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AVANTASIA "MOONGLOW" アルバム・レビュー

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EDGUYのトビアス・サメット(Vo)によるメタル・オペラ・プロジェクト、AVANTASIAの通算8作目となるアルバム。ここ前3作はいずれも母国ドイツのチャートで2位にとどまっていたが、本作でついに念願の首位を獲得したそうで、実際その成果に見合う充実した作品に仕上がっている(いや、毎回そのクオリティは有していたのだが)。

毎回注目のゲスト・シンガーは、マイケル・キスク(HELLOWEEN他)、ヨルン・ランデ(JORN他)、ボブ・カトレイ(MAGNUM)、ロニー・アトキンス(PRETTY MAIDS)、エリック・マーティン(MR.BIG)、ジェフ・テイト(元QUEENSRYCEH, 現OPERATION : MINDCRIME)といった既に参加実績のある人たちに加え、今回は新たにハンズィ・キアシュ(BLIND GUARDIAN)、ミレ・ペトロッツァ(KREATOR)といった母国の先輩に加え、キャンディス・ナイト(BLACKMORE’S NIGHT)が迎えられている。

こうして毎回新キャラを迎えられるのも、「準レギュラー」みたいな人がどんどん増えているのも、トビアス・サメットの人柄(ちゃんと納得のいくギャラを払っているのだろう、という部分も含めて)なのだろう。

冒頭1曲目から約10分に及ぶ大作、というのはこれまでにも何度か(3回かな?)やってきた手法なので驚くには値しないが、今回も圧倒的なドラマティックさで聴き手をグイグイ引き込んでくる。

どの曲にもトビアス本人を含め複数のシンガーが参加していることもあってか、全体的にまるでミュージカルのクライマックスかのような盛り上がりがフィーチュアされているのだが、一方ヘヴィでアグレッシヴな要素、メロウで静かなパートが巧みに配されており、長尺の曲が多いにもかかわらずダレることがない。もちろん、マイケル・キスクが歌うクライマックス曲 #10”Requiem For A Dream”を筆頭に、パワー・メタル・ファンが快哉を叫ぶような疾走パートも存在していることは言うまでもない。

基本的には曲展開や曲調など、これまでEDGUYやAVANTASIAで提示されてきたものが繰り返されているのだが、小技レベルではちゃんと新味も加えられていることもあってマンネリ感を感じさせないあたり、やはりトビアス・サメットの才能はやはり底知れないものがある。

特に今回は全体尺、長い曲と短い曲のバランスも良く、非常に良い密度と起伏が実現しており、アルバムとしてのハイライトがちゃんとありつつ、どの曲にもハイライトがあるという、ストーリー性のある音楽作品としての理想形といっていい作品に仕上がっている。

ただ、こういう劇的な音楽ってMEATLOAF然り、TRANS-SIBERIAN ORCHESTRA然り、あんまり日本では受けないんですよね…。日本人はあっさり味が好みなので、1回転調して終わる、くらいがちょうどいいのかもしれません。

とはいえ本作の音楽的普遍性は、個人的には全音楽ファンに聴いてもらいたいレベルだと思うし(『グレイテスト・ショーマン』のサントラが気に入るような人だったらきっと感じる所があると思うんですよね)、さすがにそれは無理だとしても、メロディックなHR/HMが好きな人には絶対聴いてほしい傑作だと思います。【92点】







WITHIN TEMPTATION “RESIST”

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もはやオランダを代表するバンドの枠を軽々と飛び越え、欧州を代表するメタル・バンドとなったWITHIN TEMPTATIONの通算7枚目のアルバム。

基本的には前作”HYDRA”の路線を踏襲する、ユニバーサルなスケール感に満ちた作風で、もはやそのサウンドからはハリウッド大作映画めいた壮大ささえ漂っている。

彼らの出自であるゴシック・メタルというジャンルは、「ゴシック」というワード通り、中世ヨーロッパをイメージさせるサウンドであり、彼らも初期にはその世界観を背負っていたのだが、今の彼らが描き出しているのは、歴史の全てを背負った「未来のサウンド」なのではないかとさえ感じられる。

もはやこの圧倒的な音楽世界が「メタル」という枠の中に収まっているのかどうかすら怪しいが、このクオリティを前にして「メタルか否か」なんて細かな難癖をつけることは難しいだろう。なぜならメタル・ファンとて、メタル・ファンである以前に音楽ファンであるはずなのだから。

