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GIOELI-CASTRONOVO / SET THE WORLD ON FIRE

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HARDLINEやAXEL RUDI PELLのヴォーカリストとして知られるジョニー・ジョエリと、かつてBAD ENGLISHやJOURNEYでプレイし、現在は先日来日したばかりのTHE DEAD DAISIESやREVOLUTION SAINTSで活躍するドラマーにして優れたヴォーカリストでもあるディーン・カストロノヴォによるプロジェクトのデビュー・アルバム。

ALLEN-LANDE、KISKE-SOMERVILLE、KIMBALL-JAMISON、LIONE-CONTIといった、これまで数多く送り出されてきた「ヴォーカリスト・デュオ企画」同様、『Frontiers Music』からのリリースである。まあ、現在HARDLINEもREVOLUTION SAINTSも同レーベル所属なので、それは当然といえば当然か。

二人の接点はかつて1992年にリリースされたHARDLINEのデビュー・アルバムでディーン・カストロノヴォがドラムをプレイしていたというほぼその一点。

なんかもっと話題性のありそうな組み合わせも作れそうなのに、そういうマニアしかわからない接点を突いてくるあたり、やはりマニア向けの商売ということなのか、『Frontiers Music』のオーナーであるセラフィノ・ペルジーノ氏が純粋にこの組み合わせにメロディアス・ハードを歌わせたい、と思ったのかもしれない。

ちなみに2人のバックは、ドラムはディーン・カストロノヴォ自身がプレイしているのは当然として(?)、他パートは『Frontiers Music』のお膝元であるイタリアの敏腕ミュージシャンが迎えられている(本作のプロデューサーでもあるKeyのアレッサンド・デル・ヴェッキオを除くと、日本ではほぼ無名な人たちだが)。

先行して公開されていた#2 “Through”、および#1 "Set The World On Fire"の出来が素晴らしかったので期待していたが、その期待にバッチリ応える高品質のメロディアス・ハード・ロック作品に仕上がっている。

ディーン・カストロノヴォというと、往年のロック・ファンにはBAD ENGLISHやJOURNEYなどのドラマーという印象が強いわけだが、そこに生まれる期待にもバッチリ応えるであろう、極上の産業ロック・アルバムである。

力強さと叙情性、アメリカンな要素とヨーロピアンな要素が絶妙にブレンドされた楽曲群は、天才アレッサンド・デル・ヴェッキオを中心に、『Frontiers Music』お抱えのミュージシャン/ソングライターたちによって作られており、その仕上がりは職人の技と呼ぶほかない完成度の高さ。アップテンポからバラードまで、当然ながら捨て曲はない。

腕利きとはいえ無名のミュージシャン中心の演奏陣、12曲収録とはいえ、うち2曲はカヴァー(#6 “Need You Now”はアメリカの大人気カントリー・グループ、LADY ANTEBELLUMによる2009年の全米大ヒット曲、#12”Let Me Out”はオーストラリアの人気ポップ・ロック・デュオ、THE VERONICASがオリジナル)、そして全く購買意欲を刺激しない、オッサン二人がそのまま映った地味なアルバム・ジャケット(苦笑)と、微妙に「力が入っていない商品」っぽさもあるのだが、そのカヴァー曲(特に前者)も素晴らしかったりするし、音楽のクオリティはこのレーベルの平均点を軽くクリアしている。

これは産業ロック系メロディアス・ハード(要するにJOURNEYの音)のファンであれば必聴です。今年リリースされたメロハー系のアルバムでは個人的に一番ツボかも。まあ、今年はこの後いくつか期待できるメロハー系のアルバムが控えていますが…。【87点】





POWERWOLF / THE SACRAMENT OF SIN

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ドイツの大人気パワー・メタル・バンド、POWERWOLFの、ライブ作品『THE METAL MASS LIVE』(2016)を挟んでリリースされた、スタジオ・アルバムとしては前作『BLESSED & POSSESED』(2015)以来、約3年ぶりとなるフル・アルバム。

