HAMMERFALL / BUILT TO LUST

hammerfall10.jpg

LOUD PARK 15で約10年ぶりとなる久々の来日を果たした彼らの、「Napalm Records」移籍第一弾となる、通算10作目のオリジナル・アルバム(ライヴ盤やカヴァー・アルバムなどを除く)。

前作発表後、3rd「RENEGADE」以来このバンドのドラマーだったアンダース・ヨハンソン(元SILVER MOUNTAIN~YNGWIE MALMSTEEN’S RISING FORCE)が(メンバーにとっては)何の前触れもなく脱退し、STORMWINDなどの活動で知られるデヴィッド・ウォリンが加入している。

原点回帰的な印象のあった(と言っても彼らは大きな路線変更をしたことはないが)前作「(r)EVOLUTION」が、2006年の「THRESHOLD」以来となる母国スウェーデンでのチャートNo.1アルバムとなり(もっともその後のアルバムも2位なのだが)、欧州最大のマーケットであるドイツで過去最高となる4位を記録したことに気を良くしたのか、前作に引き続きフレドリック・ノルドストロームをプロデューサーに迎え、アンドレアス・マーシャルによるアートワークを擁した、デビュー当初を思わせるピュア・パワー・メタル路線のアルバムに仕上がっている。

このバンドの得意とするアンセム・タイプの「ハンマー・ソング」、#2「Hammer High」や、哀愁バラードの#5「Twilight Princess」など、彼らに期待される楽曲はキッチリ押さえつつも、全体的に彼らにしてはアップテンポなパートの多いソリッドな作風となっており、この作風を実現する上では新加入のデヴィッド・ウォリンの貢献は大きい。

特に#4「Dethrone And Defy」と#8「The Star Of Home」の2曲は彼らにしては珍しいほどストレートに疾駆するナンバーとなっており、メロディック・スピード・メタル・ファンに力強くオススメできる楽曲。特に前者のギター・ソロはあまりにも「お約束」な構成ながら、それがまた気持ちよくてたまらない(笑)。

以前所属していた「Nuclear Blast」に比べると企業規模が小さく、プロモーションの規模も小さくならざるをえないだろう「Napalm」からのリリースとなったためか、本国スウェーデンのチャートでは6位と、ここ15年でワーストの振るわないチャート成績になっているが、個人的には前作に勝るとも劣らぬ好ピュア・メタル・アルバムに仕上がっていると思う。

なお、日本盤の初回限定盤に付属しているライブDVD「LIVE AT MASTERS OF ROCK 2015」は、LOUD PARK 15のセットリストに近いので、あの場にいた人は思い出が蘇るだろうし、目撃できなかった人には疑似体験できる映像作品なので、通常盤との価格差の小ささを考えればオススメ度が高い。【85点】。

◆本作のリーダー・トラック「Hammer High」のMV

イントロが完全に「Over The Hills And Far Away」(GARY MOORE)…。

EDEN’S CURSE / CARDINAL

edenscurse05.jpg

スコットランド出身のメロディック・メタル・バンドの5作目となるフル・アルバム。10年のキャリアで5枚目だから、かなり順調なリリース・ペースと言えるだろう。

しかし、個人的にはこのバンドがこのバンドがこれだけコンスタントな活動を続けられるのが不思議で、どっかの国のチャートに入ったという話も寡聞にして聞かないどころか、何しろ英語のWikipediaすらないという有様。どう考えても儲かっているとは思えない。

90年代はこういうバンドを日本のメタル・マーケットが支えていたりしたものだが、20世紀も遠くなった今となってはそういうこともあるまい。

しかし、内容は相変わらず非常にハイクオリティなのである。パワー・メタル的な曲からメロディアス・ハード風の曲までバラエティに富んだ楽曲はどれも適度にキャッチーかつ叙情性な歌メロとフックに満ちており、演奏も上手く、サウンド・プロダクションもバッチリ。

イントロでベースのスラッピングをフィーチュアした#6や、このバンドの楽曲では最長となる8分近くに及ぶドラマティックな#12など、10年選手となった今でも新たなチャレンジを続けているのも好印象。

