THE FERRYMEN / THE FERRYMEN

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再編成RITCHIE BLACKMORE'S RAINBOWのヴォーカリストに抜擢されたことで一躍注目を集めたHR/HM界のシンデレラボーイ、ロニー・ロメロ(LORDS OF BLACK)。

大手クラシック・ロック・レーベル『Frontiers Records』のオーナー、セラフィノ・ペルジーノも早速この才能に目を付け、レーベルお抱えソングライターの一人、マグナス・カールソンをパートナーに立ち上げたのがこのプロジェクト。

ロニー・ロメロはALLEN/LANDEのファンだったそうで、マグナスのことはよく知っており、また、ロニー・ロメロが「一番好きなドラマー」ということで、マイク・テラーナ(元YNGWIE MALMSTEEN, ARTENSION, RAGE他)が起用されている。

てっきりRAINBOWそのままのサウンドをプレイして、「RAINBOWのシンガー」に対する期待に応えにいくのかと思いきや、RAINBOWに通じる様式美色やメロディアス・ハード色が皆無ではないものの、Keyの存在感が薄く、極めてギター・オリエンテッドであるということもあって、むしろロニー・ロメロの「ロニー・ジェイムズ・ディオっぽい歌唱法」をDIOっぽいサウンドの方向性で活かしにかかったと感じられなくもない。

ただ、「DIOっぽい」というのもあくまで「RAINBOWよりは」という話であって、もっと直接的にサウンドの印象が近いのはMASTERPLANやAXEL RUDI PELL(どちらもかつてマイク・テラーナが在籍したバンドだ)あたりだろう。

全体的にロニー・ロメロの男っぽい、クドめのヴォーカルを活かした、良く言えば重厚で渋めな、悪く言えばちょっと地味な曲調の楽曲が多く、個人的にはマグナス・カールソンにはもう少しキャッチーな曲を期待していたのでちょっと肩透かし。とはいえこういうストイックなHR/HMサウンドを評価する人はきっといるだろう。

もちろんプロフェッショナルなミュージシャンによるものなので、どの楽曲もしっかり構築されているし、演奏も素晴らしい。マグナスのギターがフラッシーな要素を押さえ、いつもよりクラシックなHR/HMスタイルのギター・ソロを展開しているのは本作の聴き所のひとつ。

ただ、このサウンドだとロニー・ロメロの本業である(?)LORDS OF BLACKとの差別化も難しいような…。あと、ちょっとバンド名が地味じゃないですかね?【82点】

◆本作収録「Eyes On The Sky」のMV


◆本作収録「End Of The Road」のMV



DRAGONFORCE / REACHING INTO INFINITY

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前作『MAXIMUM OVERLOAD』(2014年)発表後、ライブ作品『IN THE LINE OF FIRE… LARGER THAN LIVE』、ベスト・アルバム『KILLER ELITE : THE HITS, THE HIGH, THE VIDS』を挟んでリリースされた通算7作目、現シンガーであるマーク・ハドソン加入後3作目となるアルバム。

前作『MAXIMUM OVERLOAD』はある種、原点回帰的とも言える「速さへのこだわり」が感じられるアルバムだったが、本作ではこれまで以上に起伏のあるアレンジによって、楽曲単位でも、アルバム単位でも過去最高級にバラエティを感じさせる作品に仕上がっている。これは、ソングライティングのイニシアティブをとったのが(クレジット表記を見る限り)サム・トットマン(G)からフレデリック・ルクレール(B)に移行したことが影響しているのだろうか。

スラッシュ・メタル風の#8「War!」(およびボーナス・トラックの「Evil Dead」や、彼らの楽曲史上最長となる、11分超えの#10「The Edge Of The World」などは本作における「新機軸」の典型的な例といえるだろう。

楽曲がバラエティに富んでいる分「平均BPM」で言えばカタログの中では「遅い」作品になるのではないかと思われるが、アレンジの起伏はむしろスピード・パートの疾走感を増幅する方向で寄与しており、ファンが彼らに求めるものはちゃんと提供されている。

疾走一辺倒の金太郎飴的な印象が後退し、マーク・ハドソンのヴォーカルに力強さと表現力が増したこと、そして前作に引き続いてプロデュースを担当したイェンス・ボグレンによる芯のあるサウンドによって、かつての彼らが「メタル通」を気取る人たちにあげつらわれてきた「軽さ」はだいぶ払拭されている。

とはいえ随所に哀愁を漂わせつつも基本明るくキャッチーなメロディが疾走する、典型的なメロディック・スピード・メタルとしての全体イメージは変わらないので、決して「メタルとはDarkでHeavyでEvilであるべし」と思っているような「硬派なメタラー」に支持されるような音楽ではないと思われるが、何だかんだいってこういう「わかりやすい」サウンドを展開するバンドの存在こそが日本におけるメタルの間口を広げることにつながると私は思っている。

このバンドもARCH ENEMY同様、やや「BIG IN JAPAN」の気がある(他の国で全く売れていないわけではないが)わけだが、そんな状況に対する感謝の意の表現か、日本盤ボーナスは日本のR&RバンドZIGGYの1989年の大ヒット曲「Gloria」のカヴァー。例によってカヴァー曲もスピード・メタル・アレンジにしてしまっているわけだが、サビの一部では日本語で歌う努力も見せている。【85点】

◆本作収録「Ashes Of The Dawn」のMV


◆日本盤ボーナス「Gloria」のカヴァー(Short Ver.)