彼らのこれまでの作品は全てフレドリック・ノルドストロームがプロデュースしてきていたが、本作では当代随一の売れっ子と言っても過言ではないだろうイェンス・ボグレンをプロデュースに迎えて制作されている。

とはいえ、これまでの音楽性に大きな変化はなく、言われてみれば心持ちサウンドがファットかつパワフルになったかな…? くらいの印象はあるものの、基本的には既に確立されたPOWERWOLFの世界が展開されている。

荘厳にして勇壮、それでいてキャッチーなパワー・メタル・サウンドのクオリティは盤石の安定感で、色物風のイメージとは裏腹に、彼らのソングライティング能力の高さは間違いなくEDGUY以来の才能と言えるだろう。

前作『BLESSED & POSSESED』のオマケとして(というには充実し過ぎた内容だったが)カヴァー・アルバム『METALLUM NOSTURM』を制作したことが、本作におけるソングライティングのバラエティにつながったそうで、極めて明確な「バンドの世界」を持ち、楽曲の長さも3~4分台とコンパクトに統一されているにもかかわらず、バンド初のバラードを収録しているという事実に端的に表れている通り、アルバムの起伏やメリハリは過去最高。

ジャケットのアートワークを見た時点で「これは傑作だろうな」と予感していたが、その予感を裏切らない、非の打ち所がないメロディック・パワー・メタルの秀作であり、本国ドイツでは再びナショナル・チャートのNo.1に輝いたというのも納得である。

ただ、ここまで絶賛しておいてナンですが、このバンドが日本でどこまで人気が出るかというと、個人的にはやや疑問がありまして。

まず、このバンドの魅力の大きなパートを占めている(はずの)「世界観」が、非キリスト教文化圏の人間には今一つピンと来ないこと。これはゴシック・メタル系のバンドが日本で人気が出ないのに通じる話ですね。欧米では大人気のGHOSTが日本ではサッパリ、なのもこの辺の事情でしょう。

あと、日本人って重厚で濃厚なものより、あっさりしてスッキリしたものの方が好きという人の方が多いと思うんですよ。音楽に限らず食べ物の好みとか色使いのセンス、極論すればどんなルックスの異性に魅力を感じるかという話にも通じるものがあると思うんですが、BLIND GUARDIANやRHAPSODY OF FIREあたりが欧州における評価ほどに日本で人気が出ないのは、要は「濃すぎる」のではないかという仮説ですが、このバンドにもその傾向があるのではないかと。

そして、これは私の勝手な印象ですが、日本の正統派/メロディック・メタルのファンというのは、なんだかんだ言って「ロック・スターっぽいヴォーカルと、ギター・ヒーローっぽいギタリストがいるバンド」が好きなんだと思うんですよね。

それは必ずしもヴォーカルとギターがイケメンである、ということではなく、バンドにおける存在感というかキャラ立ちの意味で、なかなか万人に理解してもらうことは難しい感覚なのですが、日本で売れたメロディック・パワー・メタル・バンドの例でいうと、HELLOWEENのマイケル・キスクとカイ・ハンセン、ANGRAのアンドレ・マトスとキコ・ルーレイロ、SONATA ARCHTICAのトニー・カッコとヤニ・リマタイネン、みたいな組み合わせは「わかりやすかった」のだと思います。

日本ではIN FLAMESよりARCH ENEMYの方が人気が高いというのも、そういう「メンバーのキャラ」の問題が結構大きいのではないかと思ってます。

そういう意味でいうと、POWERWOLFのメンバーの出で立ちというかキャラクターは、日本のメロディック・パワー・メタル・ファンの憧れを刺激しない、平たく言えばカッコいいと思われないのではないかと。

そして、その問題はPOWERWOLFと同じく欧州で大人気のSABATONにも共有されるものだと思います。いや、問題といってもバンド側の問題ではなく、日本のファンの嗜好の問題なのですが。