もし本作に何らかのケチをつけることができるとしたら、それは単純に前作の比較においてのみで、ジャコビー・ジャディックス(PAPA ROACH)、アンダース・フリーデン(IN FLAMES)、ジャスパー・ステファーリンク(ベルギーの人気シンガー)という顔触れが、前作のゲスト陣ほどに意外性がなく、人によっては小粒に映ること、”Paradise”のような目玉となる楽曲に欠けることなどは、本作が前作に比べて「弱い」と評される原因となるかもしれない。

しかし私はとりあえず本作を聴いて前作に勝るとも劣らぬ感動を得たし、自分がメタルを好きな理由のひとつが「スケールが大きいから」だということをあらためて思い出させられた。

そう、私はホレたハレたといった卑近なテーマの歌ではなく、まだ見たことのない世界を描き出すような音楽を聴きたいのだ。そしてシャロン・デン・アデルの普遍的な魅力に満ちた美しい歌声は、新たな世界を創造する女神の歌声そのものである。【88点】







Syu “VORVADOS”

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GALNERYUSのギタリストでありメイン・コンポーザーであるSyuの通算3作目となるソロ・アルバム。これまでリリースしてきたソロ・アルバムはカヴァー・アルバムにインスト・アルバムと、ソロでやる意味が見えやすいものだったが、本作は多彩なゲストを迎えての歌モノということで、個人的にはGALNERYUSとどのように差別化しているのか、という点に注目して聴いてみた。

結論から言うとGALNERYUSではやれないタイプの楽曲というのはそう多くなかったのだが、小野正利とは異なるタイプのヴォーカリストが歌うことで、GALNERYUSとはまた異なる魅力が生まれているのも事実で、作曲者であるSyu当人としては小野正利に歌わせるよりも他のシンガーが歌った方が魅力的になりそうな曲をストックしていたのかもしれない。

AKANE LIV (LIV MOON)とDOUGEN (THOUSAND EYES)という「美女と野獣」コンビネーションがフィーチュアされた#6 “Chaotic Reality”などはGALNERYUSではやれないタイプの楽曲の最たるものだし、個人的に一番気に入った#5 ”Euphoria”などは団長(NoGoD)が歌えばこそ、このクセになりそうな艶が醸し出されていると言えよう。

一方で、オープニングとラストにはインスト曲を配し、最初のヴォーカル曲である#2 “REASON”と、最後のヴォーカル曲である#10 “未完成の翼” は最も「GALNERYUSらしい曲」にしているあたり、ファンの求めるものを与えようというSyuの意志が感じられる。

個人的には、せっかくこういうアルバムを作るのであれば、もう少し意外性のあるゲストを迎えてもよかったのではないかという気もするが、Syuのように芸風もビジョンも固まっているアーティストであれば、仕上がりが読めるメンバーで固めるという選択はむしろ妥当なものであろうとも思う。【87点】




STARBREAKER "DYSPHORIA"

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トニー・ハーネル(Vo: 元TNT)とマグナス・カールソン(G: 元LAST TRIBE, ALLEN-LANDE他、現PRIMAL FEAR)によるプロジェクトの、前作"LOVE'S DYING WISH"(2008)以来、約10年ぶりとなる再結成(?)アルバム。

ドラマーが前2作でプレイしていたジョン・マカルーソから、マグナス・カールソンのソロ・プロジェクトでもプレイしていたAnders Köllerforsなる人物に交代している。

とはいえ、アルバムのジャケットにトニー・ハーネルとマグナス・カールソンの名前だけが表記されているので、このプロジェクトは実質的にトニー・ハーネルとマグナス・カールソンのデュオなのでしょう。

デビュー・アルバムではちょっとプログレッシブかつモダンなメロディックHR/HMを、前作ではややゴシカルな感触のヘヴィ・ロックをプレイしていたが、本作では過去最高に正統的なヘヴィ・メタルの方向性に進んでおり、トニー・ハーネルがこういう音楽を好んでいるとは思っていなかったので、#1"Pure Evil"の威勢のいいドラムからパワー・メタル然としたギター・リフ、トニー・ハーネルのハイトーン・スクリームという出だしにちょっとビックリ。

その後もマグナス・カールソンらしいメロディ・センスが活きたメロディアス・ハード的なセンスの曲から、どちらかというとトニー・ハーネルのセンスによるものと思われるモダンなタッチの楽曲まで多少の振り幅はありつつ、メロディックなメタルのファンであれば楽しめる楽曲が全編に渡って展開されている。