GYZE / NORTHERN HELL SONG

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外資系メジャー「UNIVERSAL Music Japan/Virgin Music」に移籍してリリースされた3作目のフル・アルバム。

前作発表後、CHILDREN OF BODOMのサポートとしての中国ツアー、DRAGONFORCEのサポートとしての台湾公演、ドイツの『SUMMER BREEZE Open Air』、スロバキアの『MORE THAN FEST』への出演を行ない、DIZZY MIZZ LIZZYやSONATA ARCTICA、マイケル・シェンカーやウリ・ジョン・ロートなども所属する欧州のツアー・ブッキング・エージェンシー『DRAGON PRODACTIONS』と契約するなど、デビュー以来の(デビュー・アルバム自体イタリアのレーベルからだった)「海外志向」を着実に実現させ、本作もSENTENCEDやKALMAH、SONATA ARCTICAなどが使用したフィンランドの名門スタジオ『Tico Tico Studio』でミキシングを行ない、さらなる「世界志向」のサウンドに仕上がっている。

とはいえ、彼らの音楽スタイルというのはデビュー時から一貫しており、身も蓋もなく言えば「初期CHILDREN OF BODOMのフォロワー」なのだが、もはや本家自体がそのスタイルを放棄した(恐らくCOB自身、あのスタイルをあのクオリティで新しく再現することは不可能だろう)今、このスタイルを現役で、このクオリティで聴かせてくれるのは彼らくらいのもの。

厳密にいえばKALMAHあたりも今なお近しい音楽スタイルを保っているが、(失礼ながら)彼らにかつてのCHILDREN OF BODOMが持っていたような「華」はなく、その辺の「バンドのアピアランス/存在感のカッコよさ」も含めて、神がかっていた初期CHILDREN OF BODOMの魅力を現代に伝えてくれるのは彼らのみだろう。

すなわち激しく疾走していくリズムに乗って乱舞するかの如く歌い続けるリード・ギターのメロディックなフレーズの数々。この快感指数の高さは半端ではなく、3作目となる本作においてもその煽情力は衰えることがない。

本作では「カムイ(神)」や「シュマリ(狐)」、「ウパシ(雪)」など、アイヌ語を持ったタイトルを持った楽曲を数多く収め、「北海道」という彼らのルーツを表現することによって己のアイデンティティを確立しようという意識も垣間見える。

アルバム・タイトルの「NORTHERN HELL SONG」にある「NORTHERN(北)」というのはもちろん北海道のことを表しているのだろうし、彼らの音楽に多大なインスピレーションを与えたバンドの出身地である北欧にそのイメージを重ねていることも想像に難くない(ひょっとすると、「NORTHERN HELL」という響き自体は日本におけるメロディック・デス・メタルの先達BLOOD STAIN CHILDの『SILENCE OF NORTHERN HELL』にインスパイアされたのかもしれない)。

トリオというバンド編成上、私の好きな「ツイン・リードのハモり」とか「クラシカルなフレーズにおけるキーボードとの掛け合いやユニゾン」みたいなものは(ライブで再現できないからか)あまりフィーチュアされないのが物足りなくはあるのですが、文句なしに今日本で一番カッコいい若手メタル・バンドでしょう。

「海外のメタル・フェスのヘッドライナーになる」という「夢」を掲げ、実際に本作のリリースに先立って欧州で(会場規模こそ小さいものの)30公演を超えるツアーを行なっているという行動力も素晴らしいと思います。こういう「ファンが夢を託し、共有できる」バンドってとても魅力的だと思うし、さらなる飛躍を願ってやみません。

ちなみに私が本作で一番好きな楽曲は#2「Horkew」(アイヌ語における狼であり、そのイメージに託された「狩りの神」のことも指す言葉)なのですが、これ、歌詞カードを見るまでは全然気づきませんでしたが、日本語詞なんですね(笑)。ぜひ歌番組にこの曲で出演して、歌詞テロップと実際に聴こえてくる歌とのギャップで笑いをとってほしいと思います(笑)。【88点】

◆本作収録「The Bloodthirsty Prince」のMV


◆本作収録「Northern Hell Song」のOfficial Video