BLOODBOUND / WAR OF DRAGONS

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ライブ作品『ONE NIGHT OF BLOOD』(2016)を挟んでリリースされた通算7作目のスタジオ・アルバム。

ここ数作、安定したラインナップで活動していた彼らだが、本作完成後、ドラマーのペレ・エイカーリンドが「音楽性の違い」のために脱退している。

前作『STORMBORN』をレビューした際に「これまでで最もメロディック・パワー・メタル色の強い作風」と形容していたが、本作はその表現をそのまま継承・更新し「これまでで最もメロディック・パワー・メタル色の強い作風」と言わざるをえない(笑)。

『BURRN!』誌のレビューでも指摘されていたが、とにかく曲名からしてベタベタで、「Dragon」というワードが入った楽曲が12曲(ボーナス・トラックを除く)中3曲も含まれ、それ以外にも「Battle In The Sky」「King Of Swords」「Fallen Heroes」といった、メロディック・パワー・メタル・バンドのトラック・リスト頻出単語ばかりで固められた楽曲が並んでおり、これにパロディのニュアンスがあるかどうかはわからないが、「狙っている」ことは間違いないだろう。

というか、「Guardian At Heaven’s Gate」なんて曲名、「ジャーマン・メタル」世代であれば頭に「Blind」と付けたくなってしまいますよ(笑)。

ジャケットのアートワークも、彼らのアルバムで毎回多少姿を変えながら登場し続けてきた魔物(私は勝手に「ノスフェラトゥ君」と呼んでいるが)は、ドラゴンの背に乗る形で小さく登場しつつも、基本的にはドラゴンの姿が大きくフィーチュアされ、ファンタジックでエピカルな嗜好のメタル・ファンの目を引くようになっている。

前作から顕著になってきた派手なクワイアの使い方はまるでSABATONあるいはPOWERWOLF的であり、楽曲にインパクトをつける効果的なスパイスとなっている。

#5「Silver Wings」のようにケルティックな旋律がフィーチュアされたフォーク・メタル的な楽曲の存在も、このバンドがかつてのような王道正統派から、日本でいう「クサメタル」(もはや死語?)の領域にシフトチェンジしたことを証明する楽曲と言えるだろう。

相変わらず特定のバンドの特定の楽曲を思わせるようなパートが随所に登場するが、「1曲丸々そっくり」という楽曲は存在しないのでギリギリセーフか(笑)。オマージュというよりは美味しい所を拝借している、という感じの「確信犯」な観は否めないが。

いずれにせよ、この手の音楽のファンであればついツボに入ってしまうフックに満ちたフレーズがあちこちにちりばめられており、私のようにメロディック・パワー・メタルのファンを自認するような人間であれば何だかんだ言ってかなり楽しめることだろう。

加入後4作目としてすっかりバンドの「顔」になったパトリック・ヨハンソン(元DAWN OF SILENCE)のトビアス・サメット(EDGUY, AVANTASIA)とヨアキム・カンス(HAMMERFALL)を7:3の割合でブレンドしたかのようなヴォーカルも強い個性は感じないが、安定感と表現力は充分。

ライブ映像を観る限りパフォーマンスも充分にプロフェッショナルだし、ここらでLOUD PARKとか、単独である程度集客できるメロディック・メタル系のバンドの前座とかでもいいので来日を実現させてほしいですね。【85点】

◆本作収録「Battle In The Sky」のMV


LIONVILLE / A WORLD OF FOOLS

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イタリアのメロディアス・ハード/AORプロジェクト、LIONVILLEのサード・アルバム。

これまでは「Avenue Of Allies Music」というマイナー・レーベルからのリリースで、日本盤もルビコン・ミュージックというインディーズでのリリースだったが、近年DGMやSECRET SPHEREなど、自国のバンドと積極的に契約し始めた大手「Frontiers Records」に移籍し、日本盤もメジャーのキングレコードからのリリースとなった。

元々「Frontiers Records」のお抱えソングライターの一人であるアレッサンドロ・デル・ヴェッキオとの縁も深く、「Frontiers Records」所属バンドであるWORK OF ARTのラーズ・サフサンドがヴォーカルを務め、それ以外にも「Frontiers Records」人脈の人たちが多数関わっていただけに、同レーベルに移籍したことについては驚きはない、というかむしろ収まるべき所に収まった、という感さえある。

