LIONVILLE / A WORLD OF FOOLS

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イタリアのメロディアス・ハード/AORプロジェクト、LIONVILLEのサード・アルバム。

これまでは「Avenue Of Allies Music」というマイナー・レーベルからのリリースで、日本盤もルビコン・ミュージックというインディーズでのリリースだったが、近年DGMやSECRET SPHEREなど、自国のバンドと積極的に契約し始めた大手「Frontiers Records」に移籍し、日本盤もメジャーのキングレコードからのリリースとなった。

元々「Frontiers Records」のお抱えソングライターの一人であるアレッサンドロ・デル・ヴェッキオとの縁も深く、「Frontiers Records」所属バンドであるWORK OF ARTのラーズ・サフサンドがヴォーカルを務め、それ以外にも「Frontiers Records」人脈の人たちが多数関わっていただけに、同レーベルに移籍したことについては驚きはない、というかむしろ収まるべき所に収まった、という感さえある。

基本的には中心人物であるステファノ・ライオネッティ(G, Key, Vo)のプロジェクトなので、これまではレコーディングにはアレッサンドロ・デル・ヴェッキオやブルース・ガイチといった、その筋では著名なサウンド・クリエイターのサポートを受けているケースが目立ったが、今回はいわゆるバンド形式でレコーディングが行なわれているようだ。今後はコンスタントなライブ活動なども見込んでいるのかもしれない。

とはいえサウンドについてはこれまでと何の変わりもなく、洗練された上質なAORサウンドが展開されており、これまでの2作を気に入った人であれば安心して身を委ねることができるだろう。

ヴォーカルがWORK OF ARTのラーズ・サフサンドで、基本的な音楽性も通じることから、もちろんWORK OF ARTのファンにもオススメである。

一方で、私のようにWORK OF ARTがきっかけでこのプロジェクトに手を出した人間にとっては、その「WORK OF ARTっぽさ」が不満に通じるというのも皮肉な事実。要するにWORK OF ARTの方が私好みの北欧らしい哀愁が強いし、テクニカルな要素も強めでフックがあるので、WORK OF ARTとの比較においてちょっぴり聴き劣りしてしまうのだ。

ただ、その辺は好みの問題で、LIONVILLEのサウンドの方が明るく洗練され、スムーズで聴きやすい、と感じる人もいることだろう。

まあ、とにかく私はラーズ・サフサンドの「声ファン」で(もし生まれ変わったらこんな声の持ち主になりたい)、この歌声を一人でも多くの人に知ってもらいたくてこのレビューを綴っている次第です。

とりあえず以下に貼っているMVを観て、その歌声に感じるものがあれば、個人的なイチオシ作であるWORK OF ARTの2ndをぜひ聴いてみてください。【83点】

◆本作収録「I Will Wait」のMV


◆本作収録「Bring Me Back Our Love」のMV


BATTLE BEAST / BRINGER OF PAIN

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前作『UNHOLY SAVIOR』発表後、それまで全ての楽曲の作詞・作曲を手掛けてきたアントン・カバネン(G / Vo)がバンド内における人間関係の悪化によって、解雇に近い形で脱退するという衝撃的な事態が勃発。

2015年5月に行なわれた来日公演でアントンに代わってプレイしていた、キーボーディストであるヤンネ・ビョルクロトの弟、ヨーナ・ビョルクロトを正式なメンバーに迎えてリリースされた通算4作目。

そのヤンネ&ヨーナのビョルクロト兄弟を中心に、バンドのメンバー全員が参加する形で行なわれたソングライティングの結果は、拍子抜けするほどに前作の延長線上にあるもので、中心人物の脱退の影響はパッと聴きほとんど感じられない。

ただ、前作時点でだいぶ進行していた「キャッチーさの増加」はある意味さらに進んでいて、デビュー当時に顕著だったACCEPTを彷彿させる「鋼鉄感」が減少の一途をたどっているのはいささか懸念材料。今の所楽曲のクオリティがその辺の不満を上回る満足感を提供してくれてはいるが…。

特に、前作からのシングル曲の中でも最も物議を醸した「Touch In The Night」路線の80年代ダンサブル・ポップ・ナンバー#9「Dancing With The Beast」なんてもはや非メタルの領域。個人的には好きですが、彼らに期待されている「イキのいいメタル・バンド」のイメージをキープする上ではあえてアルバムからは外す、という選択もあったのでは。