とはいえ、国民性の違いで受け入れられない商品というのは別に音楽に限らずあらゆるカテゴリーで存在するので、別におかしな話ではなく、「欧米で評価されているものなんだから日本人も評価すべき」という言説の方がむしろ不自然かつ不健全です。

欧米で売れているものが売れない日本はグローバル化してない後進国だ、みたいな意見は、日本人の独自性、日本の文化環境、そういう嗜好を育んできた歴史や風土を否定するファシスト的な、最もグローバル感覚から遠いものでしょう。

話がものすごく逸れたので強引に本筋に戻すと、POWERWOLFの音楽というのは必ずしも日本人好みというわけではないかもしれませんが、メロディック・パワー・メタルとしての完成度は非常に高いので、その手の音楽が好きだという自覚がある人はぜひ一度トライしていただきたいな、ということです。

なお、本作の限定盤にはボーナス・ディスクとして、EPICAやHEAVEN SHALL BURN、AMARANTHEやELUVEITIEといったバンドがPOWERWOLFの過去の名曲をカヴァーした音源が10曲収められた「逆カヴァー・アルバム」、『COMMUNIO LUPORUM』が付属しています。

こうして他バンドがカヴァーした音源を聴くと、その世界観ゆえに特別なものに響く彼らの楽曲が、普遍的なメロディック・メタルとして完成度が高いものであることがよく理解できるという意味で良い企画といえるでしょう。オマケとしては今回も非常に豪華なので、皆さん通常版ではなく限定盤を買いましょう(ワードレコーズの回し者ではありません)。【88点】





ついでにボーナス・ディスク収録のEPICAによる「Sacred & Wild」のカヴァーのリリック・ビデオもご紹介。


FROZEN CROWN / THE FALLEN KING

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先日のLIONE-CONTIに続き、半年前にリリースされたアルバムをレビューします。

ぶっちゃけ、今年の1月から3月の前半くらいまで、あんまり熱心にメタル聴いてなかったんですよね。他のことにハマってたこともありまして。

私は飽きっぽい方ではありませんが(このサイトが2004年から続いていることでそれは証明されているかと思います)、そんな私でもさすがにモチベーションの波はあるわけで。

その後RIOTやHELLOWEENの来日公演、そしてTHOUSAND EYESのアルバムの素晴らしさで一気に再びメタル魂に火が点いて今日に至っているわけですが、火が小さくなっていた時期にリリースされ、なんとなくレビューせずにいたアルバムの中から、「これはレビューしておきたい!」と思ったものを今取り上げている、という次第です。

以上、お読みの方にとってはどうでもいい話でした。以下本題。

2015年にデビューし、『BURRN!』誌で高評価を得たイタリアのハード・ロック・トリオ、BE THE WOLFの中心人物であるフェデリコ・モンデッリ(G, Vo, Key)による別プロジェクトのデビュー・アルバム。

このバンドでは、BE THE WOLFでは表現しきれない自身のルーツのひとつである初期SONATA ARCTICA、NIGHTWISH、CHILDREN OF BODOMといったバンドの影響を表現することを目的にしているという。

このサイト/ブログを長いこと読んでいただいている方であればご存知の通り、その辺のサウンドは私の大好物。BE THE WOLFに対しては「悪くないね」くらいの印象しかなかった私ですが、そう聴くとチェックせずにいられない。

そしてYouTubeに上がっていた#3「King」のMVを観て悶絶、これは完全に2000年代初頭のフィンランドの音(というにはちょっとKeyのキラキラ度は控えめだが/笑)。1つの国に音楽の神の加護が集中していた時期の眩いサウンドだ。

フェデリコ、『BURRN!』誌のコラムでX JAPANへの熱い愛を語っていた時点でいい奴だとは思っていましたが、本作を聴いて彼を心の兄弟に(勝手に)認定しました。