これまで『Frontiers Music』からリリースされてきた、マグナス・カールソン主導のプロジェクトは一歩間違うと「歌い手が違うだけ」状態になってしまいがちでしたが、このプロジェクトがそうならないのはやはりトニー・ハーネルが単なる歌い手に徹するようなタイプのシンガーではないからなのでしょう。今まで『BURRN!』誌などで目にしてきたインタビューを読むと、結構我の強そうな人ですからね(笑)。

アメリカ人であるトニー・ハーネルのセンスが、コテコテ・クサクサにならないこの洗練されたメロディック・メタル・サウンドに昇華されているとしたら、これはケミストリーと呼べるものなのかもしれません。

マグナス・カールソンのソロ・プロジェクトにトニー・ハーネルがゲスト参加している楽曲もそうだったのですが、この二人が組んでバラード系のメロウな楽曲を歌うと絶品なんですよね。

恐らくこのバンドがライブをやることはないという安心感(?)からか、トニー・ハーネルは「まだこんなに声出るんだ?」と驚くほどのハイトーンを随所で披露しており、80年代以来の彼のファンには溜飲が下がることでしょう。

アルバムのラストはJUDAS PRIESTの"SIN AFTER SIN"(1977)アルバムに収録されている"Starbreaker"のカヴァー。

やっぱりこのバンド名はこの楽曲から取ったんですかね? その割にはデビュー当時にそういう正統派ヘヴィ・メタルの要素はさほど強くなかったような気がしますが…。

このバンドSTARBREAKERの現代的なセンスを備えた洗練されたメタル・サウンドの後に聴くとこの40年前の楽曲はいささか垢抜けないものに響いてしまいますが、本作の作風を伝えるにあたってJUDAS PRIESTのカヴァーを収録するというアイディアは悪くないのかもしれません。【84点】





AZRAEL / MOONCHILD

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レビューに先んじて年間ベスト的なものに選出してしまったので、傑作であることは前提です(笑)。

恐らく、日本で意識的にメロディック・パワー・メタル・バンドとしてアルバムを出すことに漕ぎつけた初めてのバンドであると思われるAZRAELの、神奈川大学のサークル・バンドとしての結成から数えて25年目となる年にリリースされた通算5作目のフル・アルバム。

私がこのバンドの存在を知ったのは、デビュー・アルバムがリリースされた1997年当時、行きつけだったCDショップで試聴機展開されていたのがきっかけですが、その時の「ついに日本にもこんなバンドが…!」という衝撃は今でも鮮明に覚えています。

デビュー当時の演奏力やサウンド・プロダクションはややアレでしたが、その辺も当時の感覚では親近感につながって、このバンドに対しては常に特別な思い入れを持って見守ってきましたが、前作から8年の年月が経ち、「もう普通のサラリーマンになっちゃったのかな…?」と思い始めていたタイミングでの嬉しいリリース。

前作『DREAM ON』発表後、TACKY(G)とAOI(B)が脱退、本作ではYASU(B/GRAND FINALE)、AKKKI(G/ちびらり)が加入して制作されています。

とはいえ、このバンドの中心はリーダーのTAKE(G)と、ヴォーカルのAKIRAの2名なので、音楽的には何も変わっていない。

デビュー以来の(と言ってもいいですよね?)ファンとしては、まずはこの「変わらなさ」が嬉しい。

変わらないことが良いことか悪いことかというと、それは色々な価値観があると思いますが、こと音楽に関しては人間20代以降大きく嗜好が変わるはずがないと思っています。

にもかかわらず多くのアーティストのサウンド・スタイルが変わるのはビジネス的な意図かマイブーム的な「気分」でしかないと思っており、そういう意味で私の好きなスタイルを貫いてくれるこのバンドには正直さと誠実さを感じます。

そして本作の出来の良さがまた嬉しい。

「宇宙誕生」という超壮大でちょっと中二病なテーマを40歳を超えた(オリジナル・メンバーは超えているはず)いい大人が打ち出してくることもまた個人的には嬉しくなってしまうのですが、新加入のYASU(B)がオーケストラ・アレンジを手掛けたという序曲の#1「Birth Of The Universe」から、スケール感あるサビを持つスピード・チューンのタイトル曲#2の流れで既にこみ上げてくるものがある。