なお、キーボーディストが元POWER QUESTのスティーヴ・ウイリアムスから、ADMANTRAやEPICRENEL、IRON SPHEREといったバンドでの活動で知られるフィンランド人プレイヤーのクリズムに交代しているが、音像に目立った影響は見られない(#7の作曲クレジットにはスティーヴ・ウイリアムスの名前がある)。

高音域でパワフルに声を張るとトビアス・サメット(EDGUY, AVANTASIA)そっくりになるのが特徴的な、前作より加入したセルビア人シンガー、ニコラ・ミイッチのヴォーカルもより馴染んできた印象。

このバンドはデビュー以来、アルバムにゲストを迎えなかったことがないが、本作においても#10「Unconditional」でデュエットにリヴ・クリスティーン(元THEATER OF TRAGEDY, LEAVE’S EYES)を迎えている。

デビュー以来『BURRN!』誌では一貫して高い評価を獲得しており、本作もレビューで90点を記録しているが、あまり話題になっていない観は否めない。

もしこのバンドが90年代にデビューしていたら、少なくとも同じ英国のTENと同等かそれ以上の成功を収められたと思うのですが…。

こういうバンドの人気が日本においてさえ出なくなったあたり、『BURRN!』の影響力が落ちたというか、『BURRN!』的な「こういうバンドこそが正統的である」価値観というのが廃れたんだな、という気がします。【85点】

◆本作収録「Sell Your Soul」のMV


AMARANTHE / MAXIMALISM

amaranth04.jpg

EDMとメタルコアを融合したサウンドでデビュー以来一躍注目を浴びたスウェーデンのハイブリッド・ポップ・メタル・バンド、AMARANTHEの通算4作目となるアルバム。

セカンド・アルバムまでは中心人物がDRAGONLANDのメンバーであるという事実を、言われればなんとなく納得するような欧州メロディック・メタル風のクサめのメロディが随所にフィーチュアされていたが、前作『MASSIVE ADDICTIVE』では一気に洗練され、より先鋭的なEDMの要素が強まっていた。

個人的にその路線はアメリカ市場を狙いにいったものと映ったし、事実アメリカでは過去最高のチャート・アクションを記録したが、それまでTOP10入りしていた本国スウェーデンで失速した(最高18位)ことを意識したのか、本作では再び歌メロが強化されている。

とはいえ、ファースト、セカンドへの回帰というよりは、よりコマーシャルなポップ・ミュージックのメロディ・センスが打ち出され、時に母国の大先輩であるABBAの音楽を彷彿とさせる普遍的な魅力を備えた高品質なサウンドに仕上がっている。正直もはやあのB級メロディック・パワー・メタルだったDRAGONLANDと楽曲の制作者が同じだと聞いても信じられないレベルのスケール感、メジャー感である。

#2「Boomerang」や#5「On The Rocks」、#7「Faster」#10「Supersonic」など、耳に残るサビを備えたキャッチーな曲を中心に、QUEENの「We Will Rock You」へのオマージュかのようなファースト・シングルの#3「That Song」、タイトル通りもはやメタルというジャンルの限界を消失させるかのような#6「Limitless」、アグレッションが強く出た#7「Fury」、それとは対極にもはやハリウッド映画のエンディング・テーマのタイアップでも狙おうとしているかのようなエリースの単独歌唱による壮大なバラードと、楽曲のクオリティ、バラエティ、共に申し分ない。

このコンパクトでキャッチーでモダンなメジャー・サウンドを前に、世界最大のメタル・データベース・サイト「The Metal Archives」はこのバンドをそのデータベースから削除したが、わざわざヒット・チャートを毎週「研究」して制作している(オロフ談)という「超売れ線狙い」サウンドだけに、もっと爆発的にヒットしてくれないと浮かばれないというものではなかろうか(現状は本国スウェーデンおよび隣国フィンランド以外で目立ったチャート・アクションは記録していない)。

なお、本作発表後、男声クリーン・ヴォーカルを担当していたジェイクがツアーからの離脱を発表。それを知ってあらためて本作を聴いてみるとジェイクのフィーチュア度が低いのは離脱の原因なのか結果なのか。【84点】