楽曲パーツ的には結構モロにSONATA ARCTICAだったり、CHILDREN OF BODOMだったり、NIGHTWISHだったりするわけですが、それがひとつのバンドの音として違和感なく収まっているあたり、やはりあの時期のフィンランドのメタル・サウンドというのは根っこが同じだったんだな、と感じさせられます。

フェデリコも歌っている(主に時々出てくるデス声担当)ものの、ゴシック/ドゥーム・メタル・バンド、ASHES YOU LEAVEのシンガーでもあるメインのヴォーカルは女性で、なかなかの別嬪さん。

歌声も女性にしては良い意味で甘さ控えめで、パワー・メタルを歌うのに相応しい芯のある声である。

ついでにツイン・ギターの片割れも女性で、しかも黒人(イタリア人とキューバ人のハーフだそうな)、しかも左利き、そしてなんと本作収録時点で17歳という若さ。このタリア・ベラゼッカ嬢がまたスタイル抜群かつとってもチャーミングで、こんな娘がこういう音楽をプレイしているというだけでこのバンドが特別な存在に見えてくる。

曲が全体的にコンパクトで、ややあっさりしている感が無きにしも非ずだが、それは聴きやすさとトレードオフの関係なので好みの問題だろう。

とにかくこのサイト/ブログの読者で、私と感性が似通っていると思っている方にはぜひ聴いてもらいたい、メロディック・パワー・メタル・ファンが今年必ず聴くべきアルバムの1枚だ(またか)。今年のブライテスト・ホープほぼ確定。【87点】

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LIONE-CONTI / LIONE-CONTI

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前エントリーのTHE NIGHTSに続いて、半年前に出たアルバムを今更レビュー。

本作はファビオ・リオーネ(RHAPSODY OF FIRE, VISION DIVINE, ANGRA)とアレッサンドロ・コンティ(TRICK OR TREAT, LUCA TURILLI'S RHAPSODY)によるシンガー共演プロジェクト作品。古臭い言い方をすれば、「デュエット・アルバム」(笑/もっとも常にデュエットしているわけではないが)。

この手の企画モノは当然というか『FRONTIERS MUSIC』によるもので、ラッセル・アレン(SYMPHONY X)とヨルン・ランデ(JORN他)によるALLEN-LANDE、マイケル・キスク(HELLOWEEN, UNISONIC)とアマンダ・サマーヴィルによるKISKE-SOMERVILLE、ボビー・キンボール(TOTO)とジミ・ジェイミソン(SURVIVOR)によるKIMBALL-JAMISONなどの流れにあるもの。

アルバムのアートワークはなんだかポケモンみたいだが(?)、ALLEN-LANDEにもゾイドみたいなアートワーク(?)があったので、こういう「対決」を主題にしたテーマの絵というのは往々にして少年向けコンテンツ的になってしまうということなのだろう。

もっとも、ファビオ・リオーネとアレッサンドロ・コンティでは「番長と舎弟」くらいの格の差があるので、こういう「対等の対決」みたいな構図が二人の関係性を的確に表現しているとは思えないが…。

いずれにせよ、ソロ名義のアルバムだと本人のこだわりが出て作りにくいが、こういう企画モノの形であればちょっとした小遣い稼ぎ気分で参加してくれる、ということを『FRONTIERS MUSIC』のオーナーであるセラフィノ・ペルジーノ氏はこれまでのビジネスから学んでいるのだろう。

しかもソロだとその一人のファンしか買わないが、ダブルネームなら二人のファンが買ってくれて売上も伸びる、となればビジネスとしては意外においしいのかもしれない。

もちろん、ビジネスとはいえ、クオリティに手抜きはないからこそ『FRONTIERS MUSIC』はここまで拡大したわけで、DGMのシモーネ・ムラローニ(G)をプロデューサーとして制作の中心に迎えた本作も、楽曲のクオリティ、演奏、サウンド・プロダクションまで(もちろん歌唱も)、ケチをつける余地が見当たらない。