個人的にリフといいKeyアレンジといい「ザ・80年代」という感触の#3「King For A Day」、北欧のバンドらしい哀愁がたまらない#4「Beyond The Burning Skies」、勇壮なKeyリフがカッコいい#7「Bustard Son Of Odin」などがお気に入りだが、やはり全体としてみるとリフのエッジやサウンド全体のパワーが減退しているように感じられるのはアントン脱退の影響なのかもしれない。

とはいえ未だ充分にハイクオリティで、むしろ80年代タイプのHR/HMのファンにとってはさらに親しみやすくなったと言えなくもなく、ライブではきっと楽しめそうな雰囲気が漂っているので 来日したらぜひ観に行きたいとは思いますけどね!【85点】

◆本作収録『Bringer Of Pain』のMV


◆本作収録『King For A Day』のMV


◆本作収録『Familiar Hell」のMV




DOLL$BOXX / DOLLS APARTMENT (2012)

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リリース当時はノーチェックで、リリースから1年以上経った中途半端なタイミングで聴いたために、このサイト/ブログでは特に触れてこなかったが、ここ5年ほどの間に出会ったアルバムの中で1、2を争うほど気に入っているアルバム。

このバンドはガールズ・ロック・バンドGacharic Spin と、元LIGHT BRINGER、現Fuki Communeのヴォーカリスト、Fukiによるプロジェクトで、かつてGacharic SpinとLIGHT BRINGERが対バンしたときに知り合い、2012年3月のGacharic Spinに、当時の専任ヴォーカリストが体調を壊してツアーに参加できなくなった際にFukiがサポート・ヴォーカルを務めたことが本プロジェクトの誕生につながったという。

Gacharic Spinの音楽というのはHR/HM的な要素を持ちつつもストレートにHR/HMと呼ぶことは難しい(本人たちもHR/HMというジャンルに括られることは望んでいないだろう)が、その男性顔負けにテクニカルでエネルギッシュな演奏、パフォーマンスはHR/HMファンの耳をも納得させるもので、そこにFukiの強力なヴォーカルが乗ることでマジカルなケミストリーが生まれている。

Fukiは本作リリース当時まだLIGHT BRINGERが活動中だったため、メタルではないものをやろうとしていたようだが、Gacharic Spinのメンバーは自分たちのバンドの音楽よりもストレートにカッコいいロックを作ろうと志向していたようで、結果としてかなりHR/HM寄りのハードで勢いのあるサウンドに仕上がっている。

快活さと哀愁を兼ね備えたメロディックな曲調、そしてFukiの声質もあって、パッと聴きはアニソン風のロックに聴こえるのだが、とにかく演奏が充実、主張しまくっていて、その点が圧倒的に「ロック・バンド」を感じさせる。

私は基本的にストレートなHR/HM系のロックにおいては、ベースにはドライブ感を強調する以上の役割を期待していないのだが、本作の中で聴かれる派手なスラッピングを含む動き回るベース・ラインは、目立ちまくるにもかかわらず単なるスタンド・プレイにならず楽曲の魅力を引き立てており、F チョッパーKOGA(B)のセンスには脱帽である。

そしてとにかく楽曲がいい。個人的な感覚ではLIGHT BRINGERやGacharic Spinのキラー・チューンばかりを集めてフュージョンしたかのような、両者の最良のエッセンスがブレンドされている楽曲ばかりだし、そのひたむきな思いが伝わってくる凛としてどこか切なさを秘めた歌メロはマイ琴線を掻き毟らんばかりである。きっと中高生の頃に出会っていたらナニを覚えたサルのように毎日聴き狂っていたことだろう。

特に1曲目から4曲目までの畳み掛けが凄まじい。この畳み掛けの押しの強さを一本調子と感じる人もいることだろうが、この想いとパッションの奔流とでもいうべきサウンドは成熟してしまったミュージシャンには出せないマジックだ。