◆本作のリーダー・トラック「That Song」のMV

どうも前作の「Drop Dead Cynical」といい、このバンドの楽曲の中では異質な曲をリーダー・トラックとしてピックアップしていることが、バンドの評価を妨げているような気がしてならない。

SECRET SPHERE / ONE NIGHT IN TOKYO

secretsphere_live01.jpg

昨年の1月に行なわれたまさかの(と言っては失礼ですが)単独来日ツアーの最終日となった東京公演の模様を記録したライブ・アルバム。

同公演がレコーディングおよび映像シューティングされていて、バンドがそれをリリースしようとしているという話は公演直後から同公演に参加したファンの間では周知の事実でしたが、なかなか実際にリリースされることなく、「これはポシャったかな…」と思っていました。

そもそも彼らがプレイした新宿Wild Side Tokyoというライブハウスはキャパわずか150~200人程度の小さなライブハウス。フェスなどを含めればもっと大きな会場でプレイする機会もあるであろうバンドがわざわざこんな小さな会場でのライブを記録するのは、かえってバンドが「この規模のバンド」と思われてしまう危険性もあって、個人的にはいかがなものかと思っていた。

しかし、その話も忘れかけたこのタイミングになってバンドは母国イタリアのもはや大手と言っていいだろうインディー・レーベル『Frontiers Records』と契約、日本では『Frontiers Records』のメイン・ディストリビューターとなっているキングレコードからこうして2枚組CD+DVDという予想外に贅沢な形でリリースされた。

個人的にはDVDだけでいいのではという気がしてしまいますが、どうも単独の映像作品よりは建前上CDメインでDVDはオマケという形式の方がリリースしやすいらしく、近年は色々なバンドでこういう形でのリリースが多い。

ただ、キングレコードは以前もPRETTY MAIDSで同じことをやっていますが、価格設定が輸入盤のほぼ2倍という、非常にファンのお財布に優しくない売り方をしており、相当にコアなファンでなくては手が出せない商品になってしまっているのが残念。せめて4千円を切ってくれれば…という気がするのですが。

ちなみにCDにはDVDには収録されていないKISSのカヴァー「Detroit Rock City」と、アルバム『PORTRAIT OF A DYING HEART』収録曲「Lie To Me」のアネット・オルゾン(元NIGHTWISH)とのデュエット・バージョンのスタジオ音源が収録されていて、ファンならばこちらも要チェック。

本作に収録されている東京公演はソールドアウトで行けなかったものの、名古屋公演を観に遠征しており、そのレポートを本ブログに書いているので、ここでどんなライブが展開されているかについて多くは語りません。

あえて言うなら、「凄い歌唱」を聴きたい人はぜひ聴いてみてください、という感じでしょうか。あの場にいなかった人間にとって、本ライブ作品に収められているミケーレ・ルッピの歌声がとても生の歌声であることをちょっと信じられないのではないでしょうか。あまりにも完璧、圧倒的としか言いようがない歌声を聴かせてくれます。

まあ、個人的には前任のロベルト・メッシーナが歌うSECRET SPHEREも観てみたかったのですがね(笑)。

映像では実際より大きな会場、大勢のオーディエンスに見えることも多いのですが、本映像ではそれでも小さい会場であることが丸わかり。しかし、ステージが小さい分、バンド全体のパフォーマンスをしっかり収められているという面があり、イタリアのマイナー・バンドのものとは思えないほどにプロフェッショナルなパフォーマンスを堪能することができる…と言えなくもない。

逆にこれほど小さい会場でのライブ映像がオフィシャルに発売されることの方が稀なので、ある意味貴重かも…というのはポジティブな考え方過ぎますかね?(笑)

ライブ・アルバムという商品の性格上、ファン向けのアイテムであることは間違いないものの、ファンとしてはファン以外の人にもぜひ観て(聴いて)もらいたいと思ってしまう作品です。

ていうかLOUD PARKに呼んで、大きなステージでプレイしてもらいたいなあ…。このバンドのパフォーマンスがわずか数百人のオーディエンスの目にしか触れないというのはもったいなさすぎる。ミケーレ・ルッピ個人はWHITESNAKEのキーボーディストとして先日のLOUD PARKに出演していましたが、コーラス程度では彼の凄さの1%も伝えられていませんし。

なお、来月12月にSECRET SPHEREは再来日公演(東京公演はなぜか千葉の柏にあるライブハウス…)を行なうことが決定しています。こんなに早く再来日することがわかっていたらわざわざ名古屋まで遠征しなかったのに(笑)。まあ、いいライブだったし、遠征した分、普通のライブより印象に残っているのでいいんですけどね!