そして続く#3「Surveillance Society」冒頭の、AKIRAさん必殺の超ハイトーン・スクリームでガッツポーズ。これぞAZRAEL節ですよ。ライナーノーツで自らEDGUYの「Babylon」を「参考にした」とネタバレしているのも微笑ましい。

#4「Fly Till The End Of Time」は2005年に発表したEP「MY BLACKEST HEART」収録曲。サウンド・プロダクションの向上もあってオリジナルよりスケール感を大きく増している。

#5「Dream Die Hard」は、2nd『KING OF STEELY NATION』収録の「Hold On To The Young Love」以来(いや、デビュー作の「Calling You」以来かな?)、AZRAELの芸風のひとつとなっているホープフルなハード・ポップ・ナンバー。メロパワもメロハーも好き、という私のようなリスナーにとっては、中途半端なミドルテンポの曲をプレイされるくらいなら、こういう曲でアルバムに起伏をつけてくれるのはありがたい。

#6「Fight It Out」は、2011年の東日本大震災を受けて、現在の彼らの所属レーベルである『Black-listed Records』からリリースされたチャリティ・オムニバス・アルバム『METAL BLESS JAPAN』にデモ・バージョンが収録されていた楽曲の「完成版」で、イントロ部分で参考にしたのがSTRATOVARIUSの「Freedom」であることを素直にライナーノーツで明かしているのも微笑ましい(2回目)。

#7「Infinity」は新メンバーYASUによる楽曲で、典型的なAZRAEL節とは異なる、ちょっとプログレッシヴな構成を持った楽曲だが、印象的な歌メロとメロディックなギター・ソロ・パートは私のような古参のAZRAELファンにも容易に受け容れられる魅力がある。

#8「Heaven Or Hell」、これはメロディック・スピード・メタル・ファンにとってはキラーでしょう。速い曲の多い本作の中でも最も速い曲。とはいえただ速いだけでなく絶妙な緩急と起伏があって、だからこそキラーになっている曲と言える。

#9はこれまたメロハーな曲で、ライナーノーツで「哀愁はありつつも、それでいて何か勇気が沸くような楽曲」と形容している通りの力強さがあり、サビも日本人にしか作れないだろうフックが印象的な佳曲。

#10「Legacy Of Tragedy」は新メンバーAKKKIの作曲による哀愁が強調された楽曲で、これまた歌メロ、ギター・ソロ共に日本人ならではの歌謡センスが活きた楽曲で、Keyのスペーシーな音色も楽曲のムードを引き立てている。

#11「Servant Of Steel」は#4「Fly Till The End Of Time」同様、2005年に発表したEP「MY BLACKEST HEART」収録曲。アルバム終盤に相応しい緊張感のある疾走曲で、リメイクにもかかわらずアルバムの流れにピッタリとマッチしている。

ラストを飾る#12「Sun Will Rise」はYASUがリーダーを務めているELENDIRAの楽曲で、まあカヴァーというか、作曲者本人がいるので「AZRAELバージョン」といった感じか。

これまたこのアルバムのために作られた楽曲ではないにもかかわらず、疾走感と希望に満ちたこのアルバムのエンディングにピッタリな素晴らしい曲…と感じるのはオリジナルを未聴だからでしょうか。

前作『DREAM ON』は全体的にマイナー調の哀メロがフィーチュアされた、哀愁派である私には好ましい作風だったはずだが、それまでの作品に比べて今一つ満足できなかったというのが正直な所。

その満足できなかった理由が、本作を聴いて納得できました。

このバンドの持つ最大の魅力は「希望」を感じさせるメロディなのです。Aメロからヴァースまでは哀愁を湛えつつ、サビでは明るい希望をコーラスする、これこそこのバンドの「黄金律」なのだということを、本作のキラー・チューンたちが雄弁に物語っています。

過去に発表された楽曲のリメイクが12曲中3曲と1/4もあることをネガティブに見る人もいるかもしれませんが、いずれの楽曲も本作に完全になじんでおり、過去の音源は決して入手しやすい状況ではない以上、新規のファンにとってはありがたい話でしょう。

私より「ちょっと先輩、ほぼ同世代」なこのバンドが、こうして「いい歳」になって最高のアルバムをリリースしてくれたことが本当に嬉しい。点数はちょっと個人的な思い入れ込みかもしれませんが、メロディックなメタルが好きな人であれば聴いて損はしない、素晴らしいアルバムであることは間違いないと思います。【90点】