基本的には中心人物であるステファノ・ライオネッティ(G, Key, Vo)のプロジェクトなので、これまではレコーディングにはアレッサンドロ・デル・ヴェッキオやブルース・ガイチといった、その筋では著名なサウンド・クリエイターのサポートを受けているケースが目立ったが、今回はいわゆるバンド形式でレコーディングが行なわれているようだ。今後はコンスタントなライブ活動なども見込んでいるのかもしれない。

とはいえサウンドについてはこれまでと何の変わりもなく、洗練された上質なAORサウンドが展開されており、これまでの2作を気に入った人であれば安心して身を委ねることができるだろう。

ヴォーカルがWORK OF ARTのラーズ・サフサンドで、基本的な音楽性も通じることから、もちろんWORK OF ARTのファンにもオススメである。

一方で、私のようにWORK OF ARTがきっかけでこのプロジェクトに手を出した人間にとっては、その「WORK OF ARTっぽさ」が不満に通じるというのも皮肉な事実。要するにWORK OF ARTの方が私好みの北欧らしい哀愁が強いし、テクニカルな要素も強めでフックがあるので、WORK OF ARTとの比較においてちょっぴり聴き劣りしてしまうのだ。

ただ、その辺は好みの問題で、LIONVILLEのサウンドの方が明るく洗練され、スムーズで聴きやすい、と感じる人もいることだろう。

まあ、とにかく私はラーズ・サフサンドの「声ファン」で(もし生まれ変わったらこんな声の持ち主になりたい)、この歌声を一人でも多くの人に知ってもらいたくてこのレビューを綴っている次第です。

とりあえず以下に貼っているMVを観て、その歌声に感じるものがあれば、個人的なイチオシ作であるWORK OF ARTの2ndをぜひ聴いてみてください。【83点】

◆本作収録「I Will Wait」のMV


◆本作収録「Bring Me Back Our Love」のMV


LAメタルの現実 PART 2

繰り返しますが、エントリーのタイトルはB!誌が延々とやっている企画のパロディです。

『L.A. METAL SUMMIT in TOKYO』の開催でにわかに注目が集まる(?)L.A.メタル界隈ですが、そのイベント以外にも個人的にちょっと興味を引かれるニュースが最近いくつかありました。

QUIET RIOTに『アメリカン・アイドル』出身のジェイムズ・ダービンが加入

シングル「Cum On Feel The Noise」およびアルバム『METAL HEALTH 』の大ヒットによってL.A.メタル勃興の嚆矢となったQUIET RIOTは、何度かのリユニオンと度重なるメンバー・チェンジを経て、オリジナル・シンガーであったケヴィン・ダブロウが2007年に死去して以降もドラマーのフランキー・バネリを中心に細々と活動を続けていました。

2013年から2016年まではジジィ・パール(元LOVE/HATE、L.A. GUNSやRATTにも一時在籍)がこのバンドのフロントマンを務めていたわけですが、昨年末、ショーン・ニコルズという、元GUNS N' ROSESのドラマー、スティーヴン・アドラー率いるADLER'S APPETITEに在籍していたことがあるというヴォーカリストに交代し、この4月に『ROAD RAGE』という新作を発表することになっていました。

しかし先日、昨年末に加入したばかりだというのにそのショーン・ニコルズから、人気番組『アメリカン・アイドル』でファイナリスト(4位)になったことで話題になったジェイムズ・ダービンが加入、そしてレコーディングが終わっていた新作『ROAD RAGE』をジェイムズ・ダービンのヴォーカルで録り直すということで、リリースを夏まで延期するというニュースが発表されました。

ジェイムズ・ダービンもデビュー直後こそ多少話題になりましたが、その後は正直鳴かず飛ばずに近い状態とはいえ、なぜQUIET RIOTなどという、彼とは全く世代の違う、言っちゃ悪いですが落ち目のバンドに加入することになったのでしょうか。