◆本作のトレーラー映像


◆「Legend」のライブ映像


SERIOUS BLACK / MIRRORWORLD

seriousblack02.jpg

アーバン・ブリード(Vo : 元TAD MOROSE, BLOODBOUND他)、ローランド・グラポウ(G : 元HELLOWEEN, MASTERPLAN他)、ドミニク・セバスチャン(G : EDENBRIDGE)、マリオ・ロハート(B : 元VISIONS OF ATLANTIS, EMERGENCY GATES)、ヤン・ヴァシック(Key : 元DREAMSCAPE)、トーマス“トーメン”スタッシュ(Dr : 元BLIND GUARDIAN, SAVAGE CIRCUS)という、欧州メロディック・メタル・マニアには知られたメンバーの集合体ということで注目を集めたこのバンド(プロジェクト?)。

しかし、前作発表後、メンバーの中で最も知名度が高いと思われる二人、ローランド・グラポウとトーマス“トーメン”スタッシュが相次いで脱退してしまい、少なくともここ日本では前作より注目度が下がってしまった状況で(元々大して高くもなかったが…)、レコード会社のプッシュも弱い感じのセカンド・アルバムがリリースされた。

とはいえ、脱退した二人に代わって補充されたのは、主にFIREWINDで知られるマルチ・プレイヤー、ボブ・カティオニス(G)と、先ごろRHAPSODY OF FIREを脱退したことで話題になったアレックス・ホルツワース(Dr)という、少なくとも技術的には前任者に劣らない(というか上)の二人。

元々私がこのバンドに興味を持つきっかけだったアーバン・ブリードは残留しているし、ボブ・カティオニスの才能も高く評価しているので、前作に引き続き購入を決めた。

そして聴いてみると、これが予想以上に素晴らしい。期待感を煽るシンフォニックなイントロダクション#1から、実質1曲目である#2「As Long As I’m Alive」の劇的なイントロが流れ、80年代的なアレンジでKeyサウンドがオーセンティックなギター・リフに被ってきたのを聴いた瞬間に「これは!」という手応えを感じたが、その後に続く楽曲もフックに満ちた秀曲揃い。

基本的な音楽性に変化はないが、全体的に前作より(おそらくローランドのギター・ワーク由来と思われる)無骨さが減少し、より叙情的かつドラマティックな印象が強化されており、私のような欧州メロディック・メタル・ファンのストライクゾーンにドンズバである。

メロディの哀愁が強化され、メロディアス・ハードのファンが楽しめそうなメロウなキャッチーさを備えた楽曲が増えているのも本作の特徴。この辺はボブ・カティオニスのセンスなのではないかという気がする。

冒頭述べた通り、何となく本作の注目度が低い気がするが、私のような欧州メロディック・メタル・ファンであればこれは聴いておいたほうがいいと断言できる充実作。今年のダークホースですね。

なお、本作の基本仕様は9曲入りで、デジタル・ダウンロードでの楽曲は少なめなのですが、日本盤は6曲ものボーナス・トラックが入っており、欧州限定デジパック盤は7曲のボーナス・トラックが入っているので、CDでの購入がオススメです。

さらに言うなら欧州限定デジパック盤のボーナスのうち2曲は本編収録曲のアコースティック・バージョンなので、純粋な新曲は日本盤が一番多く、どれも本編に劣らぬクオリティなので、購入するなら日本盤がオススメです(残念ながらレコード会社からは何ももらっていません)。【87点】

◆本作収録「As Long As I'm Alive」のリリック・ビデオ