。
お久しぶりにお邪魔したらPurpleAlbum記事にMicheleLuppiさんのことが書いてあったので遡ってこの記事を見つけました。空気を読まず今更なコメントで御免なさい。

自分はLuppiさんがVoになって初めてSecretSphereを聴いて、それからそれ以前のアルバムを聴いた、皆様とは逆のタイプなのですが、そういう暦の浅いシロウトの感想を少しばかり。

個人的に今回のアルバムは7thのようなモダンな雰囲気ではなく、バンドサウンド的要素が少ないのが残念ですが、Luppiさんの複雑なコーラスワークは面白いと思いました。
その後にオリジナルを聴いたのですが、これはこれで皆様が絶賛されるわけもわかります。特にadoreさんのおっしゃるRoberto"RAMON"Messinaさんの声質については確かに繊細で独特ですね。また、LuppiさんよりRoberto Tirantiさんの声質のほうが2ndアルバムの雰囲気が合っているというのには同感です(自分はLabyrinthは特に好きではなかったですが、APDはとても好きです)。ただ・・・雰囲気はありますが、聴いていて少々危なっかしいと思ったり、歌い方の変化が少なくコーラスが合唱なのが多いとかは気になりました。どちらが自分の好みかというと、やはりLuppiさんです。
シンフォニックアレンジについては自分も元はクラシックを聴いていたこともあり、今回の方が洗練された感じで好きです。2ndのKeyの派手な感じが好きといわれるのもわかりますが。

自分が一番感じるのは、Luppiさんの歌メロのセンスよりRoberto"RAMON"Messinaさんの歌メロのセンスがよいのでは、ということです(笑)。結局全てのSecretSphereのアルバムを聴いたのですが(そしてLuppiさんの歌メロはほとんど聴いていますが・・・捻りが少ないというか、素直すぎるというか)・・・Luppiさんは人の書いたよいメロディをすばらしく上手に歌ってくれるSingerなのだと思います。
そういう意味ではWhitesnakeは向いているかもしれません、ご本人もすごく楽しそうですし(笑)。
・・・まぁSecretSphereの方に影響が出ないわけはないと思いますので、1月のライヴに参戦できて本当によかったと思います。

長文失礼いたしました。





>killing touchさん

やっぱり「本格派」の方は今回のシンフォ・アレンジの方が洗練されていると感じるのですね。
まあ、オリジナルは過剰で抑制が効いていないですからね(だがそれがいい)。

歌唱者としてはミケーレ・ルッピが卓越していることは異論ありませんが、おっしゃる通り彼の作る歌メロはいささか素直すぎるというのは同感ですね(笑)。それはVISION DIVINEやSECRET SPHEREよりはMichele Luppi's Heavenを聴いたときに感じましたが。

ミケーレ・ルッピのいるWHITESNAKEというのはちょっと興味があり、来日公演に行くかどうか迷っています。

タイトル

亀コメントにわざわざレスをいただきましてありがとうございます。

adoreさんの好みの声質というのは基本自分も好きだと思います。IcedEarthのVoについての意見は全く同じでしたし(笑)。Messinaさんについてはやはりもう少し声量が欲しいかな、と。メタルのヴォーカルはハードロックとは違って「味わい」とか「個性」よりも何らかの「強さ」「緊張感」が必要な部分があると思うので、それが少し足りないかな…と個人的には思います。

WhitesnakeではDavidさんが「今回のライヴは最高のヴォーカルワークのメンバーだ」といった趣旨のことをおっしゃっていたそうなので、Micheleさんヴォーカルには期待が持てそうです。ライヴ盤作ってくれると嬉しいのですが…
2013年のWhitesnakeはチケットを取るのが大変だった…という話も聞きましたのでなんとか頑張ってみようと思っています。

それでは、お邪魔いたしました。

>killing touchさん

ロベルト・メッシーナはまあB級で、メタル系のヴォーカリストとしては「弱い」と言われても仕方ないと思います。
ただ、私はヨラン・エドマンやティモ・コティペルトなど、細めで、声質自体に哀愁があるシンガーが好みなんですよね。ICED EARTHのマシュー・バーロウも歌声に哀愁があって好きでした。

WHITESNAKE、無事チケットが取れるといいですね。
LOUD PARKと時期が被っているので多少競争率が下がるかも…と思いつつ、コアなファン層はLOUD PARKに行かない層のような気もしますし。

今更でごめんなさいSecretSphereの情報です。

どちらに書いてよいかわからなかったのでこちらへ。
Secret Sphereが2015/06/18にいくつかのバンドとライヴを行いました。
KLOGR + Secret Sphere + Hell In The Club

当然Michele Luppi不在なので、ゲストVoを招きました
そのなかでラモン・メッシーナさんもいらっしゃいました
音質は悪いですが
https://www.youtube.com/watch?v=4Z1alSWHh0E
その他にはElvenkingのVoの方など4名くらいいらしたそうです。

お知らせまで。

>killing touchさん

普通にHR/HM関連のニュースサイトを観ているだけでは入手できない情報をありがとうございます。
当然と言えば当然ですが、やはりルッピはSECRET SPHEREの活動を優先はできないのですね…。

とりあえずラモンとの仲が悪くなったわけではないことがわかって安心しました。