ファビオ・リオーネとアレッサンドロ・コンティという組み合わせが「RHAPSODYつながり(あるいはルカ・トゥリッリつながり?)」で企画されたことは想像に難くないが、本作で展開されているサウンドは、あそこまで大仰なシンフォニック・メタルにはなっておらず、より広義のメロディック・パワー・メタルが展開されている。

聴く前はてっきりDGMの曲を二人のシンガーが歌う、みたいなことになるのかと思っていたが、シモーネ自身がプレイしているギター・パートにこそDGMっぽさはあるが、DGMのようなプログレッシヴ・メタル的要素は薄く、ストレートなメロディック・パワー・メタルに徹しているのが私好み。

『BURRN!』誌では「…2人の個性がぼやける。それぞれのシンガーのどこから魅力を引き出そうとしたのか、これじゃわからないよ」というレビューと共に77点という、同誌においては「落第点」ともいえる点数を大野氏に頂戴していたが、あえて言おう、本作はメロディック・パワー・メタル・ファンが今年必ず聴くべきアルバムの1枚だ。

まず、この手の音楽における歌唱とは楽器のひとつのようなものであって、力量以上に個性が問われることはない。個性的なヘタウマ・シンガーに歌われるくらいならロブ・ハルフォードやマイケル・キスクのクローンみたいなシンガーに歌って欲しい、というのがこのジャンルのファンにおける多数派意見と思われる。少なくとも私はそうだ。

その点、ファビオとアレッサンドロの2人とも力量に申し分はなく、声質も結構違うので聴き間違えることもない。そして、シモーネ・ムラローニが何も考えずにアミダくじや好き嫌いでヴォーカル・パートを配分したとは考えにくく、二人のシンガーの得意な声域や、楽理についてシモーネほど詳しいはずもない大野氏がその点にケチをつけるというのは、いち雑誌編集者の言としてはいささか不遜に過ぎるのではないだろうか。

とまあ、大野氏批判みたいな文章になってしまったが、彼女のレビューにおける「もう一人入れればドミンゴ、カレーラス、パヴァロッティ並の“3大テノール”になってセールスポイントもはっきりしたのに」というくだりは全く同意見で、イタリアにはまだミケーレ・ルッピ(元VISION DIVINE, 現SECRET SPHERE)やロベルト・ティランティ(LABYRINTH)といった逸材がいるだけに、「メタルの3大テノール」を狙ってほしかったな、と(笑)。

まあ、その辺はもうファンの重複が多すぎて、人数を増やすことで上がる制作コストほどに売上の伸びが期待できない、ということになってしまうのでしょうけど(苦笑)。

とりあえず、本作はメロディック・パワー・メタル・ファンが今年必ず聴くべきアルバムの1枚です(大切なことなので2度言いました)。【86点】


本当はこのMV曲より、疾走感抜群の「Glories」や、KAMELOTファンならニヤリとしてしまう「Misbeliever」あたりを聴いてもらいたいですが、オフィシャルな音源は公開されていないので、アンオフィシャルな音源を検索してみてください(笑)。

THE NIGHTS / THE NIGHTS (2017)

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いやいや、最近異常な暑さですね。

家から駅も、会社の最寄り駅から会社も徒歩5分以内、基本的には空調の効いたオフィスの中で働いている私でさえ「正直しんどい」と思っているくらいですから、工事現場とかで働いている人なんて地獄ですよね。

というか、先日の大雨で家を失ってしまった人とか、本当にお気の毒ですとしか言えません。身体はもちろん、心を病むレベルの辛い夏になってしまっているだろうとお察しします(お察しだけしても何も起きないので、とりあえず心ばかりですが募金はしました)。