まあ、QUIET RIOT側としては、オリジナル・シンガーがもはやこの世にいない現状においては、あとはフロントマンに求めるのは実力と話題性だけだと思いますので、ジェイムズ・ダービンみたいな有名人が加入してくれるという話はウェルカムでしょう。ショーン・ニコルズが本当に「一緒にライヴを行った後に上手くいっていないと感じ、クリエイティブな面などでも相違があったため」脱退したのか、ジェイムズ・ダービンが加入することになったためにクビにされたのか、その辺がやや気になる所です。

そんなわけでわずか数ヶ月でQUIET RIOTを去ることになったショーン・ニコルズ氏が加入したのが、元RATTのボビー・ブロッツァーが「RATT」というバンド名の使用権をウォーレン・デ・マルティーニを中心とした他のメンバーと争って裁判で負けたBOBBY BLOTZER'S RATT EXPERIENCEというのが何とも…。

スティーヴン・アドラーのADLER'S APPETITE、フランキー・バネリのQUIET RIOT、そしてボビー・ブロッツァーのBOBBY BLOTZER'S RATT EXPERIENCEと、それぞれのドラマーが昔在籍していた知名度のあるバンドのいわば「トリビュート・バンド」御用達のヴォーカリストって感じです(QUIET RIOTは一応「本家」ですが、もはやスティーヴン・アドラーやボビー・ブロッツァーのバンドと実態は変わらないでしょう)。

そういう意味ではQUIET RIOTにおける「前任シンガー」だったジジィ・パールもL.A.GUNSにRATT、QUIET RIOTと(しかもADLER'S APPETITEにも参加していた時期がある)、「そういうキャリア」の持ち主だったので、この人の人生もそういうものなんだろうなあ、と思うと、島倉千代子の「人生いろいろ」という曲名が頭をよぎります(笑)。

この手の「トリビュート・バンド」もアメリカでは田舎をドサ回りすればとりあえず食えるからこういう「昔の名前で出ています」的な活動が続いているのでしょうが、日本だとフロントマンが重視されるので、絶対来日できないんですよね…。ジジィ・パールが歌っていた時代のそれらのバンドはもちろん、ジョン・サイクスが歌っていたTHIN LIZZYなんかも欧米では結構お客さんを集めていたようですが、(1996年から2009年まで13年間もやっていたにもかかわらず)結局日本には来なかったですし(まあ、新作を作っていない、という事情もありますが)。

件の『L.A. METAL SUMMIT in TOKYO』も、ヴィンス・ニールやトム・キーファー、セバスチャン・バックという「フロントマン」は呼んでも、この手のトリビュート・バンド的な人たちは呼ばないですもんね。日本人はやはり「歌手」重視の国民なのだと思います。

まあ、いち日本人として考えて、サザンオールスターズやミスチルやラルクが「ヴォーカリスト替えて活動を続けます」といってもファンがついてくる気がしないですもんね。メジャー・バンドで曲りなりにもそれをやったのってWANDSくらいですが、やっぱり長続きしませんでしたね。

※ニュースソース
http://amass.jp/85582/


W.A.S.P.が『THE CRIMSON IDOL』25周年ツアーを発表

W.A.S.P.が1992年に発表した5thアルバム『THE CRIMSON IDOL』は欧州で高い人気を持つクラシック・アルバムということもあり、同作の発表から四半世紀、25周年を迎えた今年、DVD映像作品の制作と共にリレコーディングされ、ヨーロッパでアニバーサリー・ツアーが行なわれるそうです。

正直、リレコーディングものに満足できた試しがほとんどない(というかむしろ失望させられることが多い)ので、再録盤には期待していないのですが、「完全再現+グレイテスト・ヒッツ」というライブには(近年ありがちな企画ながら)ちょっと心惹かれます。

日本でも同作は結構評価高かったと思うのですが、近年の彼らの人気を考えると単独での来日は難しいですかねえ…。

てか、今ちょっと調べてみたら近年のライブではランディ・ブラック(元ANNIHILATOR, PRIMAL FEAR)がドラム叩いてるのか。となると、それも含めて観てみたいですね。

※ニュースソース
http://www.blabbermouth.net/news/wasp-announces-re-idolized-the-25th-anniversary-of-the-crimson-idol-european-tour/