2017年 新年ご挨拶

新年あけましておめでとうございます(私は喪中ですが)。

2016年はBON JOVIの新作とMETALLICAの新作は順当に全米No.1に輝き、結局アメリカにおいてHR/HMというジャンルを代表する存在とは80年代にデビューし、86年にエポック・メイキングなアルバムを発表したこの二組なのだな、ということをあらためて印象付けられました。

その他MEGADETH(3位)、KILLSWITCH ENGAGE(6位)、VOLBEAT(4位)、DEFTONES(2位)、ROB ZOMBIE(6位)、ANTHRAX(9位)、ALTER BRIDGE(8位)、AVENGED SEVENFOLD(4位)といったあたりが全米TOP10入りしているし、AMON AMARTH(19位)、GOJIRA(24位)、MESHUGGAH(17位)、といったあたりは、その大衆性に乏しい音楽性にもかかわらず確実に支持を獲得していて、アメリカにおけるメタルの支持層は、もはや日本などより世代的にも幅広く、熱量も高そうな気がします。

アンダーグラウンドにおいてはスラッジ/ドゥーム系、ポスト・ブラック系、テクニカル・デス・メタルなどがここ数年マニアたちの評価を得ていますが、これらのシーンで評価されているバンドが「次世代のメタル・ヒーロー」になるかというとそんな感じは全くなく(実際本人たちもそんなものは目指していないだろう)、かといってさらに目新しい動きが生まれているかというとそんな感じもないので、やや停滞感があることは否めません。

ていうか、爆発的な成功を記録したNU METAL以降、「メタル」と名のつく(あるいは「メタル」にカテゴライズされる)音楽で商業的にある程度の実績を出したのはメタルコアくらいのもので、ジェント系のバンドがいくつかそこそこの数字を出しているものの、まあ「コアなファンに支持されている」という域を出ておらず、「メタル」がジャンルとしてよりマニアックな方向に向かっているように映るのが個人的には心配です。

転じて日本を見ると、久方ぶりにIRON MAIDENの来日公演があったし、BABYMETALが日本人アーティストとしてほぼ半世紀ぶりにビルボードTOP40入りを達成するなど、例年に比べればメタルのネタは充実していたほうではないかと思います。

LOUD PARKも、2015年に比べればやや渋めのメンツだったにもかかわらず、充実したパフォーマンスが多く、来場した人たちの満足度はかなり高かったと思われます。個人的にも長年の宿願だったSYMPHONY X と、「一度は観ておきたい最後の大物」だったSCORPIONSを観ることができて大満足でした。

一方、かつて保守派の不評を買いつつも、クリエイティブマンの一種の「チャレンジ」として招聘していたようなモダンなヘヴィ・ロックのアーティストはKNOTFEST/OZZFESTに出る、という流れが定着しつつあり、保守派と革新派の断層が深まっていることをどう捉えるかは難しい所と言えるでしょう。

保守派と革新派は基本的に音楽に対する感性というか、「音楽に何を求めるか」が異なっていると思われるので、はじめから分断したほうがお互いにとって幸せ、という考え方もある一方、「多様化は勢力の拡大・発展につながるが、細分化は勢力の縮小・衰退を招くだけ」という考え方に基づくと、HR/HM的な音楽がよりマニアックなものになり、商業的なパイが小さくなってバンドや関係者が食えなくなっていく、という負のスパイラルを生みかねないと思います。

ただまあ、足元を見ると実は日本の若手には結構いいバンドが育っている気がしますし、昨年優れたアルバムを発表し、LOUD PARKで好演したチュニジアのMYRATHのように、これまでHR/HMとは縁がないと思われていた地域から優れたバンドが登場したりしているので、欧米を中心としたHR/HMの先行きが不透明であっても、HR/HMという音楽自体は世界のどこか、あるいはインターネットによって統合された世界中の好き者たちの間で確実に生き残っていくのかな、という気もします。

このブログ的には、昨年より忙しかった分、ちょっと更新頻度が上がりました。というと意味不明かと思いますが、旅行に行ったりするようなまとまったレジャーの時間が取れなかった分、このブログを更新する程度の時間しか自分の時間がとれなかった、ということです。

ただ、今年は読んで下さる方の参考になるほどの量をこなせない新譜レビューなどより、昨年書いたLAメタルについての文章のような、ブログではなく本サイトに残しておきたいまとまった文章を書くことにその時間を割きたいという気持ちがあり、このブログの更新頻度は下がるかもしれません。

まあ、世界情勢も、日本の社会も、メタル・シーンも、このサイト/ブログも、いろいろと見通しは不透明ですが、今年もゆるゆるマイペースでやっていきますので、お付き合いいただける方は引き続きよろしくお願いいたします。

2016年 印象に残った5枚

公私ともにあまりにもめまぐるしく過ぎたために今一つ実感が持てませんが、2016年ももう終わりということで、年間ベスト的なものが様々なサイトで発表されています。

私は昨年同様、大した枚数を聞いていないので、そんなものを選出する資格もないのですが、以下の5枚は今後もちょくちょく聴くことになりそうだなあ、ということで書き留めておきます。