インタビュー記事などを読むと制作スケジュールはかなりタイトだったようだが、本作に関して言えば変に煮詰める時間がなかったことがむしろ功を奏しているように思える。

そして今さらなぜこのタイミングで本作を取り上げたかというと、本日渋谷のTSUTAYA O-EASTで「WWフェイス」というDOLL$BOXX とGacharic SpinとFuki Communeの対バンイベントがあるからです。

私としてもぜひ観に行きたいイベントだったのですが、チケットが即完してしまったために行くことはかなわず…。その無念の思いをこの文章に叩きつけた次第です(笑)。

またぜひ近いうちにライブをやってくれることを願ってやみません。

◆本作収録「Loud Twin Stars」のMV


◆本作収録「Take My Chance」のMV


KREATOR / GODS OF VIOLENCE

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2013年のLOUD PARKにおける恐るべきカリズマティックなパフォーマンス、そしてそれによって生み出されたもはや「サークル」とは呼べない、アメーバ状のカオティックなピットが今もなお鮮烈に思い出されるKREATORの通算14作目となる5年ぶりのニュー・アルバム。

WALTARIにも在籍するフィンランド人ギタリスト、サミ・ウリ・シルニヨ加入後のKREATORのアルバムというのはいずれも秀逸なスラッシュ・メタル・アルバムで、しかも作を追うごとに私のようなメロディック・メタルのファンも無視することができないメロディとドラマ性が強化されており、基本的にスラッシュ・メタルのアルバムはめったに取り上げない当ブログでも扱うことにした。

海外でも現在の彼らのスタイルは「スラッシュ・メタル+イエテボリ・スタイル」と形容されており、「イエテボリ・スタイル」というのは要はスウェーデンのイエテボリ出身のIN FLAMESやDARK TRANQUILLITYに代表されるメロディック・デス・メタルのことだが、KREATORらしいソリッドなスラッシュ・サウンドにメロディックなリード・ギターが絡むそのスタイルは、スラッシュ・メタルのファンだけに独占させるにはもったいないものである。

前作「PHANTOM ANTICHRIST」に引き続き、売れっ子プロデューサー、イェンス・ボグレンを迎えて制作された本作は前作以上にドラマ性を強化した作風で、そのドラマ性の強化が決して軟弱さにつながらず、むしろEvilさの強化につながっているあたりが素晴らしい。これぞブルータルなアグレッションとそれを活かすメロディの理想的マリアージュ。

私は良い音楽であれば「メタルらしさ」という観念的なことにはこだわらないし、ましてや「メタルらしさ」と「Evilであること」は特に関係ないと考えているクチだが、本作を聴くと、「このEvilさ…これぞメタルだぜ」などと思ってしまう。

正直、ここまでメロディックになってくると、普通のヴォーカル・メロディを乗っけられるんじゃないの? と思ってしまうが、それはメロデスに「ノーマル・ヴォイスで歌った方がいいんじゃないの?」というのと同じくらい野暮なことだろう。このバンドの最大の個性がミレ・ペトロッツァ(Vo)のアジテーションの如き苛烈なシャウト・ヴォーカルでることは明らかなのだから。

前作「PHANTOM ANTICHRIST」には「Victory Will Come」という年間ベスト・チューン級の名曲があったが、本作のタイトル曲もそれに準ずるカッコよさ。それ以外の楽曲も一部の隙とてなく、本編ラストの「Death Becomes My Light」のドラマティックさといったら、私のようなメロディック・メタル・ファンの琴線に触れまくりである。

SLAYERが「帝王」と呼ばれるなら、KREATORは「邪神」そのもの。当代最強のメタル・バンドとはこのバンドなのではないか、と思わせる傑作である。ドイツのナショナル・チャートではついにNo.1に輝くなど、デビューから30年以上の時を経て、ドイツが生んだ狂気の邪神は遂に至尊の地位へと上り詰めた。【87点】

◆「Gods Of Violence」のMV


◆「Satan Is Real」のMV


◆「Totalitarian Terror」のMV


◆「Fallen Brother」のMV


FIREWIND / IMMORTALS

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2013年のアポロ・パパサナシオ(Vo)脱退後、ADAGIOのケリー・サンダウン・カーペンターをゲスト・シンガーに迎えてライブなどは行なったものの、その後開店休業状態が続いていたFIREWINDの約5年ぶりとなるニュー・アルバム。