まあとにかく暑くてですね、こんなサイト/ブログをやっている割に軟弱メタラーな私としてはとてもゴリバリなアツいメタルを聴く気分にならないのですよ。

もちろん「暑い日こそ激辛カレーとか火鍋だろ!」みたいな思想があることは認知しておりますが、私は素直にざるそばとか冷やし中華を食べたいタイプです。

こんな暑い日々に聴くことができるHR/HMといえば、やはりHR/HM界における一服の清涼剤(?)、北欧メロディアス・ハードです。

そんなわけで、ちょうど1年前の2017年7月にリリースされたこのアルバムを今さら取り上げます。

このTHE NIGHTSは、サミ・ハイド(Vo)とイルッカ・ヴィルタネン(G)によって2015年に結成されたフィンランドのバンド(プロジェクト?)。

ベースはハッリ・コッコネン、ドラムはヤン=エリック・イーヴァリという人がクレジットされているが、本作のソングライティングの中心となっているのはサミとイルッカの二人のようだ。

両名とも新人ではなく、サミはセッション・シンガーとして国際的(といっても欧州限定のようだが)に活躍し、ソングライターとしてTHE MAGNIFICENTに"If It Takes All Night"や "Lost" 、 "Drive"といった楽曲を提供している実績もある。

イルッカ・ヴィルタネン(G)は母国フィンランドの人気バンドであり、来日経験もあるグラム・メタル・バンド、RECKLESS LOVEのプロデューサーとして知られ、彼ら以外にもフィンランドのロック・バンドやポップ・アクトの作品に数多く関わった経験を持つ、いわゆる裏方的な人のようだ。

そういうプロフェッショナルな人が中心となっているだけあって、楽曲のクオリティは非常に高い。再生ボタンを押して20秒ちょっとで「これは自分の琴線に触れる音楽だ」と予感し、それは見事に的中しました。

もはやアイドル系ポップ・アクトに提供できるんじゃないか、というほどに甘くキャッチーなメロディ、それを何とかHR/HMというジャンルに持っていく、2000年代にフィンランドで一世を風靡した「ノリノリ系ゴシック・メタル」に通じる、割とヘヴィでモダンなギター・ワークのマッチングは、80年代ばりのゴージャスなキーボード・サウンドに彩られているにもかかわらず、決して懐古主義なAOR系産業ロックにならない、ありそうでなかった個性的な音。

まあ、個人的には懐古主義な80年代AORでも全然構わないタイプなので、このバンドのモダンな部分についてはそれほど評価ポイントではないのですが、とにかく豊潤なメロディとハーモニー、Key奏者はいないにもかかわらずギターと同等にフィーチュアされたキラキラ系キーボード・サウンドがとにかくツボです。

曲展開が結構ダイナミックで、時にドラマティックというかシアトリカルな印象さえ与えるあたりも、しばしば単なるBGMになりがちなAOR系メロハーとは一線を画している。

ヴォーカルのやや甘ったるい歌声は好き嫌いが分かれるかもしれないが、このサウンドであれば、変にハスキーでパワフルなヴォーカリストを起用するよりは相応しいだろう。

残念なのは、このGoogleが世界の情報を支配するご時世に、およそ検索しようのないバンド名とアルバム・タイトルでデビューしてしまったこと(まあ、そもそもこの人たち公式サイトさえ持っていませんが…)。

今これからデビューするなら、KISSだって「KISS」なんてバンド名はつけませんぜ、きっと。

ただでさえ裏方系のミュージシャンによるプロジェクトなんて地味な存在になりがちなのに、このバンド名、このアートワークじゃ、本来興味を引かれるはずの人たちでさえスルーしてしまいそう(実際私も数か月前までスルーしていましたし)。

このブログでは折に触れ私の北欧メタル愛を語ってきたので、長年読者でいてくださっている方には同好の士も多いと信じていますが、そういう方で本作をスルーしてしまっていた人にはぜひ一度チェックしていただきたいバンドです。【87点】