なお、順番は順位ではなくリリース順で、ジャケット画像はAmazonへのリンクになっています。


PRIMAL FEAR / RULEBREAKER
これぞ王道ヘヴィ・メタル。実力的にはもはやメタル・ゴッド。
この1曲:"In Metal We Trust"
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AVANTASIA / GHOSTLIGHTS
さらに深みと普遍性を増していくトビアス・サメットのソングライティングの妙が光る。
この1曲:Ghostlights
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MYRATH / LEGACY
まさかアフリカ大陸出身のバンドにハマる日が来るとは思っていませんでした。
この1曲:"Believer"
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BABYMETAL / METAL RESISTANCE
この1曲:"Amore -蒼星-"
ワールドワイドな成功ぶりも素晴らしいし、個人的にもフジロックと東京ドームで堪能し、思い出になっています。
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陰陽座 / 迦陵頻伽
もはや作品のクオリティについては世界一信用できるアーティストなのではないかと思わせる一枚。
この1曲:"愛する者よ、死に候え"
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上記の作品以外でも、このブログでレビューして86点以上つけているタイトルはどれも良いと思っていますし、中でも事前の期待値があまり高くなかった分、SERIOUS BLACKのアルバムは上記に選んでもいいと思うくらい印象が良かったです。

あと、タイミングを逸したのでレビューはしませんでしたがPRETTY MAIDSの新作や、ギリシャの新鋭SUNBURSTなども良かったですね。当ブログではレビュー対象としないようなアグレッシヴなものだとTESTAMENTのアルバムが秀逸でした。

B級メロスピでいうと輸入盤で話題になっており、来月ようやく日本盤リリースが決定したらしいTWILIGHT FORCE、そしてVoが同一人物な東欧のSUNRISEとTITANIUMが印象に残っています。

こうしてみると例年に比べてフィンランド勢で印象に残った作品が少なかったような気がするのは、単にリリースサイクルの問題ですかね。

楽曲については、上記で触れたもの以外で印象に残っているのは下記の5曲ですね。

SUNRISE 「Tower Of Fear」
HAMMERFALL 「Dethrone And Defy」
THE DEFIANTS 「Love And Bullets」
SERIOUS BLACK 「As Long As I'm Alive」
PRIMAL FEAR 「Don’t Say You’ve Never Been Warned」


あと、上記でも触れていますが、今年特筆するならMYRATHの「Believer」はクラウドファンディング(要はファンからのカンパですね)で制作したMV含めて、今年一番インパクトがありました。



それでは皆様良い年をお迎えください。

陰陽座 / 迦陵頻伽

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唐突に重い話で恐縮ですが、今年、私の母が癌で亡くなったんです。

母の癌が発見された年にリリースされたのが、彼らのアルバム史上ある意味最もシリアスでダークと言ってもいい『鬼子神』でした。

『鬼子母神』は年末にリリースされており、年末年始、実家に帰って親と顔を合わせている時期にヘビロテしていたので、実家の風景と結びついて印象付けられています。

そして母が亡くなった今年にリリースされたのがこの『迦陵頻伽』。

迦陵頻伽とは、死後の世界である極楽浄土に住むとされる、美しい声を持つ上半身が人で下半身が鳥という、仏教における想像上の生物の名前。

そして彼らの13枚目のアルバムにして、13曲入り。これはどちらかというと西洋的な感覚ですが、13という数字も不吉な「忌み数」。

さらに、リーダー・トラックの曲名は「愛する者よ、死に候え」。

まるでこのバンドが私の母の死を見越していたかのようで、これはなかなか偶然にしては出来過ぎというか何というか。いや、偶然なんですけどね。

まあそんなわけで本作が、そして陰陽座というバンドが自分の中で特別な存在になっていくのを強く感じるわけですが、そんなことはこの文章をお読みになる方々にとってはどうでもいいこと。

本作のオープニングはタイトル・トラックである「迦陵頻伽」。期待感を高める神秘的なイントロから始まるこの曲は、勢いのある曲から始まる曲が多いHR/HMアルバムのオープニングとしては異色な、彼らとしても新境地な曲だが、素晴らしいスケール感を感じさせる名曲。何気にアルバム・タイトルがそのまま楽曲の名前になっている例は初めてかも。

その後、彼らの王道チューンというべき正統的HMナンバー#2、彼らなりのシンフォニック・メタル・チューン#3、和音階を隠し味的に織り交ぜつつキャッチーなメタル・チューンに仕上げた#4と、往年のファンの溜飲を下げる楽曲を取り揃えつつ、インダストリアル・スラッシュ的なギター・リフを持つ#5、オールド・スクールというかクラシックという趣のハード・ロック・チューン#6、ギャグかと思うほどディスコティックな#7と、バラエティも充分。

その#7「轆轤首(ろくろくび)」は4th『鳳翼麟瞳』収録の「飛頭蛮(ろくろくび)」とストーリー的なつながりがある、一種のアンサー・ソングになっていたりするのもファンにとっては楽しい。

定番の忍法帖ソング#8「氷牙忍法帖」は6th『臥龍點睛』収録の「蛟龍の巫女」を思わせるピュアなメロディック・スピード・メタル・チューンでこれまた素晴らしい。

彼らがアルバムに一曲は収めてくるドラマティックな長尺曲(といっても今回は長さ自体は7分程度と控えめだが)#9から終盤シリアスに盛り上がっていくアルバムの流れも相変わらずよく考えられており、哀しきバラードの#11から、パチスロ『バジリスク~甲賀忍法帖~III』主題歌であり、本作のリーダー・トラックといって過言ではないであろう#12「愛する者よ、死に候え」(リフがANGRA「Carry On」風)はまさにクライマックスといえるだろう。

こうしてほとんど全曲触れたくなってしまうほど充実した楽曲揃いであるのはこれまでも同様なのだが、本作を聴き終えて一番印象に残るのは、瞬火(B, Vo)にとっての迦陵頻伽、黒猫(Vo)のさらに表現力を増した歌声であり、その浜田麻里の正統的な後継者と呼ぶにふさわしい歌唱が、本作をして陰陽座史上最もヴォーカル・オリエンテッドなアルバムという印象に仕立てている。【86点】

◆「愛する者よ、死に候え」のMV