所属元であった「Century Media」が2015年に「Sony Music Germany」に買収されたためか、日本盤はソニー・ミュージックからのリリースとなっている。

本作で新たなヴォーカリストとして迎えられたのは、07年のツアー時、家庭の事情で参加できなかったアポロ・パパサナシオに代わってゲスト・シンガーを務めていたへニング・バッセ(元METALLIUM)で、過去にジョイントしたことがあるという意味では順当な人選といえる。

本作の原型は、2009年にガス・Gが本作のプロデューサーであるデニス・ワード(PINK CREAM 69)と、ギリシャ戦記をテーマにしたメロディック・パワー・メタルをプレイするために立ち上げたプロジェクトで、その後ガス・GがOZZY OSBOURNEのギタリストに抜擢されたこともあって棚上げされていたマテリアルだという。

そういう、元々FIREWINDとして作曲が始まったわけではない、という事情が大きいのか、デニス・ワードが、このバンドにとって初の外部プロデューサーを迎えたことが大きいのか、もちろんヴォーカリストの交替も大きいのか、本作はこれまでのFIREWINDの作品とは一線を画する、メロディック・パワー・メタル色の強い作品に仕上がっている。

本作発表前にガス・Gがソロ・アルバムを制作、リリースしていたこともあってか、本作については「俺自身のニーズを必ずしも満たさなくてもいいから、ファンを満足させたいと思ったんだ」とインタビューで語っている。

私自身はこのバンドに必ずしもメロディック・パワー・メタルを求めていたわけでもないのだが、このバンドがプレイしていた王道感のあるHR/HMというのは、必ずしも商業的には王道ではなく、パワー・メタルのほうが市場のニーズがある、というのは事実だろう。

何しろアルバムのオープニング・トラックである「Hands Of Time」という曲名を見て、「なんだかSTRATOVARIUSみたいだな」と思って再生ボタンを押したら、モロにSTRATOVARIUSなイントロでちょっと笑ってしまいました(笑)。

新ヴォーカリストであるへニング・バッセの時にロブ・ロック(IMPELLITTERI)や森川之雄(ANTHEM)を彷彿させるアツい歌声も、こういうパワー・メタルなスタイルにマッチしている(個人的にはちょっと暑苦しさも感じるけど/笑)。

また、本作はガス・Gの出身地であるギリシャの古代戦史という、ギリシャ人にとって「とっておき」のネタをテーマにしたコンセプト・アルバムとなっており、そういう意味でも自らのアイデンティティを託した力作と言えるだろう(とは言ってもガス・Gは所詮ギター小僧、必ずしも自国の歴史に詳しいわけではなく、実際に歌詞テーマを掘り下げたのはデニス・ワードだったそうだが)。

個人的にはこういう母国の歴史をテーマにした作品を作るならドイツ人であるへニング・バッセに歌わせるのではなく、同じギリシャ人だったアポロ・パパサナシオがいるうちに作るべきだったんじゃないの、というツッコミもしたいし、パワー・メタル・バンドは掃いて捨てるほどいるのに対して、FIREWINDのような「ハード・ロック」の要素を強く宿したバンドは昨今貴重だったので、この「方向転換」を必ずしも手放しで絶賛できない思いもある。

ただ、それでも凡百のモダンなパワー・メタル・バンドに比べると、80年代以前のHR/HMの滋味は強く感じられ、ミドルテンポの楽曲やバラードにも説得力があるし、ガス・Gの古典的なギター・ヒーロー然としたソロ・ワークは流石としか言いようがなく、基本的にパワー・メタルが好きなこともあって、彼らのカタログの中で過去最高級の満足度を感じることができたというのも事実。

3月にはソロとして来日するガス・G(へニング・バッセも同行する)だが、この熱いサウンドはLOUD PARKなど大きな会場で聴きたいものである。

どうでもいいですが、タイトルの「IMMORTALS」は、日本盤タイトルである「不滅神話」みたいなニュアンスではなく、ギリシャに遠征してきたアケメネス朝ペルシアの中核をなす精鋭部隊だった「アタナトイ(不死隊)」のことだと思うのですが。【86点】

◆本作収録「Ode To Leonidas」のMV


◆本作収録「Hands Of Time」のOfficial Audio